44話 植物創造
「マスター!起きて下さい!!」
ミレイさんにハンモックごと吹き飛ばされ、強い衝撃で目を覚ます
「何?何?何?」
突然の事だったのでパニックになる
ミレイさんに無理矢理、立たされる事で何と無く状況を理解出来た
「あのねミレイさん、言っておくけど俺、今、本体だからね。一歩間違えたら死んじゃうからね」
ミレイさんに文句を言うがミレイさんは聞く耳を全く持たない
「マスター、此方を」
ミレイさんは1つのインビブル・アイのモニターを見せて来る
モニターには2台の馬車?が写っていた
「アランベルト王国の王都を監視させていたインビブル・アイの映像です。王都より魔車が2台、武装した集団を乗せて此方の方向に向かっております」
え?
俺は映像をもう1度よく見る
先頭を走る豪華絢爛な魔車?ってのにパッとしない子悪党って感じの男が運転をしてる
馬車の型をした車みたいだ
その後を魔物に引かれた小汚い馬車が追いかけている
こっちは歴史の教科書に載っている様な一般的な馬車だ
豪華絢爛な魔車に何人乗ってるのかは不明だが、小汚い方の魔車には様々な装備を付けた男女が5人乗っている
「魔車って?」
「地球で言う所の車です。魔物が引くから魔車、魔力を動力源に動くから魔車、それらを総じて魔車と呼んでいます」
なるほど
魔車は2種類あるのか
「…全部で何人位いると思う?」
俺はミレイさんに聞く
豪華絢爛な魔車の方は見た感じだと、せいぜいが6人乗れるか乗れないかと言った所だろう
となると全部で10人ちょっとかな?
「分かりません。しかし全方を走る魔車には魔法がかけられていると思われます」
「魔車に魔法?」
どんな魔法だろ?
「はい。あの様な高級な魔車によく用いられる魔法で、見た目とは裏腹に中がとても広くなっております」
中が広く?
「どのくらい?」
「最低でも民家程度の広さはあるかと」
ミレイさんの今の言い方だと、フィアリス特有の加工技術の1つなのだろう
魔法技術とでも呼ぼうか
民家程度の広さか…言っても100人200人が入っている訳じゃ無いだろう。広さ分からんけど
2、30人って所だろうか?
総じて30人前後
軍隊で言う所の小隊クラスか
「………物見かな?」
俺はそう零す
「おそらく」
ミレイさんも同じ考えみたいだ
しかしだ
此処は異世界、30人前後で街をどうこう出来る実力者がいないとも言い切れない
それにあの魔車に乗っている者達が物見であるとするならば
「軍…集まってるよね」
王都にはいつでも出陣出来る軍隊が集まっていると言う事になる
「もしくは今、集めているかですね」
なるほど、物見が戻って来る前にって事か
そう考えながらモニターを眺める
せめてこいつらの戦闘力が分かれば…
「そう言えばキングトロールはどうなった?」
俺がそう言うとミレイさんは別のモニターを指差す
そのモニターには長い舌を振り回して逃げ惑う人々襲うキングトロールがいた
「…キングトロールの舌ってあんなに長かったっけ?」
舌が長いイメージは特に無かったけどな
モニターに映るキングトロールはまるで鞭の様に舌を振り回している
長さ的に最低でも10mはあるだろあれ
「ああ、あれはですね。暴食スキルの食べた量で相手の全てを手に入れると言うのが気に入りまして」
気になりまして?
「『大蛙』と言う魔物とついでに『副口』と魔物を与えてみました。その副作用の様です」
様ですって、何してんの?
ミレイさんの説明によると大蛙はデカいだけの蛙、3mはあるらしい
副口は口と喉を増やす寄生虫の様な魔物だそうだ
もう1度モニターを見る
キングトロールは身体に増やした口から長い舌を出し、振り回して人々を襲っている
どうやらキングトロールは暴食スキルを上手く扱えている様だ
逃げ惑う人々を見て思う
まだ生き残り居たんだ
だいぶ経ってるから流石に全滅してると思ってたんだけどな
まだかなりの人が生き残っているみたいだ
「ミレイさん、あのキングトロール。物見達と戦わせる事出来る?」
俺がそう聞くと
「あの者達が通る道にキングトロールを配置しましょう。ダンジョンの範囲内ギリギリに配置します」
ミレイさんはそう言うとモニターに映るキングトロールが消え、別のモニターに映し出される
キングトロールは森の中にある道のど真ん中に現れた
【グガアアアァァァァァ!!!!!】
キングトロールが叫び声を上げる
さあかかってこい!アランベルト王国!!!
………
「………ねえ…ミレイさん」
俺はハンモックに揺られながら聞く
「はい」
ミレイさんはベットに座った状態でずっとモニターを見ている
「………どのくらいたった?」
あれからかなりの時間が経った
「4時間と言った所ですね」
4時間
モニターでは魔車がずっと走り続けている
キングトロールはいつになっても敵が来ないので何処かに行ってしまった
ミレイさんはすぐに戻せると言ってたので放っておく
「………後どのくらいで来る?」
待ち疲れた、いつになっても来る気がしない
「そうですね…魔車のスピード、平均的な魔車の移動方法…距離………ざっと52時間後と言った所ですね」
………ん?
「ご、ごじゅう…ん?」
なんだって?
「52時間後ですね。52時間後にダンジョンの範囲内に侵入してきます。実際にこの町に着くのは60時間後と言った所でしょうか」
ミレイさんはなんて事のない様に言ってくる
「え?じゃあさ…起こすの早くない?」
別にこんなに早く起こさなくても
俺がそう言うとミレイさんはニパッとした笑顔を見せてきた
クソう…可愛い
全く反省していない
ミレイさんはずっとモニターを見ている
「あ、そうだ。どうせだったらこっちからも攻めちゃうか」
暇すぎる俺に閃きが訪れる
「攻める…ですか?」
ミレイさんが聞いてくる
「うん、軍隊が攻め込んでくる前にこっちから攻めちゃおうかなって」
わざわざ待つ必要も無いんだしな
「しかしどうするのです?またマスターが戦うのですか?」
ミレイさんは心配そうな顔をしてくる
「いや、もうあんな事はしないよ。今はDPも沢山あるしね、手頃な魔物でも送って暴れてもらおうかなって」
別に滅ぼしたりしなくてもいいんだよ
暴れるだけ暴れてしばらくの間、軍隊が機能しなくなればそれだけで
俺がそう言うとミレイさんは
「なるほど、それならば安心です」
朗らかな顔で言ってくる
「でも何、送ろうかな」
やはりマザーゴーレムかな?それともまたギガントゴーレムにして余ってるアンデット達に襲わせるか?
いや、DPも沢山あるし新しい魔物でも交換しようかな
俺がそう悩んでいると
「それならば、丁度良いのがいるじゃ無いですか」
丁度良いの?
そんなの居たっけ?
………
「では、行ってまいります」
そう言い、深くお辞儀をするベル君
土方のにいちゃんの格好では無く執事服を着ている
執事服の理由?ミレイさんがメイドの格好をしているから、ただそれだけ
ベル君は蝿の集合体になって飛んでいく
それをミレイさんと2人で見送る
………なんで飛んで行ったんだろ?転移魔法Lv10であげたんだけどな
「行きましたね」
「行ったね」
ベル君が向かったのはアランベルト王国の王都
そこで暴れてもらう事になり、ミレイさんが言うには大丈夫との事なので王都にあるシティーコアも探してもらう事になった
それと色々と助言もしておいた、必要になるかは不明だけど
「本当に大丈夫?」
俺はミレイさんに聞く
正直言ってベル君が強いとは思えない
まぁ失敗しても別にいいんだけどさ
「大丈夫ですよ。なんだかんだ言ってあの者は創造神様が自ら生み出した1柱。私の下位互換と言った所です。スキルやポテンシャルから負けるとは考えられません」
ミレイさんが淡々と答える
え?ベル君ってそんなに強いんだ
「強い弱いの次元には居ませんね。格別した存在の1人です」
あ、ベル君ってそう言うレベルのお方でしたのね
「それなのに、創造神様に楯突こうとしたんですよ!信じられません」
ミレイさんは口を膨らませて怒っている
なるほど、だからあんなに当たりが強かったのか
「魔車は?」
ミレイさんに聞く
時間はもうそろそろ太陽が沈みそうな時間帯
辺も暗くなってきた
「野営をする様で広い場所で止まっています」
………止まっちゃいましたか
こりゃ、まだまだ付かないな
俺は伸びをする
寝るか
俺はそう考えて、ダンジョンの中に戻って行った
………
はい、1晩経ちましたと
そしてまた、吹き飛ばされて起きましたと
ミレイさん俺が本体だって事分かってんのかな?
どうやら2台いた魔車のうち、豪華絢爛な方の魔車が夜中に出発したらしい
理由は分からんがその事で叩き起こされた
まぁキングトロールを向かわせたら小1時間もせず方が付いてしまった
彼らは想像以上に弱かった
警戒しすぎたかな?
キングトロールはいつの間にか森に居た魔物を食べて「跳躍」と言うスキルと「暗視」のスキルを手に入れてたらしく魔車に奇襲をした
あの巨大で魔車に飛び乗ったのだ
一瞬で砕け散る魔車
中の人がどうなったかは分からないがキングトロールは中の人が出てくる前に魔車の残骸を地面事食べ尽くした
1人だけ運転手が無事だったけど、キングトロールの副口で簡単に倒された
実に弱い、警戒しすぎだったな
今の時刻は太陽が昇り、少し経つ
日の出のすぐ後、もう1台の魔車が猛スピードで走り出したけどあの程度の実力ならキングトロールに任せておけば大丈夫だろ
ミレイさんが監視を続けているしな
俺がいなくても特に問題は無い
そんな訳で俺は今、墓山跡地に来ています
此処は実にいい場所にある
町から離れている訳でも近すぎる訳でも無い、実にいい場所だ
実験にとても適している
さてさて、そんなマスターはダンジョン配置を発動
そこに現れるは我がMyベット事、ハンモック付きトレント君
すかさずトレント君に植物創造のスキルを与える
与えた瞬間に幹をしならせるトレント君
いやね、このスキルいい使い方がどうしても思い付かなくてさ
なんか無いかなーって考えてたら
植物には植物だろって言う考えに至りまして
植物は丁度、トレント君が居たなと思いまして
この様な結果です
さてさて、早速後悔しているマスター
トレント君は枝や幹を震わせている
突発的な行動だったかな?
もう少しミレイさんに相談しておけば
そう思った瞬間、トレント君が巨大化し大きな枝が向かってくる
え?
身体が吹き飛ばされて天地が逆転した
………
まぁあれだよね
ダンジョンの外に出るのに本体な訳無いよね
俺の本体はベットに寝転がりミレイさんに膝枕されている
どうやらトレント君を移動させた事で自由落下した俺の本体はミレイさんが受け止めてくれたのかな?
ミレイさんはモニターを見続けている
ミレイさんは無意識に頭を撫でてくれる
幸せな時間だ
ずっとこうしていたい
しかし、ゴゴゴゴゴと地響きが聞こえてくるので泣く泣く起きる
ミレイさんがキョロキョロとした後、俺をじっと見つめてくる
「マスター…何かしました?」
ミレイさんが聞いてくる
俺はニパッっとした笑顔を作る事にした




