32話 勝利
side代官の息子、ダスカ
暗闇の中、私の身体に強い悪寒と恐怖が走り抜き私は目を覚ました
しかし、身体が鉄の様に重く動かせない
………何故だ?
私はゆっくりと目を開く
目の前が真っ暗だ
…何故こんなにも暗い?
夜が明けてからまだそんなに立っていないはず
意味がわからない?
混乱に陥っていると、だんだんと意識が遠のき始める
ここは何処なんだ?
何故私はここにいる?
何故?…どうして?
…わからない…
…わからない…
…………わから…
…………ない…
「…植物創造[暴れ木]」
薄れゆく意識のさなか、私はなんとかユニークスキルを発動することが出来た
私を中心に大きな木が伸びていき周りごと私を吹き飛ばす
強い衝撃を受けながらもなんとか体制を立て直して着地をし、焦るように空気を肺に取り込んだ
「はぁ…はぁ…」
足が手が震え出し、膝を付く
先程まで自分がいた場所を見ると、瓦礫の山になっていた
どうやら私は瓦礫の中に埋まっていたらしい
…意味がわからない
此処は一体何処だ?
私は先程まで屋敷で眠っていたはず
どうなっている?
意味がわからない
なんとか状況を整理しようと辺りを見回すが余計に分からなくなる
どこを見ても瓦礫、瓦礫、瓦礫
そして私の混乱を悪化させるのが、視界の端でうろついてる数多くのゴーレム
…本当に意味がわからない
しかし、瓦礫も気になるが魔物は危険だ
とりあえず倒さなくては
私を見つけた様で3体のゴーレムが襲いかかってくる
そのゴーレムに対し私は
「植物創造[薙ぎ払い]」
ユニークスキルを発動する
足元から伸びた鞭状の幹が、3体のゴーレムを吹き飛ばす
吹き飛ばしたゴーレム達は瓦礫にぶつかり、バラバラに砕けちった
しかし、バラバラになったゴーレムはゆっくりと起き上がり砕けた部分が徐々に治っていく
…あのゴーレム達は破壊しても壊れないと言うのか?
ふむ…私は片手を伸ばしゴーレムに向ける
「植物創造[飛び種]」
背後から私の背丈程はある大きな花が咲き誇り、その花から種が撃ち出される
撃ち出された種はいくつもゴーレムに突き刺さり、一瞬で根を生やしゴーレムを覆い尽くす
ゴーレムを覆い尽くした根は徐々に太く大きくなり、ゴーレムを巻き込みながら大きな木になって行く
3体のゴーレムは大きな木になった
流石にこれなら倒せる様だ
襲いかかってきたゴーレムを倒す事が出来、一息つけるかと思ったのたが
他にも居たゴーレム達があちこちから集まってくる
その数は10や20では数え切れない
さすがにこの数は[飛び種]では倒せないな
それならば
「植物創造[殲滅の暴風林]」
今までの木とは比べ物にならないくらい大きな巨木が私を中心に伸びていき、辺りを覆い尽くす
[殲滅の暴風林]が太い幹や枝を唸らせながら、ゆっくりと螺旋状に回転を始める
回転は次第にどんどん速くなっていき、地面すれすれの高さにまでなる
そして[殲滅の暴風林]は瓦礫ごと辺りのゴーレム達をすり潰し、吹き飛ばして行く
[殲滅の暴風林]はそのまま数分間、回転を続ける
ふむ、上出来だろう
辺りに居たゴーレムは全てが崩れ去った
[殲滅の暴風林]は徐々にスピードを落とし始める
そろそろ制限時間か
すると、上空にから大きなゴーレムが突然現れ、襲いかかってくる
ゴーレムが突然現れた?…まあいい
私は止まりかけていた[殲滅の暴風林]の1部を伸ばして突然現れた大きなゴーレムを叩き潰す
大きなゴーレムの細長い両腕で多少の抵抗はされるが、[殲滅の暴風林]にはそんな物通用しない
抵抗する両腕ごと大きなゴーレムを叩き潰す
大きなゴーレムはあっさりと砕け散った
しかし、その結果[殲滅の暴風林]の制限時間が尽きてしう
[殲滅の暴風林]はゆっくりと止まり、動かなくなる
[殲滅の暴風林]は動かなくなると徐々に枯れていき、最後には跡形も無く消えてしまった
残念ながら[殲滅の暴風林]は1度発動してしまうとしばらく使えない
少し調子に乗りすぎたな
どうやらゴーレム達は、まだまだいる様子
先程の様に沢山のゴーレムに囲まれたら打つ手立ては…まぁあるにはあるが
…ふむ
「おいおいおい、やってくれるじゃん」
そんな事を考えていると背後から見知らぬ声が聞こえてくる
「誰だ!」
声のした方に慌てて振り返ると、ツギハギだらけの服を着た男が立っていた
手には安物の剣を持っている
なんだこの男
「…何者ですか?」
「あ?俺?あー…まぁ悪い奴?かな?」
悪い奴だと?
「…………もしかして、これをやったのはあなたですか?」
「…そうだと言ったら?」
男はニヤリと笑う
「倒します!」
私は植物創造の[槍枝]を発動する
男の足元から槍状の枝が何本も伸びていく
私のユニークスキルは声に出さなくても、発動する事が出来るのだ
伸びた枝は次々と男に突き刺さる
男はグッタリとして動かなくなった
………え?もう終わり?
もう少し抵抗されると思ったのだが
ついでに作った[木の剣]が無駄になってしまっ
背後から殺気を感じ、咄嗟に受け止める
なっ!?
そこには私に向かって剣を振り下ろす。ツギハギだらけの服を着た男がいた
[薙ぎ払い]を発動し吹き飛ばす
男は吹き飛んでいき瓦礫の中に吹っ飛んで行った
私は振り返り、[槍枝]を見る。そこにはツギハギ男の死体がちゃんとあった
2人いた?
いや
「いきなりはズルくない?」
3人目が現れた
「…………なんなんだ、一体…」
〜〜〜
〜〜
〜
「はぁ…はぁ…はぁ…」
思わず呼吸が荒くなる
どうなっているんだ
私の周りには大量のツギハギ男の死体で溢れかえっている
しかし
「またやられたよ、もっかいもっかい」
また現れた
「…何なんですか、あなた?」
「ん?何が?」
「…いったい何回倒したと思っているのですか…化け物ですか?」
「うーむ…お前に言われたくない」
そう言いながらツギハギ男は剣を振り下ろしてくる
何度も見てるので分かるが、剣の腕は素人
攻撃を交わし[木の剣]で斬りふせる
しかし次の瞬間には別のツギハギ男が現れ、切りかかってくる
「くっ!」
私は飛び退いてツギハギ男の攻撃を交わす
「…そろそろか」
ツギハギ男がそう言いながら突っ込んで来る
そろそろ?何かする気か?
私は[木の剣]でツギハギ男を斬りふせ、次は何処!?!!?
次のツギハギ男を探そうとした所、斬りふせたツギハギ男が立ち上がり抱きついてくる
しまった!まだ、生きていたのか!!!
ガッチリと抱きつかれてしまい、引き剥がせない
何とかしてツギハギ男を引き剥がそうとするが
その瞬間、私の足元が無くなった
は?
突然、直径数m程の大きな穴が足元に開き、ツギハギ男と辺りにあったツギハギ男の死体ごと穴に落ちていく
「離せ!」
ツギハギ男をなんとか離そうとすると
「何の策もなく殺されてると思ったか?」
ツギハギ男はそう言い、悪魔が嘲笑うかのような笑みを浮かべた
抱きついているツギハギ男と周りの死体に、光を漏らすヒビが入っていく
この光はまさか!自爆式魔道具!?
私は咄嗟に植物創造を発動しようとするが
視界の先で穴の口が塞がれていった
〜〜〜
sideダンジョンマスター
「なんとか勝てたな」
新種族の植物男を地下に落とし、爆弾で留めを指した後、再び同じ場所に来ている
いつも通りのホムンクスル体なんだけど、最終確認なのでDP交換した「髭切」という日本刀とマグナムを装備している
今度はちゃんと、銃弾も交換している
前回のような二の足は踏まない
最初から刀や銃を使えばもっと早く倒せたかもしれないが、ホムンクスル体が死んだ場合、リンクが切れ本体に戻されてしまう
しかし、その時に装備していた道具や武器は死んだホムンクルス体ごと置き去りになってしまうのだ
なのでもったいなくて使えなかった。だって結構高いんだもん
先程までのホムンクルス体は拾った武器を使っていた
拾い物なので対して思い入れもないし、価値もそんなに無いので、例え壊れたとしても気にもならない
そして、最終確認なので念には念にとマザーゴーレムを軸にした鞭ゴーレムを連れてきている
別に最初から連れてくればよかったのでは?とか考えてない
ないったらない
しかし、プランBが上手くいって良かった
プランBとは、ゴーレム達だけでは倒せない敵が現れた時用の作戦の事である
当初、その様な敵が現れた場合はミレイさんが戦うと言っていた
しかし、色々と考えた結果俺が戦う事になった
もちろんミレイさんには難色を示されたし何度も説得されたが押し通した
と言うのも、イーリスの町をダンジョンの中に落とす作戦が始まってしまえばゴーレム達に指示を出す司令塔はミレイさんになる
そのミレイさんが戦闘に参加してしまうと、俺だけではゴーレム達を処理しきれなくなってしまう
ミレイさんはやはりサポート役であり、この世界を作った創造神の部下
色々とレベルが違う
普段はそんな感じはしないが処理能力や認識力、分析力に配分。その全てをモニター越しから一瞬で判断する事ができる
そんな事、俺にはできない
なのでミレイさんが戦闘に出てしまうと当初に立てた予定がグダグタになってしまうと思い、俺が戦ったのだ
2度とやりたくないけどな
プランBについて説明しよう
プランBとはまず、ホムンクスル体の状態で武器を持ち対象を倒しに行く
俺は戦闘系のスキルを一切持っていないため、あっさりと倒されるだろう
しかしホムンクスル体のだから、倒されても本体に戻るだけ
そして本体に戻ったらホムンクスル体を生み出し、再び倒しに行く
これを延々と繰り返すのだ
ホムンクスル体の痛覚は遮断しているため痛くない
なので、ほとんどゲーム感覚だった
それに永遠と攻撃をするだけではない
すべてのホムンクスル体は自爆用の魔道具を隠し持っている
これは地下にいた犯罪者共がたくさん持っていた
この魔道具を使うと、使用者の身体そのものが爆弾になると言う優れもの
この魔道具を使い。頃合いを見ながら対象を閉じ込め、爆弾でトドメを刺す
完璧の作戦だ
さてさて結果はどうなったかな?
塞いだ穴を開こうと…
いや…もう少し待つべきか。こういうのは焦らないのが肝心
穴に閉じ込めたのは爆発による二次災害を強くする為である
大量の死体、つまり大量の爆弾ごと対象は地下に落ちる
これにより対象は狭い空間で四方八方から爆撃を喰らう事になる
そして爆発と同時に閉じ込めることで粉塵や毒ガス、爆発による熱で蒸し焼きにするのだ
何事にもじっくりコトコト
流石にここまでやればどんな種族特性を持っていようが死ぬだろう
さて、どうしたものか…一回ミレイさんのところに戻ろうかな
そんな事を考え、来た道を戻ろうとすると
背後の土が吹き飛び、土砂が雨あられの様に降りかかってくる
「なっ!?」
腕を交差して土砂を防ごうとしたが、マザーゴーレムを軸にした鞭ゴーレムが前に出て土砂から守ってくれる
ありがとうございます!
マザーゴーレムを軸にした鞭ゴーレム…マザー鞭ゴーレム越しにその方向を見ると
何本もの大きな木が絡み合いながら地下から飛び出し、穴を塞いでいた部分を吹き飛ばした様だ
そしてその木の中心から、ズタズタになった植物男が飛び出してくる
「あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
植物男は叫びながら、襲いかかってくるが
「き"あ"?!?!!」
マザー鞭ゴーレムの鞭により俺の目では視認出来ない程の速さで植物男に攻撃が入る
鞭の勢いで空中に投げ飛ばされた植物男は、空中で静止しているかの様に何度も何度も殴られている
最後に植物男は下半身を鞭でぐるぐる巻きに縛られ、顔面から地面に思いっきり叩きつけられる
「…あ、ありがとう」
俺はマザー鞭ゴーレムに礼を言う。正直言って怖い
マザー鞭ゴーレムは植物男をゆっくりと持ち上げ、俺の目の前に逆さ吊りでぶら下げる
植物男は聞き取れるかどうか分からない小さな声で、掠れる様な呻き声を上げている
おいおい、まだ生きてんのかよ
「…………ば………け……もの…が…」
…化け物、ね
「どっちがだよ」
俺はマグナムを構え、ハンマーを引き植物男の頭に向かって
ドォン…
引き金を引いた
マグナムの音が辺りにこだまする
植物男はビクリと痙攣し、次第に動かなくなった
…………流石に頭を打ち抜けば死ぬよな?
マグナムの銃口で何度かつつく
しかし反応はない、流石にただの屍のようだ
…やっと終わった
俺は脱力し、座り込む
疲れた
ホムンクルス体なので疲労はたまらないけど心が、魂が疲れた
…さっさとミレイさんの所に戻ろう
そう思い立ち上がる
ここにはもう用はない、マザー鞭ゴーレムをボックスに仕舞う
…植物男の死体も何かに使えるかもしれないのでボックスに仕舞う
その場所には瓦礫以外、何も無くなった
さて、移動移動
ダンジョン機能を使ってさっさとミレイさんのいる丘に戻る
「マスター、お帰りなさいませ」
ミレイさんがにこやかに出迎えてくれた
いい笑顔だ
新種族を倒せて嬉しいのだろう
俺も笑顔で返す
…………1つだけ言わせてほしい
ミレイさんは四つん這いの男性を椅子にし、優雅にお茶を飲んでいた
…………どう言う状況?




