27話 絶望の始まり3
side白騎士長、ゼパイル
私はゴーレムの中に突っ込んでいく
「炎剣!菊一文字!!!」
燃え盛る横切りの斬撃が3体のゴーレムを吹き飛ばす。しかし倒しきれてはいない
攻撃を繰り出した直後に5つの方向から同時にゴーレムが襲いかかって来る
「おおお!!!」
魔剣『炎剣のブレッタ』を素早く動かし、往なし、躱し、弾き、避ける
致命者になりかねない攻撃は何とかする事は出来た。しかしその隙をつかれ思いっきり殴られてしまう
「グッ!!!」
後方に跳びながら右手を犠牲にして何とかガードする。少々吹き飛ばされてしまったが身体を捻らせ、衝撃を逃しながら着地する
このゴーレム達は1体1体の動き方がかなり違う。スケルトンが軸になっているのだから当たり前かもしれないが大変にやり辛い
見た目が全く一緒なのも困り者だ
1体の動きを覚えたとしても、すぐに他のゴーレムと入れ替わる
だから覚えた動きをするのが今戦っているゴーレムなのか他のゴーレムなのかわからなくなる
目印をつけようにも浅い傷は身体を引き伸ばして塞いでしまう
大変にやり辛い
5体のゴーレム達は再び襲いかかって来る
最初に吹き飛ばした3体のゴーレムも戦闘に戻ってきてしまった
私は剣を構えようとするが、片手が思うように動か無い
我が一族に代々伝わる菊一文字は両手で剣を振ら無いと発動しない
5体同時に相手するのもギリギリだと言うのに8体だと?それも菊一文字も無しに?
心が覆い潰されそうになる
…………ついにここまでなのか…リーゼルト…すまなかっ
「助太刀するぜ!!!」
私が絶望に直面していると、5人の剣士が何処からともなく飛び出してきた
彼らは全員が魔剣を持っており、様々な攻撃を繰り出してゴーレムを簡単に破壊する
「お、お前たちは?」
「あ?俺たちは戦闘ギルド「牙狼の牙」の冒険者だ!…大丈夫かよ、白騎士様よ」
氷を纏った魔剣を持つ男が答えてくれる
ギルドが助太刀に来てくれたのか有り難い…先程はクソとか言ってすまなかった。心の中で謝罪をする。別に直接言った訳では無い為口に出す必要は無い
「…ああ、大丈夫だ」
「そうかよ…んで?俺たちに出来る事はあるか?」
「…それならば騎士と兵士を助けてやってくれ…それと…固まっていると城壁が飛んでくるぞ」
そう言って、猛スピードで飛んでくる城壁の1部を見る
「へ?城壁?ってうお?!!!?!」
男は驚きながらも城壁を斬り刻み、吹き飛ばした
「あっぶねー!!!もっと早く言えよ!!!白騎士!」
男が睨んでくる。こいつ、軽い感じだが実力はあるようだな
私は痛む手を無理矢理動かし男の隣に並ぶ
「あんた、その傷で戦えんの?」
「舐めるな。私を誰だと思っている。この町の白騎士長だぞ!平民に負けるか」
「あーやだやだ。これだから権力者は」
男はやれやれと首を横に振るっている
「お主…名は?」
「あ?リーゼだけど?」
「そうか…リーゼか…」
リーゼルトに似た名前なのは偶然なのか?いや、神のお導きかもしれないな
首から下げていた、光神教の首飾りを取り出してキスをする
神よ、どうか我々をお救いください
…こんな事…初めてやったな
「リーゼ、行けるか?」
私がそう聞くと
「それはこっちのセリフだ!!!」
リーゼはそう返してくる
私は笑みを浮かべながら、リーゼと共に走り出した
「「おおおおお!!!!!」」
迫り来るゴーレムをリーゼと共に次々に切り裂いていく
破壊した瞬間に次のゴーレムが向かってくるが気にしない
ゴーレムの攻撃を受け止めると、リーゼが破壊する
リーゼが受け止めれば私が破壊するのだ
他の剣士も、戦闘に参加してくれるので次々とゴーレムを破壊する
巨大ゴーレムにより城壁が飛んでくるが、ゴーレムごと切り裂く!
「炎剣!菊一文字3式!!!」
3式は菊一文字を同時に3回発動する技だ、後日に後遺症が出る危険な技だが今は気にもならない
城壁もゴーレムもバラバラに吹き飛んでいった!
行ける!!!
各々で戦っている騎士や兵士も次々と合流していく
そして近場にいるゴーレムは全て破壊することができた
私は合流した者達に向かって
「皆の者!よく聞け!我々はどうにかして壁を登り、あの巨大なゴーレムを倒す!ついて参れ!!!」
激を飛ばす!!!
「策はあんのかよ」
リーゼが聞いてくるが、そんなものない!!!
「なんとかする!」
「なんとかって?」
「なんとはなんとかだ!!!」
こういうのは勢いだ!我々は、今、勢い付いている
こういう時は大抵が何とかなると過去の戦争で経験済みだ!!!
「…ああ、そうかい!それなら壁にたどり着くまでなら手伝ってやるよ!!!」
リーゼがそう言ってくる、私は笑みを浮かべ
「それは助かる!皆の者!…いくぞ!!!!」
「「「「「「「おお!!!」」」」」」」
私達は全員で、壁に向かって走り出した
壁に近づけば近づく程、様々な場所からゴーレムが現れ邪魔をしてくる
しかし、我々は止まらない!!!
迫り来るゴーレムを次々と破壊する!
何体来ようとも何が来ようとも我々は止まらない!
私は5体のゴーレムを1度に切り刻み、新しく瓦礫の下から出てきたゴーレムを蹴りで破壊する!
はっはっはっ!!!我々に倒せないものは、な?!
私はあまりの衝撃で、脚を止めてしまった
「どうした!」
リーゼと4人の剣士も脚を止め聞いてくるが、次の瞬間には驚いた顔になる
後ろを振り返った事で気づいたようだ
私たちの後ろにいた兵士と騎士は、誰1人としてついてきていなかった
「どういうこった!あいつらは?」
リーゼが聞いてくるが、答えは分かっている
「…どうやら死んだみたいだ」
「死んだ!?どうやってだよ!ゴーレムはみんな壊したぞ!」
「そうだな…そのせいでかもな…」
私は鎧についた血を拭いながら言う
「そのせいって…はあ?!」
リーゼも自分の鎧についた血に気づいたようだ
他の4人も各々についた返り血を見て驚いている
「どういうこった?!」
「…予想だが襲いかかってきたゴーレムの中に生きた人が入れられていたのだろう…それも、この町の市民が…」
「はぁ?!」
「兵士と騎士は、魔法で縛られていることは知っているか?」
「ああ」
「その魔法の禁止事項にな一般市民の命を不当に奪ってはならないというものがある。私が許可を出せば不当にはならないのだが…出してはおらん…出したとしてもゴーレムを破壊しろとしか言わなかっただろうな」
私は脱力してしまう。町のためにと戦っているのに市民を気付かずうちに殺してしまっているとは
「じゃあ、あいつらは契約魔法が発動して死んだっていうのかよ!…クソっ!!!」
リーゼが悪態をつく。そうだな…まさにクソだ
ドォン!!!
空中からまた新たなゴーレムが現れた。しかも、今までのゴーレムとは違う
3倍ほど大きく両腕が鞭のようになっている
1体だけだがなんとなくわかる。こいつは強いと
「チッ!おい白騎士!」
「…なんだ」
「あんた、なんとかするって言ったよな?」
「…ああ」
「じゃあ、なんとかしろ!」
「だが私1人では「いいからなんとかしろってんだ!」…わかった」
私にはそう言うしかなかった
「なら、こんなところにいないでなんとかしに行け!」
「…お前たちはどうするのだ?」
「…ちょっと可愛い子ちゃんに声をかけられちまったからな、色男としては相手してやんなきゃだろ?」
そう言ってリーゼと4人の剣士は剣を構える
「…」
「…今来た道を戻っていけば俺たちのギルド員が集まっている場所がある。あいつらなら手を貸してくれるはずだ」
「…だが、それだとお前たちは…」
「…もとより覚悟の上さ…それに俺たちの手は汚れちまった…生きていても奴隷落ちがいいとこだ…最後くらいカッコつけさせろ!!!」
「…すまない」
「…もし生きてたらよ!永久奴隷兵士にしてあんたのところで働かせてくれよ!あんたとの共闘、最高だったからよ!!!」
「…ああ!絶対にそうしよう!絶対だからな!!!」
そう言って、私は走り出した
「…………たくっ。さて、お前ら覚悟できてんだろうな!ギルドの名に恥じぬよう戦うぞ!我ら、戦闘ギルド!「牙狼の牙」が冒険者!行くぞ!」
「「「「おお!!!」」」」
後ろから、戦闘音が聞こえてきたが
私は振り返ることなく走り続ける
ーーー
ーー
ー
私は来た道を戻り走っている
予想は最悪なことに的中し、定期的に部下の変わり果てた姿を見ることになった
皆、目や鼻、耳から血を垂れ流し死んでいる…これは違反をした奴隷が死ぬ時と同じだ…やはり契約魔法が発動したんだな
どんどん重くなる身体を引きずるようにして走る
すると6人組の子供がいた
子供?あの高さから落ちて無事だったのか?…子供なら保護しなければ
市民を見捨てた事と自らの手で命を奪ったことの罪悪感でそんな事を思ってしまう
私は子供たちに近づき声をかける
「お前たち、何をしている?」
「げっ!白騎士!」
1番背の高い子供が反応した
私を白騎士だと理解するか…あの顔はどこかで…ああ
「お前は確か…スラム街で子供たちをまとめている…パージだったな」
何度か兵士が追いかけていたので、覚えている
「チッ!気安く呼ぶんじゃねーよ!カスが!」
パージが悪態をついてくる
カスか…あながち間違ってもいないな
子供の言葉にさえ反応してしまう。いかん、いかん
「…何処に行くのだ?ここは危険だ、私と来なさい」
そう言って手を差し伸べるが
「うっせぇ!関係ないだろ!」
パージは5人の子供を連れて逃げ出す
「待て!子供だけでは危険だ!」
私は追いかけようとするが
「子供扱いしてんじゃねーよ!ウスノロ!これでも食らえ!」
バージがそう言いながら口を大きく開ける
すると
パージの口の前で、手のひらサイズの礫が生成され飛んできた
「なに?!」
私は咄嗟にかわす
なんだ今のスキルは!!!
パージを見るがそこには誰もいなくなっていた
…………見失ったか…口から魔法を発動するなどと聞いた事も無い…もしかしたらバージはユニークスキル所有者か?それならば先程のスキルも説明がつく
…………ユニークスキル?
そうか!
「ユニークスキルなら、何とか出来るかもしれん」
そう言って振り返る…当然そこには誰もいない…いつもならリーゼルトと部下が…いかんいかん
こめかみに指を当て、散々仕事で処理してきた様々な書類を遡る
思い出せ、思い出せ
この町に何人のユニークスキル所有者がいた?
思い出せ!思い出すんだ!
そして何とかして2人を思い出すことができた
1人はリーゼのギルドである「牙狼の牙」の冒険者、リック
しかしこの男のところには最終的に向かうので後回しにしよう
もう1人は確か…奴隷商の者だったな!
奴隷商は確か北区、あっちの方角だ
北区が落ちたであろう場所を予想し走り出す
どんなユニークスキルかは覚えていないが、ユニークスキル所有者がいればなんとかなるはずだ!
そう思いながら走り続ける
そのユニークスキル所有者が生きていることを願って
注釈
この世界の人は手から魔法を出すと言う常識が備わっています。その様な決まり事は無いのですが何故だか殆どの人がその様に魔法を発動します。
なのでゼパイルは口から魔法を放った少年、パージをユニークスキル所有者だと勘違いしました
ちなみにパージは本当にユニークスキル所有者です




