30話 町の崩壊
※死体を捨てに行くと言う描写がありますが、世界観と時代を合わせた為にこの様な言い方をしてます。ご容赦ください
「マスター、着きました」
ミレイさんに言われて目を開ける
そこは広く、優しい風が吹き抜ける草原だった
「おお〜本当によく見える」
俺は草原から一望出来る、イーリスの町を眺めながら思う
ここはイーリスの町全体が見える草原
「牙狼の牙」のギルド員に教えてもらった場所だ
なんでも冒険者にとってはいいデートスポットになっているらしい
いろんな意味で
…まぁあれだ、いちいちホテル…時代的に宿屋かな?宿屋に言ってられるか!って感じなのかな?
まぁ、どうでもいいんだけど…べ、別にミレイさんの事なんてなんとも思ってないんだからねっ!
「マスター。ギガントゴーレム予定通りに到着致しました」
………無視ですか
ミレイさんが軽く頭を下げ、手を向けている
その方向、イーリスの町の向こう側、この草原の真反対の位置に超巨大なゴーレムが佇んでいた
あれはギガントゴーレム
全長60m、幅20m強の超巨大な人型のゴーレムだ
巨大だからギガントゴーレム、そのまんまだ
ちなみにこのギガントゴーレムは、ある物で出来ている
墓山だ
ゼン爺の話で聞いていた墓山。もしかしたら魔物が大量に閉じ込められているのではと思い、行ってみた
しかし、墓山には沢山の教会関係者と空から垂れるベールの様な巨大な結界に固められていて入る事は不可能
それならば、地下からならと思いダンジョンを伸ばしてみた所、特に邪魔が入る事も無く、あっさりと墓山の下に辿り着いた
そのまま墓山に入ろうと考えていたが、墓山の地下から大量のアンデットが出て来て驚いた
何故地下に大量のアンデット?と思ったけどミレイさんも分からないし考えても分からないので諦めた
取り敢えず、出て来たアンデットは魔物支配で支配
その要領で徐々に墓山まで行けたらなと思って居たが、掘っても掘ってもアンデットが出て来る
ミレイさんに調べて貰った所、どうやら墓山の周辺はほとんどにアンデットが埋められている様子
一々アンデットを掘り出すのも面倒なので、それならばとそこら一帯ごとゴーレムにしてみた
当初はもう少し小さかったがどうせならともっと大きく、巨人っぽくしてみた
大変に満足である
「マスター、よかったら此方にどうぞ」
町を眺めていた俺にミレイさんが声をかけて来る
振り返るとミレイさんは小さなテーブルと椅子を2つ出し優雅に座っていた
………色々とツッコミたいが、そうすると面倒そうなので言われるがままにもう1つの椅子に座る
俺が座るとミレイさんが何かを渡して来る
「おーありがと…何これ?」
ミレイさんから渡されたものは木製のコップに入った緑色の謎の液体だった
「野菜を切り刻んだ飲み物だそうです。貴族に人気があるそうですよ」
ミレイさんは楽しそうに話してくれる
「へー」
スムージーとか青汁みたいなものかな?どれ?
試しに一口、口に入れてみる
そしてすぐに
「ぶっ?!」
吐き出した
不味い!苦い!は?????
あまりの不味さにビックリしてしまう
ピーマンとゴーヤを何倍も濃くして混ぜ合わせた苦味に、ほうれん草や小松菜などの葉野菜を入れ青臭くし、ドロドロとネットリとした喉越しの最悪な飲み物
脳が処理しきれずパニックになる
ふと隣を見るとミレイさんは、テーブルに頭を付けてクネクネと暴れている
顔も真っ青だ
「…ミレイさん不味かったら吐き出しな」
少し心配になり声をかける
「だい…しょう…ふ…れす」
こぼす様な、か細い声で答えてくれた
ミレイさんは必死に口を押さえて頑張っている
しばらくミレイさんが飲み込むのを待ち
「どうしたのそれ?」
何処で手に入れたか聞いてみる
「…………市場です」
そう言うとミレイさんはテーブルに突っ伏してしまった
あの味じゃあ仕方ないか
アイスクリームが美味しかったからって他の店も美味いとは限らんのだよ、ほとんどが偽物なんだから
そう思いながらコップをテーブルの端の方に追いやる
二度と飲みたくない
…ミレイさんは町に行ってからと言うもの食べる事にすっかりハマってしまった
最近は常に何かを食べている
どんな時も如何なる時も何かを食べている
気にはなっていたが特に支障も無いので放って置いた
町にまで買いに行っていたとは知らなかった
「…マスター」
突っ伏したままミレイさんがメニュー画面を開いて見せて来る
時間か
俺はすかさず立ち上がり
「よし…えっと…あ〜あれだ…とりあえず、ギガントゴーレム作戦開始」
ギガントゴーレムに命令を出す
いきなりだったので、ふにゃふにゃになったのは仕方ない
ここからギガントゴーレムに声が届くはずないが、魔物支配のスキルが発動してギガントゴーレムに命令が行く
視界の先でギガントゴーレムがイーリスの町に向かってゆっくりと動き出した
…上手くいって良かった。ここから命令が届かなかったら近くまで移動しなくてはいけなくなる所だった
動き出したギガントゴーレムを見ながら思う
あのギガントゴーレムが一体何をしようとしているのか
答えは簡単
イーリスの町を地下に落とそうとしているのだ
これは比喩や言い回しなどではなくそのまんまの意味
今、イーリスの町は町1個まるまる入る巨大な何も無い空間のダンジョン上に乗っている状態になっている
町の下にある巨大な空間はダンジョンなのだ
何故そんな事になっているかと言うと俺達が頑張って掘ったからだ
まぁ簡単に説明をする
まずどうやって町の人をDPにするか考えた
ダンジョン中で人を殺す事か、ダンジョンの中に人が居るとDPが貰える
ここで問題なのが町の人をダンジョンの中に入れなければならない事だ。そうじゃないとDPにならない
しかし町の人全員をダンジョンの中に入れるなど不可能であり困難極まりない
そこで考えた所、ミレイさんのとある説明に疑問が生じた
それはダンジョンを広げる際に、先にある程度掘っておけばDPが安くすむと言うもの
しかし、それはDP使う必要なくないか?と、ちゃんと最後まで作ってしまえばいいのでは?と言う疑問だ
その答えはミレイさんが教えてくれた
なんとダンジョンは「不壊」つまり壊れないのだ
まぁ理由は単純。強力な魔物がダンジョン内で暴れ、その余波でダンジョンが壊れたら元も子もないからと
確かにその通りだ。だからダンジョンを広げる際には、最後にDPを使わなければならない
プラモデルで言う所のニスを塗るみたいなものだろう
しかしここで重要なのが広げただけのダンジョンは壊れる
逆に言えば壊れるだけでダンジョンなのだ
ダンジョン内で殺せばDPになる
その事を聞いた日から作業ゴーレムを使って町の下に空間を掘り始めた
作業ゴーレムを使って穴を掘らせ、そのゴーレムが掘り出した土で新たな作業ゴーレムを作る
その要領でどんどん増えていくゴーレム達
もしダンジョンが崩れそうになったらゴーレムを使って支柱、柱にして支える
ゴーレムの柱はいつでもどこでも簡単に作る事が出来るので大変に役に立った。長さも大きさも後から変えられるしな
その結果、時間さえかければ巨大なダンジョンを生み出せるのだ!!!
ズゥゥゥゥゥゥンンンッ!!!!!!!!
ギガントゴーレムが歩き出した振動が伝わってくる
はっはっは、すごいな
後は
「ミレイさん!」
ミレイさんの方を見るとミレイさんは起き上がりメニュー画面を操作していた
「分かっています…地下にいる柱となっている全てのゴーレムをボックス内に仕舞いました!」
よし!これで支えの無くなったイーリスの町がダンジョンに落ちるのも時間の問題だろう
ギガントゴーレムが歩くことにより起こる振動もすごいし
そして、町に近づいたギガントゴーレムが両腕を上げて
腕を振り下ろ
パァァァァァンンン!!!
お?なんか空気の結晶みたいなものに遮られた?
「あれは結界ですね」
ミレイさんが教えてくれる
あれが結界なのか
墓山にあった結界は光のベールみたいな感じで空から垂れ下がっていたが、イーリスの町の結界は透明のドームみたいのなんだ
シティーコアが張る結界はみんなドーム型なのかな?
そんな事を考えていると、結界は何の意味も無かった
ギガントゴーレムの衝撃でイーリスの町はどんどん崩壊して行く
見てるだけだけどめちゃくちゃ楽しい
注釈
墓山とはある程度の都市の近くには必ず存在し、その一帯の死体は全て墓山に捨てられます。
墓などは高級品の為、1部の上流階級しか持っておらず、ほとんどの死体が1つの場所に捨てられます
墓山は山では無く、当初は平地に死体を埋めていました。しかし、その内に掘っても掘っても死体が出て来る様になります
それならばと死体を土魔法で包んで置いて行く事になりました。それが長い年月を重ね、山となり教会が管理をする様になり
今の墓山になりました




