37話 キングトロール襲来
お久しぶりです。やっと編集が終わりました
side 宮廷魔導師長、ザクリス・ソート
突如、我々の前に現れた巨大な化け物
5m程の大きさで、錆びた鉄の様な磨いていない銀食器の様な色をしており、ブヨブヨとした皮膚に包まれている人型の巨大な化け物
「なんなんだ、この化け物は!」
私はあまりの事に声を荒げてしまう
「………キングトロールだよ。山奥とかに住んでる上級クラスの魔物」
私を守る様に立ち、魔剣を化け物に向かって構えているシュナ殿が答えてくれた
「キングだと?何故キング種が此処に!?」
キング種だと、そんな馬鹿な!!!
キング種とは魔物が成長、進化する際の基本的な最上位の種類であり、成長、進化する前とは比べ物にならない強さを持つと言われている
「いや、そこはわかんないけどさ」
シュナ殿にも理由は分からない様だ
しかし、王都のこんな近くにキング種だと?
そんな事はありえん!!!
王都や町の近くの魔物は永久奴隷兵士「メモリーズ」が定期的に討伐をしている
そして、強力な魔物や山奥に住む魔物、隠れて住んでいる魔物などは冒険者の仕事、冒険者が討伐するのだ
王都の近くだぞ?いったい幾つのギルドがあると思っている!
上級の魔物など生き残っている筈がない!!!
「…倒せるか?」
私はシュナ殿に問う
今は先を急がなくてはならない。しかし、王都のこんな近くにキング種など捨ては置けん
「…まぁ、キングトロールなら過去に何回か討伐をした事あるから大丈夫だと思うよ」
何と、過去に討伐をした経験があるのか
「…それならば話が早い。あれを倒せ!!!」
「りょーかい!みんな!何時ものやるよ!」
私の命令をシュナ殿が了承を示し、そう大声を上げる
「「「了解」」」
すると、キングトロールから一定の距離を置いて魔剣を構えていたシュナ殿以外の冒険者達が走り出した
「まずは私から!」
同時に飛び出した3人の内、シルフィン殿が細身の魔剣を構え
「魔剣解放!!!…力を貸して[エア]!」
そう声を張り上げる
すると、シルフィン殿の魔剣に緑色に輝く模様が走り抜け、シルフィン殿は風の様な物で出来た鎧に包み込まれた
「…なんだあれは」
「…魔剣解放だよ。魔剣に認められると使えるようになる技」
シルフィン殿を見て驚いている私に、シュナ殿が教えてくれる
あれが魔剣解放
ダンジョン産の魔剣のみが使えると言う、スキルとは逸脱した力か…
「疾風斬撃斬!!!」
風の鎧に包まれたシルフィン殿がキングトロールの前で消えたかと思うと、次の瞬間にはキングトロールの背後に現れ着地する
すると、キングトロールの両腕が付け根から吹き飛び、キングトロールの身体中に無数の切り傷が刻まれた
【グガアアアァァァァァ!!!!!】
キングトロールが苦しみの雄叫びを上げる
キングトロールは斬られた仕返しに、シルフィン殿に攻撃を加えようとするが
「…………魔剣解放…行くぞ「アース」…杭流れ」
今度はオレンジ色の模様が広がった大剣の魔剣を、オレンジ色の鎧に包まれる様になったゴードン殿が思いっきり地面に叩きつける
叩きつけた場所から土で出来た大小様々な杭が流れる様に生えていき、キングトロールに襲いかかった
キングトロールには2本の巨大な杭が胴体に突き刺さり、無数の杭が両脚を固定する
【グガアアアァァァァァ!!!!!】
キングトロールが再び苦しみの雄叫びを上げ、自らに突き刺さった杭を破壊しようと右腕を伸ばした
何?
「何故、右腕があるのだ」
キングトロールの両腕は先程、シルフィン殿に切り落とされたはず!なのに何故右腕があるのだ!
そう思いながらキングトロールの傷を見る。しかし切り落とされたもう片方の腕は無くなったままであるし、無数の傷も残っている
杭によって我々の死角になっている腕だけが治ったとでも言うのか!?
「…流石キングトロール、回復が早い」
するとシュナ殿が苛立ちのこもった声を上げる
「…回復だと?」
どう言う事だ?
「…キングトロールはね、と言うか普通のトロールもだけど、回復力、再生能力がズバ抜けているんだよ。手足を切ったとしても再生する」
なんだと?
そう思いキングトロールを見る
すると、キングトロールの切り落とされたもう片方の腕の傷口がゆっくりと盛り上がり、凄いスピードで伸びていく
伸びた部位は次第に腕の形になって行き、僅か10秒足らずで元の形に再生してしまった
有り得ない。なんて速さで再生するのだ
上級クラスのポーションを使ったとしても、あんな速さで回復などしないぞ
私が呆然としていると
「キングトロールの再生能力は異常だよ。だからキングトロール討伐は時間がかかるんだよね〜」
シュナ殿は当たり前の事の様にのんびり言う
「………倒せるのか?」
私は再度シュナ殿に問う
「言ったろ?討伐した事あるって。キングトロールの討伐はコアを破壊するか、再生出来なくなるまで痛め付けるかのどっちかの方法しか討伐出来無いけどさ」
「なるほど。伊達に上級の魔物と言う訳ではないか」
「まね〜、まぁ上級と言っても上級の中か下辺りの魔物だし私達にかかれば楽勝だよ」
そう言ってシュナ殿はキングトロールを指差す
キングトロールは再生させた両腕で杭を掴み破壊しようとする
しかし、その腕をすぐにシルフィン殿が切り落とした
【グガアアアァァァァァ!!!!!】
キングトロールは苦しみ、暴れ様と脚元の杭を破壊するが、その度にゴードン殿の新たな杭が突き刺さる
【グガアアアァァァァァ!!!!!】
キングトロールは苛立ちと痛みにより叫び続けている
すると
「お待たせしました!2人共!どいて下さい!!!」
キングトロールとの戦闘から距離を取り、動かないでいたジル殿が声を上げた
ジル殿を見ると、短剣の魔剣を両手で構えている
何故、あの大きさの短剣を両腕で?と不思議に思っているとジル殿は短剣を片手に持ち替える
もう片方の手には水で出来た、半透明の短剣を持っていた
「「了解!」」
ジル殿の指示を受け、シルフィン殿とゴードン殿がキングトロールから離れる
すると、ジル殿の短剣に青い模様が走り、短剣が凍りつくばかりかジル殿するらも巻き込んで凍らせていく
ジル殿の半身は完全に氷に包まれた
「行きますよ「氷水」!、凍える大地!!!」
ジル殿がそう叫び、水で出来た短剣を振り上げるとキングトロールに大量の水飛沫が降りかかる
水がかかったキングトロールは鬱陶しそうに顔にかかった水を拭おうとすると
ジル殿がもう片方の凍った短剣を振り抜いた
ジル殿が短剣を振り抜いた瞬間、水飛沫がかかった場所が回りの木々も合わせ、一瞬で凍りつく
キングトロールは全身が真っ白な氷に覆われた
「な?!」
なんだあの威力は!?
ジル殿の力に私が度肝を抜かれていると
「ジルの魔剣「氷水」は特別製さ、威力が違う。そして私の「業火」もね」
そう、シュナ殿が言い、シュナ殿が構えている魔剣が真っ赤に光り始めた
熱い
魔剣から漏れ出す熱に思わず後ずさるっていると、走ってきたゴードン殿に連れ去られることが
「………ゴードン殿?」
私がゴードン殿に抱えられ、驚いていると
「………シュナが本気だ…」
ゴードン殿はそうボソリと呟く
いつの間にかシルフィン殿とジル殿も並んで走っていた
「あれ本気だよね!?あれ本気だよね!?」
パニックになっているシルフィン殿
「本気ですね!」
冷静だが焦りを見せるジル殿
「………護衛対象の魔導師様がいる…守りの陣を…」
再びゴードン殿がボソリと呟くと
「「了解」」
2人が強く返事をする
すると3人は走る足を止め、ゴードン殿は私を下ろして3人で魔剣で構えた
「…守りの陣…土流壁」
ゴードン殿が魔剣を叩きつけ巨大な壁を作り
「守りの陣!風壁!」
シルフィン殿が横薙ぎに魔剣を振り、風の壁を発生させ
「守りの陣、氷壁」
ジル殿が魔剣から氷の壁を生み出す
すると3人はすかさず私の元に駆け込んできて、私を一番下にし、ジル殿、中央にシルフィン殿、我々全員を守る様にゴードン殿の順で固まり
「…土流陣」
ゴードン殿が生み出した小さな山に全員が包み込まれた
一体何が…
普段の私なら文句の1つでも言っているが、冒険者達のあまりの緊張感と勢いで口が上手く動かない
小さな山は4人がギリギリ入れる程の大きさでかなりの窮屈さを感じる
ジル殿から冷気が出ている為に熱くないのがせめてもの救いだ
すると
……燃える大地…
何処からかシュナ殿の声が聞こえた気がした
燃える大地?
「来ます!!!」
ジル殿が叫ぶ
その瞬間
有り得ない程の衝撃波と熱量、衝撃音が響き渡る
なっ!?!!?
私は咄嗟に耳を塞ぎ小さく蹲る
それでもかなりの衝撃が聞こえてくる
私にくっついているジル殿が、凍える程の冷気を出しているにもかかわらず壁のすぐ向こうから感じる熱が寒さを打ち消す
私は小さく縮こまり強く耳を塞ぐ
果たしてどれくらいそうしていたのか
ふと、ジル殿が立ち上がったのを感じ、私は目を開ける
いつの間にかゴードン殿が生み出した山も無くなっていた
「…なんとか耐えられたな」
「あ〜〜怖かった」
ゴードン殿とシルフィン殿が近くで座り込み、そう零している
目の前にいたジル殿に、手を伸ばされたのでその手を受け取り、立ち上がると
…辺りに生えていた木が一本もない
それどころではない
私達がいた場所以外、全てが焦げ付き吹き飛んでいた
なんと言う事だ
「あーあー…やり過ぎですよ」
ジル殿が言う
ジル殿は先程までシュナ殿とキングトロールがいた場所を見ている
その場所は燃え盛る業火に包まれていた
炎は辺り一面を覆い尽くし、まるで山の様に燃えている
私は燃え盛る火の山を呆然と眺めていると
火の一部が割れる
「にゃははは、私にかかればこんなもんよ」
その割れた場所から、楽しそうな声を上げるシュナ殿が出てきた
「いや〜〜ひさびさに本気出しちゃったよ〜〜」
シュナ殿は我々のいる場所に笑いながら向かってきた
私は心に巣食う恐怖心を何とか誤魔化し、苦笑いをしていると
「やり過ぎ!」「ほんとですよ!」「…やり過ぎだ」
他の冒険者達が向かってきたシュナ殿に駆けつけ、ギャーギャーと文句を言い出す
「えーなんでよ。ねーちゃん頑張ったのに」
仲間達に文句を言われ、少々涙目になるシュナ殿
…私は辺りを見回す
ここら一帯の大地は焦げ付き、木々は吹き飛んだ
とんでもない威力である
しかし、涙目になっているシュナ殿を見ると不思議な感じがした
本当に彼女がやったのだろうか、と
………まぁ…いいか
そう考えながら私は騒いでいる冒険者達に近づいていく
「あー、そのなんだ。シュナ殿は何をしたんだ?」
私は騒いでいる冒険者達に混ざる
「え?ああ、私の魔剣の力だよ。キングトロールは再生するからね、コアごと燃やしちゃえばそんなの関係ないだろ?」
シュナ殿は何でも無い事の様に答えた
それを聞いて、私はため息を零す
だからってこれはいくらなんでも…
再びシュナ殿を見ると、悪びれた様子もなく笑っていた
私はもう一度ため息を零す
「…いつもこんな感じか?」
「だいたいこんな感じ」「いつもです」「…ああ」
そうなのか
「…まぁあれだ。何はともあれ、あのキングトロールは討伐できた。直ぐにイーリスの町に向かうぞ」
私がそう言うと冒険者達は驚いた顔になる
「あれ?まだ行くの?」
シュナ殿が代表して聞いてきた
「当たり前であろう」
まだ貴族達にもイーリスの町にも辿り着いていない
「でも魔物は倒したじゃない」
シルフィン殿が聞いてくる
「あのクラスの魔物にシティーコアのある町が落とせる訳が無い。シュナ殿の説明が正しければ時間さえかければ倒せるのだろ?そんなもの、イーリスの町にいる騎士と兵士で何とかなる」
つまりあのキングトロールは無関係と言う事だ
正直に言うとこれからが本番である
まぁ、あのキングトロールが襲撃者の使役する魔物でなければの話だがな
私がそう言うと
「………歩くしか無いな」「えー歩くの〜〜ダル」「どのくらいかかりますかね?」「お姉ちゃん頑張ったのに」
と冒険者達が騒ぎ始めた
私はそれを無視して歩き出す
私が歩き出せば冒険者達も歩くだろう
しかし…私の中ではイーリスの町や貴族よりも放って開けない別の問題が生まれてしまった
あのシュナ殿とジル殿が持つ魔剣、「業火」と「氷水」だったか?
あの2つは危険すぎる
…何としても取り上げなくては
私はそんな事を考え、歩いていると突然、背後から突き飛ばされる
………は?
「グヘェ!!?」
私は前のめりに転び、頬を打ってしまった
痛い
…私が、この私が背後から突き飛ばされただと?
あまりの痛みに殺意が湧きだす
「貴様!!!何をす?!?!!?!」
私はすぐに起き上がり、突き飛ばした犯人に怒鳴ろうとすると
「「「ゴードン!!!!!」」さん!!!!」
3人の叫ぶ声が響き渡る
私の目の前には上半身の無いゴードン殿が立っていた
注釈
基本的な最上位とは、本来なら魔物はキングで成長、進化が止まるはずなのですがなんらかの理由により成長、進化してしまう事があります。それらは特級に分類されます
注釈2
4人が持つ魔剣について
シュナ・炎の魔剣「業火」
炎を生み出し熱線、熱波、衝撃波を操れます。魔剣解放をすると立っているだけで周りを溶かしてしまうので使えません。
シュナ「威力が強過ぎて使いにくいんだよね」
ジル・水の魔剣「氷水」
水を自由自在に操り温度を操作する事も出来ます。また水蒸気や氷、霧など状態を変化させる事も出来、使い勝手がとても良いです。能力毎に分離する事で能力を分け、同時に扱う事も出来ます。魔剣解放は使用者が凍えてしまう為、滅多に使いません
ジル「いざという時以外、魔剣解放は使いませんね」
シルフィン・風の魔剣「エア」
風と斬撃を操る事が出来ます。魔剣解放により風を纏う事で有り得ない速さで移動する事が出来、斬撃を飛ばす事も出来ます
シルフィン「早すぎて酔うから訓練頑張ったのに、魔車とか遅すぎて酔うの…なんで?!」
ゴードン・大地の魔剣「アース」
土を操り、膂力や自らの重量、魔剣の重さなどを変える事が出来ます。魔剣解放により本来なら耐えられない重量に肉体を変化させ戦います
ゴードン「…俺は自分の出来る事をやるまでだ」




