23話 奴隷魔法と教会
ギルドの中は上へ下へのドンチャン騒ぎになっている。話聞けるのか?これ?
…リックとミレイさんは率先してドンチャン騒ぎに混ざっていった。ミレイさんお仕事忘れてない?
「いや〜美味い!龍の肝酒はいいのう…どうじゃ、お前さんも一杯」
「いや、聞きたいことを聞いてからにしますよ」
「そうかの?それで次は何が聞きたいんじゃ?」
「そうですね…街中で鎧を着た2人組を見たんですが…」
「ああ、兵士かの?それがなんじゃ?」
「戦闘を見たのですが強くないですか?」
「ん?そりゃそうじゃろう兵士じゃし、それに奴隷魔法があるからの」
「奴隷魔法があるから…ですか?」
「奴隷魔法はわかるかの?」
「えっと、奴隷にかける魔法としか」
ミレイさんに聞いた時はにそんな事を言っていた
「奴隷魔法とはな、魔法で強制的に従わせる魔法のことじゃ」
「強制的に?」
「そうじゃ。ほとんどは奴隷にかける魔法なんじゃが、奴隷魔法がかけられているとな身体が勝手に動いて仕事をするんじゃ。兵士はそれを使っておる」
「ん?」
どういう事だ?
「考えても見ろい、兵士というのは国の機関じゃ。国ということは金があるし権力もある。当然、頭の悪い馬鹿が出てきて犯罪に走るだろ?」
「まぁはい」
地球でもどんなに文明が進んでも居たからな〜そんなのは
「しかし、兵士を魔法で縛ることにより犯罪を起こせなくしたんじゃ」
「おお!それはすごい」
犯罪を起こす起こさないじゃなくて、起こせないようにしたのか…考えたな
「しかも魔法で縛っておけばどんなに危機的状況に陥っても落ち着いて働くからの…大勢が助かっておる」
確かに緊急時に慌てない困らない落ち着いている何て奴が居たら助かるからな
「しかし…それだと問題が出ませんか?兵士になりたくないとか」
「いや、それはない。兵士になりたい奴はどんどん増えているぞ」
「何故ですか?」
無理矢理、働かされる何て嫌でしか無いと思うが
「まず、兵士は奴隷魔法ではなく契約魔法というもので縛られている。これは奴隷魔法よりも縛る力が弱い魔法でな、兵士は契約魔法により働く時間が決められておる。その魔法が発動しとる間は兵士として働くんじゃ」
「なるほど…契約魔法が発動してない時間は?」
「それは自由じゃよ。帰ってもいいし寝てもいい…何をしてもいいんじゃ」
つまり本当に仕事は終わりってことか、まるでホワイトな会社の正社員だな
「と言う事は兵士がいない時間もあるんですか?」
「いやそれはない。兵士には2種類あってな、契約兵士以外に永久奴隷兵士というものがいる。そいつらが働いておる。それに騎士もおるからな」
「永久奴隷兵士に騎士?」
「犯罪者はな大きな罪を犯してなければ奴隷として売られるんじゃが、永久奴隷兵士は最も重い犯罪者にかせられる罰じゃ」
「ほうほう」
「はっきり言って、兵士の仕事は楽じゃぞ。危機的状況になったら率先して働かされるが基本はボケッとしてれば訓練や仕事が終わる。魔法が発動中は意識がないからな。勝手に強くなるんじゃし、勝手に金も入ってくる」
なんとホワイトな。だからなりたい奴がどんどん出てくるのか
「その点永久奴隷兵士は別じゃ。あやつらは24時間360日、死ぬまで兵士として働かされる。本当に危機な仕事もこやつらの仕事じゃ。片目に魔道具を入れられるしな」
「片目に魔道具?」
あの赤く光っていた奴かな?
「そうじゃ「メモリーズ」という魔道具でな、永久奴隷兵士はすべてが入れられておる。この魔道具はすべてが繋がっており、他の永久奴隷兵士が見たものを探して調べることができる代物じゃ。これにより指名手配犯になると、翌日には国中の兵士が知っておるぞ」
それはすごい!まさにインターネットじゃないか
もしかして人の脳をハードディスクとかコンピュータの代わりにしているのか?
「じゃから兵士は強いんじゃ」
「なるほど」
まぁ勝手に訓練して働いていれば強くもなるか。自由意志がないんじゃ、全員がキチンと訓練しキチンと働く。サボることもできなければやる気が出ないとか関係ないのか…すごいな
「騎士っていうのは?」
「騎士は貴族の護衛じゃ」
「貴族の護衛?」
「兵士というものは民を守るものじゃが、騎士は違う。騎士は貴族を守るものなんじゃ…永久奴隷兵士ではなく、契約兵士の中で功績が認められるとな騎士になれる。と言っても騎士も契約魔法で縛られるからなそう変わりはせん。守るものが民から貴族に変わっただけじゃ…白騎士以外はな」
「永久奴隷兵士は騎士にはなれないのですか?」
「ああ、絶対になることはできない。一生、死ぬまで兵士のままじゃ」
「なるほど…その白騎士ってのは?」
「本当に功績が認められた騎士に送られる称号のことじゃ。仕事は他の騎士と変わらんが、他の騎士に命令できる権利と魔法に縛られないというのが特徴じゃな」
「白騎士は魔法に縛られないのですか?」
しかしそれだと、魔法で縛られる兵士の利点が消えないか?
「そうじゃ、そのくらいの立場があるんじゃ…貴族とそう変わらん」
ああ、なるほど。つまり、永久奴隷兵士は死ぬまで兵士として働かされる
契約兵士は魔法発動中は働いて民を守るのが仕事。功績が認められると騎士に
騎士は貴族の護衛が仕事で、功績が認められると白騎士になれると
そして、白騎士は魔法で縛られない
「白騎士はどのくらい居るのですか?」
「そうじゃな…この町にも2人ほどいるが、白騎士のほとんどは貴族出のボンボンじゃからの…何人いるかは分からん」
「ボンボンってことは…白騎士は強いとは限らないんですか?」
「そうじゃ。貴族の家を継ぐのは基本的には長男か次男。3男や4男ともなるとまずないからの…仕方なく兵士になるんじゃが、契約魔法には縛られたくないと…白騎士になるんじゃ、権力とコネを使っての」
「なるほど」
どんな世界でも、法律の裏をかくやつはいるって事か
「と言っても、そういう奴らはすぐ死ぬからな…なんとも言えんな」
現実はそんなには甘くないって事か
まぁ兎も角、白騎士は基本的には強いと
「…永久奴隷兵士もそうだけど奴隷に種類はあるんですか?」
「奴隷?奴隷はな…下級奴隷、中級奴隷、上級奴隷、特級奴隷と、冒険者のランク分けとほとんど一緒じゃな。と言っても奴隷は1度奴隷魔法がかけられたが最後、2度と戻れないからの…永久奴隷兵士以外、分けられておらんな」
「戻れないのですか?」
「そのくらい奴隷魔法は強い魔法なんじゃ…1度かけられたら解除することはできん…それに奴隷は、買ったものがどう扱っても良いということになっておるからの…そこまで分けられてはおらん」
「なるほど…奴隷は命令を無視したり違反することはできるんですか?」
「まぁ、出来ない事は無いな。時々おる」
「あ、そうなんですか」
なんだ、出来るのか
「その代わりにな、死ぬ」
「え?死ぬ?」
「契約魔法も奴隷魔法もな、魔法で縛っておるから出来ないはずなんじゃが…時々どうやってか故意で違反するものがおる、事故もあるがの。そういうやつは奴隷魔法によって頭の中が焼き切れて死ぬんじゃよ」
「事故でもですか?」
「ああ、そうじゃ…というよりも違反をしたら勝手に発動するようになっておるからの…わざとやったのか事故なのかは結局はわからんのじゃ」
「な、なるほど」
奴隷魔法か、融通が効かなそうだけど使えそうだな
「奴隷についてはこんなところじゃな…他に聞きたいことはあるか?」
「他…あ、リックたちは何の仕事をしていたんですか?」
「リックたちの仕事?…ああ年寄りを墓山に運んでいたんじゃ?」
「墓山?」
「墓はわかるかの?」
「ええ、死んだ人を祀る場所ですよね?」
「そうじゃ。しかしながら死体というのはだな、魔物にとっては格好の餌なんじゃ。それに死体自体が魔物になることもある」
「死体が?」
「そうじゃ、「アンデット」と呼ばれる腐った身体の『ゾンビ』、骨だけの『スケルトン』、霊体の『レイス』と言うのもおる。死体は魔物になりやすいんじゃ」
「…なるほど」
なら死体は放っておけば勝手に魔物になったのか?…DPに還元しなきゃよかった
「じゃから、墓というものは金がかかる。魔物にならないように魔法をかけたりとな…しかし、大半のやつはそんな金はない。だから教会が管理している山に死体を捨てに行くんじゃ」
言うなれば集団墓地か…無縁仏ってことになるのかな?
しかし教会か
「…あの爺さんは生きていましたが」
「…あの爺はな、少し前からボケてきていた。しかも腰を壊して寝たきり。その上、娘夫婦が妊娠したそうだ。金の入りようなのに働けない家族を養う余裕のない。そんな家は、教会に相談して許可が下りれば墓山に捨ていいんじゃ」
「なるほど」
つまりは日本で言う姥捨山か
「教会が管理する山は少しばかり町から離れておるし、死体や年寄りは重い。町の外には魔物もおる。じゃからギルドに依頼がくるんじゃ」
「そう言う事だったんですか…教会ってのは?」
「教会?教会はの…教会はとりあえず色々な事をしておるが、基本は人助けをする組織じゃな」
「人助け?」
「教会はな、まず、7つに分類されるんじゃ。この7つとは…7大魔法はわかるかの?」
「それは分かります」
火、水、風、草、土、光、闇に分類されている中心的な魔法のことだろ?
「それならば話が早い。その1つ1つには与えた神が存在するというのが教会の考え方でな、7つの教会が様々なことをしておる」
それ与えたの創造神1人なんですが
「様々な事とは?」
「そうじゃな…まず、教会では聖魔法や治癒魔法を扱っておる」
「聖魔法に治癒魔法?」
「聖魔法とはな、「アンデット」を倒すことができる唯一の魔法なんじゃ。教会は聖魔法を付与した武器や聖水などを売っておっての、冒険者が「アンデット」と戦う際は必ず必要になるんじゃ…墓に眠るものが魔物化しないように聖魔法をかけるのも教会の仕事じゃな」
「「アンデット」は聖魔法以外では倒せないんですか?」
「いや、そんなことはないんじゃが、1番簡単で1番確実なんじゃよ。聖魔法を使わず倒すとなると、細切れにする必要があるしレイスは霊体じゃからの。聖魔法以外では触れる事も出来ん、やはり聖魔法が1番じゃな」
聖魔法を使わないとそこまでしなくちゃならないのか…そしてレイスは触れられないと
「なるほど、治癒魔法とは?」
「治癒魔法はな、ポーションを使わずとも傷や怪我を治すことができる魔法じゃ」
「ポーションがなくてもですか?」
「そうじゃ。ポーションを使わずとも治すことが出来る。その分、金がかかるがな」
「お金が?」
「そうじゃ。教会はお布施と言っておっての、教会の連中が使う魔法は基本的に高いんじゃ。しかし、治癒魔法や聖魔法を扱うには教会で厳しい訓練を受ける必要があるんじゃ…」
「なるほど…訓練で」
どんな訓練をしているんだろう
「…お前さんは頭が良さそうじゃからな…ここからは独り言じゃ」
「ん?」
「実は聖魔法や治癒魔法はな、別に教会の訓練を受けなくとも教会の連中じゃなくとも使える奴は使えるんじゃ」
「…」
まぁそりゃあそうだよな…もしかして教会は聖魔法と治癒魔法を独占しているのか?
「教会は宗教じゃからの…治癒魔法や聖魔法が1番人の心に漬け込みやすいんじゃろうな…ほとんどの教会が信者しか面倒みないしの」
教会は聖魔法と治癒魔法を独占することで、教会の勢力を拡大しているのか…どこの世界も宗教ってのは面倒くさそうだ
「教会同士って仲悪いんですか?」
「仲は…悪いな、特に光神教がな」
「光神教?」
「光魔法を与えた光の神を称えている教会じゃ。聖魔法も治癒魔法も光魔法より生まれたからの…使うならお布施を寄越せと事あるごとに他の教会に言っておる」
「それは…」
色々と凄いなそれ
「最も広まっておるのも光神教じゃからな…力が違うんじゃろうな。この通りをもう少し奥に行けば、光神教の大きな教会があるぞ。それに、冒険者の大半も光神教の信者じゃしな」
ゼン爺はそう言いながら近くに居た冒険者を引っ張り、首飾りを取り出して見せてくる
無理矢理引っ張られた男の冒険者は嫌がりながらも大人しくしていた
見せて貰った首飾りは5角形をしており、中心に翼の生えた女性が刻まれている
「冒険者も光神教なんですか?」
「1番広まっておるからの…大怪我した時のことを考えて入っておるんじゃ。死にかけているのに信者じゃないから治せないなど言われないようにな」
そう言ってゼン爺は冒険者を離す。男の冒険者はペコリと挨拶すると何処かに行ってしまった
「信者じゃないと治してくれないんですか?」
「言ったじゃろ?教会は信者の面倒しか見ないと」
融通がきかないのか
「…この町には、他の教会のはないんですか?」
「あるぞ。皆、町の端っこの方で細々とやっておるわい」
「そんなんですか…」
言わば、宗教戦争みたいなものか…何かに使えるかな?
「ゼン爺も光神教なんですか?」
「いや、わしは違う。わしは緑神教じゃ」
ゼン爺はそう言って服の中から首飾りを取り出す
ゼン爺の首飾りには円形の中に巨大な木が刻まれていた
「緑神教?」
「草の魔法を与えた神を祀っておる教会じゃ。そこまで広まってはおらず力もそこまで無いが、エルフの大半が入っておる」
「ゼン爺はエルフだから緑神教に?今までの説明からしたら冒険者としては大変なのでは?」
「まぁエルフじゃからな…わしは草の精霊とも仲が良いし…それに光神教とは馬が合わん…」
ああ、確かに鑑定にも書いてあったな。草の精霊と仲が良いって
「光神教とは馬が合わない…ですか?」
「…………まぁ色々あるんじゃよ」
ゼン爺はそれ以上は教えてくれなかった
ゼン爺と光神教の間には何かあるのか?
聖魔法と治癒魔法は光魔法の派生です




