42話 新種族の力
※グロいシーンや死体が出てきますご注意を
力の交換ってなんぞ?
俺がそう思っていると、ミレイさんは徐にボックスから何かを取り出す
ミレイさんは取り出した物をその辺にポイッと投げ捨て、ダンジョンコアに近づき何かをし始めた
俺は投げ捨てられた物に近づく
………死体?
ミレイさんがボックスから取り出したのは死体だった
右肩から腹にかけて大きく切り裂かれた全身黒焦げの死体
俺はボックスから木の棒を取り出し死体をつつく
幾らホムンクルス体でも直接は触りたく無い
と言うか木の棒みたいな物でも使う機会があったな
驚きだ
木の棒でつつきながら観察をして行く
焦げすぎてて男が女かも分からない
と言うか全身がしっかりこんがりと焼かれてんな…ヴェルダンって言うんだっけ?いやそんな上等なもんじゃ無いな
あれだ、例えるなら焼き肉の時の誰にも取られず放置されたまま焼かれ続ける網の端っこに残された炭の塊に似ている
そんな事を考えながら死体を弄っていると、ふと右手の甲に模様がある事に気付いた
…なんだっけこの模様、どっかで見た事があるぞ
右手を木の棒で持ち上げ、しっかりと観察する
右手には狼が描かれていた
狼…ああ「牙狼の牙」の紋章か
ん?と言う事は
「ミレイさーん、この死体ってリック?」
俺がそう聞くと
「そうですよー」
ミレイさんはダンジョンコアを弄りながら、なんて事の無い様に返事をした
………そうか、リックか
俺は木の棒をボックスに仕舞い、リックの死体を眺める
新種族であったし、元々殺す為に近づいた
しかし、悪い奴では無かったし少しの間だけだったがある程度は仲良くなったはずだ
一緒に飯を食ったしな
俺は無言のままリックの死体を見つめる
何も感じない
………幾ら何でもおかしく無いか?
なんと言うか、感情がより一層薄くなっていると様な、まるで誰かにそう言った感情を消されている様な
前々から疑問に思っていた
幾ら人殺しに対してなんとも思って無いからと言って、人が殺せるか?
知り合いの死体を棒でつつき回しといて何とも思わないものだろうか?
今もそうだ、こんな状況なのに冷静な俺がいる
まるで俺が俺であり…俺で無い様な
「マスター、宜しいですか?」
ミレイさんが唐突に声を掛けてくる
「…ん?何?」
「準備が整いましたので始めても宜しいですか?」
準備?準備って何の準備だろ?
ああ、力の交換とか言う奴か
一体ミレイさんは何をするつもりなんだろ?
………あれ?確か今、何か大事な事を考えていた様な…何だっけ?
まぁいいか、忘れる位だ
そんなに大事な事じゃ無いだろう
「うん、お願い」
そう言って俺は死体から離れる
「はい、では始めさせて頂きます」
ミレイさんはそう言うとリックの死体に近づき、リックの死体に両手を向けた
するとリックの死体がゆっくりと浮かび上がり、青い光に包まれる
青い光は次第に強くなって行き、心臓の位置に集まって行く
集まった青い光はより一層強くなり、そこから青く光る火の玉がゆっくりと出てきた
火の玉がリックの死体から離れるとリックの死体は力を失った様に床に落下する
火の玉はゆっくりとダンジョンコアに近づい行きダンジョンコアに吸収されて行った
すると今度はダンジョンコアが強く光を放ち、ダンジョンコアからビー玉の様な物が排出される
ビー玉の様な物が排出されると、ダンジョンコアの光は弱まりいつもの感じに戻った
………
ちょっと待ってくれ、意味が分からない
まずリックの死体の青い光もそうだけど、あのビー玉は一体何?ゴーレムコアに似ているが…でもゴーレムコアの時と出方が違う
交換の時はダンジョンコアの目の前に交換した物が現れた
あんな出方じゃ無かった
そんな事を考えていると
「マスター、こちらのオーブをどうぞ」
いつの間にか目の前に居たミレイさんがビー玉を…この玉、オーブって言うの?を渡して来た
俺はそれを受け取る
ゴーレムコアとは違った感じのビー玉だ、中がキラキラと輝いている
「鑑定を使ってみてください」
ミレイさんがそう言う
俺は言われるがままに鑑定を使うと
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融合スキルのオーブ・Lv10
2つの物又はそれ以上の物を融合、つまり混ぜる事が出来る。混ぜた物はどんな物であろうとも双方100%が均一に融合しており能力等は一切劣化しない。融合の際に必ず出る差などは絶対に出ず、この世にあるありとあらゆる物を融合する事が出来る
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………どう言う事?
え?だってこれリックの種族特性だよね
俺が驚きの余り固まっていると
「今から説明をさせて頂きます」
ミレイさんが融合のスキルオーブを俺から受け取る
「まず、マスターに質問です。新種族をダンジョン内で殺した場合、一体何DPになるでしょうか?お答え下さい」
…………新種族をダンジョン内で?それが一体何の関係が…まぁいいか
確か前に、どんな種族であろうともどんなスキル、力があろうともDPは一律100DPって言って無かったか?
いや待てよ、俺がそもそもこの世界に連れて来られたのは新種族を絶滅させる為
つまり…ボーナス的な物が付くのでは?だったら
「そうだな…1000DPとかかな?」
これは普通の人の10倍だ、新種族だぞ?それ位の価値になってもおかしく無い
俺がそう答えるとミレイさんは
「本当にそう思いますか?もう一度じっくりと考えてみて下さい」
そう言ってくる
つまり1000DPでは無いと言う事か
ならば、1万DPとかかな?いや待てよミレイさんの言い方がどうも気になる
そもそもDPって何だ?ダンジョンの中で人を殺すと殺した人の魂がDPになるって言う、あのクソ女神達が作ったシステムだろ?
………システム?
そもそも新種族を殺す、絶滅させる理由は管理下に無いから、制御出来ないからだよな
………DPやダンジョンのシステムは一体誰が作った?
「………もしかしますけど…0DP…だったりする?」
俺が恐る恐るそう答えると
「正解です」
ミレイさんはにこやかに答えた
俺は膝をつく
そうだよな…新種族は管理下に無いんだもんな
…DPになる訳が無い
俺がそう項垂れていると
「しかし折角、努力して倒した新種族が0DPですとダンジョンマスターのやる気に多大なる影響が出てしまいます」
ミレイさんが語り出す
そうだね、今の俺の様にね
「その為にこのスキルのオーブがプレゼントされます。これを使用すれば新種族の力を手に入れる事が出来ます」
なるほど。モチベーションを維持する為にくれる訳ね
確かに新種族のあの規格外の力が、それもLv10で手に入るなら新種族を殺すモチベーションには繋がるな
しかし
「でもそれは、本末転倒じゃ無い?幾らダンジョンマスターが管理下にあると言ってもさ」
元々規格外、予想も出来ないスキルを持ってるから新種族を殺す訳だろ?
そんな力を幾ら管理下にあるからって渡して大丈夫なのだろうか?
裏切ったらとか考えないのだろうか?
前に管理下にある者は運命を操って殺す的な事を言っていたが、はっきり言って無駄では無いか?
裏切る裏切らない以前に力を渡さなければ良いだけの話じゃ無いか
「正確に言いますとこの新種族のスキルのオーブはついでで本来の目的は別の所にあります」
「本来の目的?」
「はい。新種族は今までの説明通り管理下にございません。なのでDPになる事はありません」
うん、それはさっき聞いた
「これは正解に言いますと、新種族の魂は移動自体しないと言う事なんです」
ん?どゆこと?
「良いですか?この世界、フィアリスの人はどんな種族だろうとどんな死に方だろうと死んだら魂が創造神様の元に行き、そこで魂のデータの移行を行います。それが終わりますと魂は浄化され再び生まれ変わります」
へー、そんな仕組みなんだ
なんだかパソコンみたい
「魂にはスキルや記憶など全て事柄が記録されており、創造神様の元で全てのデータの管理を行っています」
「うん」
「しかし、新種族は管理下に無い為、例え死んだとしても創造神様も元に行く事は決してありません」
あ、そうなんだ
「じゃあ、新種族は死んだらどうなるの?」
俺がミレイさんにそう質問すると
「新種族が死んだ場合、魂は管理下に無い為肉体に留まり続けます。その後は肉体が朽ちるまで永遠と留まり続け最後には消えて無くなります」
そう答えてくれる
つまり新種族は管理下に無いから生まれ変わりだとか輪廻転生的な感じから外れ、肉体が朽ちると消滅するのか
それだけ聞くと可哀想だな
「DPは?」
「DPは魂を変化させていますのでDPになった時点で創造神様の元に送られています。ちなみにマスターがDPにした者達は今回の都合上生まれ変わり等はしません。全て創造神様が消滅させています」
なるほど、全て消滅してるのか
「話を戻しますね。しかしです、先程の様にダンジョンコアを使用すれば創造神様の元に新種族の魂を送る事が可能なのです」
ミレイさんはそう言う
つまりさっきの事はミレイさんがリックの魂を創造神の所に送ったって事か
あの青い火の玉が魂なのかな?
「それに何の意味が?」
管理下に無い者のデータを送った所で…いや、待てよ?
新種族の魂は移動せず創造神の所に行かない
言わばデータがどんなに待っても来ない訳か
つまり
「新種族の魂のデータが創造神の所に行く」
俺はその答えに辿り着いた
「そうなのです。そこなのです」
ミレイさんは嬉しそうに答えてくれる
「今迄は散々迷惑だけをかけて消滅した新種族の魂が創造神様の元に行き、データとして記録されます。この行為は言わば創造神様の管理下に下ったと言う事になります」
「ほうほう」
「データが入れば創造神様が手を加える事が可能になるんですよ!」
ミレイさんは興奮しながら言う
「つまり新種族が新たな種族として認められるって事か?」
俺がそう質問するとミレイさんの笑顔が固まり冷たい表情に戻る
「前に言いましたがこの世界の種族は5種類です。それ以外はバグに過ぎず創造神様であっても変える事は出来ません」
ん?
「じゃあ手を加えるってのは?」
「スキルの話ですね?」
「スキル?」
「はい、スキルはですね。時代と共に移り変わる為固定が出来ないのです」
ああ、なるほど。それは分かる
例えば剣とか馬車が基本の世界でも銃だとか飛行機だとかが作られれば全てが変わる
それに合わせてスキルも増えて行くのか
「その様にデータとして送られてきた新種族の種族特性を解析し新たなスキルとして世界に、管理下に組み込むのです」
なるほど、種族特性をスキルの一つにしてしまうのか
「でもそれは危険じゃあ」
言い換えれば誰でも新種族の種族特性が覚えられると言う事になってしまう
「当然です。なので組み込んだと同時に禁忌、禁止、使用不可にしてしまうのです」
ああ、なるほど
言わばこう言う事が出来ますよと認めた上で禁止にしてしまうのか
「でもそのスキルのオーブは?」
俺はミレイさんが持っているスキルのオーブを指差す
「認めた際に認めたその一つは特例としてこの世界に存在する事になってしまいます。そのスキルが誰の手に渡るか分からないのならば倒したダンジョンマスターに差し上げてしまおうと言う事ですね」
だからプレゼントとしてくれるのか
「ちなみにこのスキルのオーブを使用し、スキルを入手した者が死んだ場合は晴れてこの世界からこのスキルは消えて無くなります」
つまりそれがこの世界で最後の融合スキルって事か
「でもなんでそんな周りくどい事を?」
新種族の度に一々禁止にしていたら大変では?
「まぁ確かに大変でもありますが、最も懸念すべき事がありますから」
「懸念すべき事?」
なんだろ?
「その新種族が1人だけとは限りませんから」
俺はそれを聞いて衝撃を受ける
そうか、新種族は何も1人だけとは言い切れない
リックに兄弟、姉妹が居るかも知れないし親戚とかだって居るだろう
その中にリックと同じ種族特性を持つ物が居たとしても不思議じゃ無い
はたまた、これから生まれて来る可能性だって充分にある
それに1度生まれたんだ
この世界の何処かで偶然、リックと同じ様に生まれる可能性だってあるし、もう居るかもしれない
「このスキルを禁止にする事で例え他にこのスキルを持つ新種族が居たとしても使う事が出来なくなるんです」
だからこうやって創造神の所に送る必要があるのか
俺が衝撃を受けているとミレイさんはボックスから新たに3人の死体を取り出す
「それは?」
俺がそう聞くと
「3人共新種族ですね。探し出すのに苦労しましたよ」
ミレイさんは心底疲れたと言った表情で答える
この町には新種族がリックも含めて、4人も居たのか
俺は3人に近づく
1人は当然ながらこの間の植物男
全身が火傷と爆発で爛れ、眉間に撃ち抜かれた跡がある
まぁ俺がやったんだけど
もう1人は女性
口から血を流し身体中に抉られた様な引っ掻き傷と噛み跡がある
これはアンデットにやられたのかな?
そして最後は子供だった
首と手足が曲がってはいけない方向に曲がってる
………この子供はどうやって死んだんだろ?
「ミレイさーん、この子供ってどうやって死んだの?」
俺は再びダンジョンコアを弄っているミレイさんに聞く
もしかして一回一回弄らなきゃならないのかな?
「知りませーん」
簡単に返事が返ってきた
「知らないの?」
「はい、その死体は。町に普通に転がってましたから。ただ近くで鞭ゴーレムが戦った解析がありましたのでそれに巻き込まれたのかもしれません」
そうなんだ
「と言うかミレイさんって新種族見つけられたんだね」
その力を使えば最初から探さなくてもいいんじゃ
「残念な事に新種族は管理下に無い為、個別に鑑定でもしなければ見つからないんですよ」
「ん?じゃあどうやって?」
「いつまで経っても死体から魂が離れなければそれが新種族です」
ああ、なるほど
そうやって探しているのか
だから世界中の人々を殺して回る必要がある訳ね
「準備が出来たので始めます」
ミレイさんがそう言うと植物男の死体が青く光り浮かび上がる
やっぱり1人ずつなんだ
植物男・代官の息子、ダスカ
新種族の女性・奴隷の女性、エリア
新種族の子供・スラムの子供、パージ




