3話 ダンジョンマスターの仕事
「人間が原因ってのはどう言うこと?」
俺はメイドさんに聞く
「…この世界には創造神様が決めた、絶対的ルールがいくつか存在します。そのうちの一つが繁殖についてです。その内容は同じ種族同士でしか繁殖は出来ない。と言ったルールですね」
「同じ種族?つまり、エルフはエルフ、ドワーフはドワーフとしか子供が作れないって事か?」
「そうなります。しかし、人間のせいでその絶対のルールが覆ってしまいました」
「繁殖力って種族特性が原因か?」
「そうなります」
なるほど…繁殖力が強すぎるから多種族との間に子供が出来てしまったと
「でも、いくらルールを覆したからって皆殺しはやり過ぎじゃない?」
「…人間の種族特性によって引き起こされた事はどうにも出来ない所まで来てしまったのです」
「と言いますと?」
「…始まりはあるエルフと人間の夫婦でした。古来より異種族間での婚姻は無いわけではありませんでした。しかし、この夫婦は子を成してしまいました」
「そんなに大変な事なのか?」
「…分かりやすく言いますと、動物と人間の間に子供が出来てしまった様な物です。そのくらい種族の差があるのです」
「…なるほど?」
良く分からんがヤバイ事なんだろうな
遺伝子操作とかが無いのに自然に生まれたからやばいのかな?突然変異とかみたいな物か?
「当初、創造神様もこれはいけないとその夫婦と子供を殺そうとしたのですが、その子供がある問題を抱えていました?」
「ある問題?」
病気とかか?
「…なんの力も持っていなかったのです」
「………へ?」
「エルフの精霊を見る力も人間の高い繁殖力も持っていなかったのです」
「あ、そういう事」
「当初、我々は一体どのような個体だったのか未知数だったので戦々恐々としていました。しかし、実際に蓋を開けてみればこの様な結果で…」
「…何もしなかったって事?」
「…はい、何の力もないので放っておいてもいずれ死ぬだろうと」
「なるほど」
まぁ散々ビクついていたのに、実際は何の力も持ってなかったら放っておくか
「それから数百年が経ち、その様な個体はハーフと呼ばれ数が多くなりましたが、どの個体も突飛する様な力を持っていなかった為に我々は気にも止めていませんでした」
数百年間そんなんじゃあ仕方ない
「…しかし、事件は起こりました。とあるハーフとハーフとの間に生まれた個体が見たこともない様な力を持っていたのです…この個体は一種の突然変異みたいなもので、ハーフの場合は遺伝子に組み込まれているお互いの種族特性が反発しあい、結果お互いの力を消してしまうのです。しかし突然変異体は上手いこと種族特性が混ざり合って、創造神様でも予想だにしない力を手にしてしまったのです」
「あー…もしかして新種族ってその突然変異体のこと?」
「そうなります…そして我々はハーフを放置し過ぎました。ハーフが初めて誕生してから数百年、その間に数多くのハーフが生まれ、多くの人々に血が混ざりました…」
「…つまりどこから新しい突然変異体が生まれるか分からないのか」
「そうなります、ですからマスターには人々を皆殺しにしてもらいたいのです」
「…」
「何か気になることがありますか?」
「ん?いや、力を持っただけで殺されるんだなーって思って」
顔に出てたかな?
「…実際は少し違います」
「ん?というと?」
「…なぜ新種族を根絶やしにしたいのか、なぜ新種族と言う呼び方なのか。それは簡単に言いますと管理出来ないからです」
「管理できない?」
「フィアリスの創造神様が世界を作るときに作ったのは5種族です。そして管理しているのも5種族。新しく種族が生まれたのだから増やせばいいではないかと思うかもしれませんが、それは不可能なのです。そもそも増えること自体がおかしいのです。5種族は5種族、減ることはあっても増えることは絶対にないのです」
「でも、増えてるんだろ?」
「だから今回の緊急処置としてマスターに来てもらったのです」
なるほど。つまり俺がここにいるのは新種族が原因と…そう思うと可哀想って気持ちが薄まるな
「それに管理出来ないと色々困るんです。困管理下にある個体なら運命を操作する事が出来ますし、その個体が何を考えているか心の声を聞けば何をしようとしているのかも分かります」
「つまり新種族は管理下にないからどんな力を持っているか分からない、何をしようとしているかも分からない。運命を操る事も出来ない。しかしかなり強い力を持っているのは確かってこと?」
「そうなります」
たしかにそれは危険だな
その管理下に無い新種族が神を殺せる力とか世界を崩壊させる事が出来る力を持っていたら大変
みたいな感じか?
「新種族が危険ってのはわかった。それで俺はダンジョンってのを使って人々を殺していけばいいんだな?」
「はい、そうなります」
「…そのダンジョンってのは何?迷路?」
「ダンジョンと言うのはですね。魔物を効率よく生み出すシステムの事です。どうして魔物がいると思いますか?」
「どうしてって…集まった魔力がコアになって魔物になるんだろ?」
「そうです。しかし魔物が生まれない様にする方法は創造神様ならいくらでもございます」
「…それをしなかったって事は何かに必要って事か?」
「そうなります。魔物はですね、人々の数を減らすための存在なんです。と言いますかそもそもの話、フィアリスに何故5種族も人類がいるのか、それは殺し合いをさせるためです」
殺し合い?
「世界に存在してていい種族の絶対数は種族ごとに決まっています。あまり数が多くならない様に、各種族には種族特性を与え、見た目や能力に差を生み、劣等感や忌避感を刺激し、殺し合いをするように仕組まれています」
「おーエグい」
確かに、魔人は魔力が多くて狡いとかエルフは見た目がいい癖に長生きとか狡いってなるよな…劣等感や忌避感を刺激って上手いことやるなー
「しかし、ハーフが生まれたことにより種族の壁だんだん薄くなってしまいました。人々は種族間での争いが少なくなり、そこで我々はダンジョンを作りました。ダンジョンはここ数百年の間に作られたんですよ。ダンジョンから効率よく魔物が生み出されれば魔物は勝手に人々を殺しますから」
「ああ、争いが減った変わりに魔物に人を殺させるのか…魔力があると色々と都合がいいって言ってたのは魔物が生まれるから?」
「はい、それとスキルや魔法がありますと殺し合いが過激になりますから」
本当に数を減らすのが目的なんだな
「つまり俺は、そのダンジョンで生み出した魔物を使って人を殺していけばいいって事か?」
「そうなります。そしてダンジョンマスターはダンジョンを運営する地位を指します」
なるほど、なるほど
そしてそのダンジョンマスターが俺、と
「…仕事のうちの1つ、ダンジョンの回収ってのは?」
「…争いが少なくなり、人々の数は徐々に増え続けています。ハーフの数も増え、新種族もどんどん生まれていきます。そこにダンジョンです、おかしいと思いませんか?」
「おかしい?」
「はい」
「…ダンジョンを作るタイミングか!」
「そうです、あまりにも遅いと思いませんか?」
「確かにハーフの数が増え始めていた時にダンジョンを作ればいい。言われてみればタイミングがおかしい、なんで今なんだ?」
「では、その説明をさせていただきます。ダンジョンというシステムを作ることなった切っ掛けから話させていただきます」
「人々が増えたからじゃなくて?」
「それも原因ですが、実際の切っ掛けは、人々が聖地を犯したからなのです」
聖地ってのは確か…創造神に与えられた仕事の一つで
聖地の保護…だっけ?
「聖地とは聖なる大地などでは無くただ単に創造神様のお気に入りの場所の事です。この世界には創造神様がお気に入りの場所がいくつもあり、創造神様は時折その場所を眺めて楽しんでいました。しかし、人々の数が増えたために、住処を増やそうと、人々は多くの開拓を始め、ついには創造神様のお気に入りの場所にまで開拓をしてしまったのです」
「それで保護なのか」
「そうです。そもそも人々は創造神様が作った絶対的ルールを破っています。本来なら世界を一度消滅させ作り直す必要があるのですが、創造神様がそうしなかったのは、そのお気に入りの場所をなくしたくなかったというのが一番の理由ですね」
「…世界を作り直す?」
「世界を消滅、ゼロに戻して最初から作り直す事ですね。ちなみにマスターが最後のダンジョンマスターです。もしマスターが失敗したら創造神様はこのフィアリスを諦め世界を作り直すそうです」
「…つまり俺は世界を滅ぼす大魔王であり世界を救う勇者でもあるってこと?」
まぁ救うの自然界だけど
「勇者と魔王がよくわかりませんがそうだと思います」
「まーじーかーよー」
俺の負担ってかプレッシャーデカすぎない?
「創造神様はこれまでに数多くのダンジョンを作ってきました」
「あ、作ってたんだ」
「はい。しかし、その多くは失敗に終わりました」
「失敗?あ、ダンジョンの回収ってその失敗したダンジョンを回収する事?」
「そうなります。創造神様は1番最初のダンジョンに群れで生活するタイプの魔物をダンジョンマスターにしました。魔物にも群れで生活する種類がいるのです、いくら生み出すといっても毎回別の魔物を生み出すのではなく同じ個体を増やす方が繁殖などもして増えやすいですから」
魔物も繁殖するんだ
「しかし、そのような魔物は基本的に知能が低く、自分と同じ種族しか作らない、ダンジョンをただの住処にするだけのダンジョンマスターになってしまいました」
「それで失敗か」
「はい…次に我々は、ダンジョンを人々に与えました…しかし、これも失敗に終わりました」
メイドさん?試作機000号さんの顔がどんどん暗くなる
「あろうことか、人々はダンジョンマスターの仕事をせず!売却しまったのです!…人々といっても、地位はあります。最下層の人々にダンジョンを与えても魔物と同等なので、ある程度の知識、教養のある個体にダンジョンを与えました。しかし、教養があるからこそダンジョンの有用性を理解し金持ちや国に取り入ったのです」
「あー…なるほど」
「まさか創造神様を裏切るとは思わず。現在人々の所有するダンジョンは文明の進化の足掛かりとなってしまい、減らすはずが逆に数を増やす手助けをになってしまいました」
「それで失敗か」
創造神も不憫な
「創造神様を裏切った時点でに創造神様関係の記憶は消しましたがダンジョンマスターの地位を別の個体に移動させてしまった為、ダンジョンの回収は一時的に諦めました。どのダンジョンマスターも創造神様の事は秘密にしていたのはせめてもの救いでしたね」
なるほど
でもなんで諦めたんだろ?
「で、俺はその人々が所有しているダンジョンを奪い返せばいいのか」
「そうなります」
「ダンジョンマスター地位を移動させるって、そんなことも出来るの?」
「出来ると言うよりも、出来たと言った方が正しいですね。もう、裏切られてはたまらないのでマスターに関してはできないようになっています」
「ああ、そう…残念」
他の人に押し付ける事は出来ないのか
「ダンジョンマスターの地位を移動させるの出来ない様にはしないの?」
「それは残念ながら出来ないのです。ダンジョンを作る際に設定していなければ、手を加えることは出来ても変えることは出来ません。ダンジョンマスターの地位を1度移動させたらその物が死ぬまで移動させる事が出来ないやダンジョンマスター化を調整する事は出来ても禁止したりすることは出来ないのです」
なるほど、俺のダンジョンはその設定がしてあるってことなのかな?
「そうなのか…ダンジョンマスター化ってなんなんだ?」
「ダンジョンマスター化はですね、人々をダンジョンマスターにする際に、適した身体に作り変えているのです。ダンジョンマスターはですね、普通の体では耐えることができません。ダンジョンマスター専用の身体でなければいけないのです。ですからダンジョンマスター化で身体を作り変えているのです」
「あーなるほど、耐えられないから作り変えるのか」
だからあんなに痛かったのか?
「そうなります。話を戻しますね、ダンジョンマスターには裏切られ、新種族が現ました。創造神様はその時、一度すべてを諦め、世界を消滅させることにしたのです」
「…………お?」
よく分からない?作者もよく分からない