22話 ゼン爺とギルド
「いや!ごめんね、お嬢さん方!彼らは僕の客だ、申し訳なかった!ごめんね!」
リックに引きずられ3人組の女性から離される、その間も3人組の女性は俺達を睨んだままだ
「全く!何をしてるんだ!彼女たちは「復讐者」だぞ!顔の傷が見えないのか!?」
「復讐者?」
「そんなことも知らないのか?教会から来ている女の子達だよ」
「教会?」
「…何にも知らないんだな…まぁ色々と教えてあげるから…」
リックはどっと疲れた顔になる。教えてくれるのならありがたい
リックに連れられ、ゴロツキ達の中を進んでいく。リックという男は人気があるようで事あるごとにに絡まれていた
「ふぅ…やっとついた…座ってくれ」
リックに案内されたのは、奥の方にある席だった
言われた通り、2人並んで座る。テーブルは丸い形をしているため2人の顔がよく見える、このギルドにあるテーブルは全てが丸い形だ
金髪長身の給仕の女性がやってきて木のコップを並べ、水の魔法を注いでくれた。おお!まさに異世界!
…ミレイさん…美味しいものは何ですかって…まぁいいや
「それで、何が知りたいんだっけ?」
リックが聞いてくる
「そうだな…とりあえず…」
ーーー
ーー
ー
あれから30分は経ったかな?ハッキリ言ってリックは使えなかった
知識が基本的にふわっとしている。環境大臣って言葉を知っていても実際、環境大臣が何をしているかは知らないって感じだ
…それは俺も知らないな
ミレイさんは早々に気づいた様子でタップリご飯を食べた後、3つ目のアイスクリームを食べ始めた…そのアイス何個買ったの?
ちゃっかりリックに払わせているし
リックは今ここにはいない、どこかに行ってしまった
「いや〜ごめんね!どうも頼りなくて!お詫びに頼りになる人を連れてきたから!」
後ろからリックの声がするので振り返ると、ヨボヨボのお爺さんを連れて来ていた
「…その人は?」
「よくぞ聞くてくれた!この人は、うちのギルドの生き字引!生きる教え!ゼン爺だ!僕もこの人に貴族語を習ったんだ!」
「かっかっかっ、よろしくな若いの」
ゼン爺?が笑いながら挨拶してくる。爺さんは狡猾ジジイと言う感じでヨボヨボ、髪や髭がとにかく長く顔の大半が隠れている。身体全体が隠れる大きなローブを着ている上、腰も曲がっているので身長もよくわからない。手には大きな緑色の水晶がはまった杖を持っている…魔法使いかな?
鑑定
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名前:ゼン/男/748歳
種族:エルフ
スキル:草魔法Lv7、知識Lv6、記憶力Lv6、観察眼Lv5
称号:草の精霊の親友、生きる知識、なんでも屋、教育者、過去の英雄
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これはまた…強い人が現れたな
「かっかっかっ…お前さん、今、鑑定使っただろ」
ゼン爺が鋭い眼光を向けてくる、バレた!
「…………よくお分かりで」
「かっかっかっ、目を見ればわかるわい。目が合っとらんのにボーとこっちを見ている、そういう奴は大半が鑑定を使っているんじゃよ」
「…なるほど」
この爺さん
できる!!!
「かっかっかっ、鑑定を無断で使うのはマナー違反というのは知らんのか?」
ミレイさんが言ってたやつか
「知っていますとも…どうしたら許してもらえますか?」
「そうじゃな〜お主、金は?」
「金?…まぁありますけど…」
お金を払えってことかな?
「おーい!シィールナ!龍の肝酒を持って来ておくれ」
ゼン爺は給仕の女性に言う
「…お爺ちゃん、あれは駄目よ。強いお酒だしとにかく高いわよ?払えるの?」
「なーに、此奴の奢りじゃあ。心配すんな」
そう言ってゼン爺とリックは俺たちのいる席に座る、リックは今までのやり取りがよく分かっていない様でボケーとしている…こいつ、役に立ってないな
給仕の女性がこっちにくる
「…えっと、龍の肝酒は本当に高いんだけど払える?金貨20枚はするわよ?」
つまり200万か…クソ爺いめ
「え、ええ、払えます。お詫びですからお願いします」
「そうゆうことじゃ。持って来ておくれ」
「…分かったわ。でも飲み過ぎちゃダメよ?」
給仕の女性はそう言ってどこかに行ってしまった
「いや〜楽しみじゃのう」
「爺さんあんたな」
「いやいや、悪いのはお前さんじゃぞ?それにせめてもの礼じゃ、なんでも教えてやるわい」
くっ足元見やがって
「それで何を知りたいんじゃ?」
…こうなりゃヤケだ1から10まで全部、聞いてやる
「そうだな。とりあえずギルドってなんだ?」
「ん?ギルド?ギルドな〜…お前さんのみたいなのは、1から説明を聞きたがるからのぉ…お主、国連はわかるか?」
「国連?」
国連ってあの国連?
「国連とはな、国々の王たちが何年かに1度集まりいろいろ決める会議のことじゃ。その昔、ギルドは国連が管理していたのじゃ」
「国連がギルドを?」
「そうじゃ…そもそも、ギルドの始まりはたった1人の男じゃった。その男はな村で1番の実力者じゃった。村に襲いかかってくる魔物を1人で相手にできるほどの力を持っておった。その男は次第に他の村からも助けて欲しいと呼ばれるようになり、魔物を倒すとその礼にいろいろ貰うようになっていった」
「それがギルドの始まりですか」
「そうじゃ。次第に似たような者たちが現れ、そのものらは協力し強い魔物を倒すようになっていった。『龍』種や『ドラゴン』と呼ばれる大型の魔物まで倒すほどにな」
龍やドラゴンなんて魔物までいたのか…知らなかった。やっぱりロマンだよなドラゴンは
後でリストを見てみようっと
「しかし、ここで問題が起きた。国に目を連れられたのじゃ…まぁ国としても軍の力を持って倒せなかった化け物を数十人で倒してしまったのだから焦ったのだろう」
国が干渉してきたのか
「といっても男達にとってそれは悪い話ではなかった。魔物を倒すのが基本だったからの、身分も証明できるし報酬の金額も違う。男達は喜んで国に取り入った」
「なるほど」
「しかし、今まで誰にも倒せなかった化け物を倒してしまった連中を1つの国が管理するのはどうなんだと、他国の王たちが次々に言い始めた」
「ゼン爺、なんで他国の王たちが文句を言ってんだ?」
リックが聞いてくる。突然入ってきたなこいつ。何か飯食ってるし…ミレイさんも何でご飯食べてるの?さっき食べてなかった?
「ふむ、簡単な話じゃ。戦争になった時、勝てる見込みがなくなるからの、他国は焦ったんじゃな。結果的に言えば男達のことは国連が管理する事になり、実力でランク分けされ、冒険者と呼ばれるようになった」
「ランク分け?」
「そうじゃ。大きく3つに分けられ、下級、中級、上級とな。そしてその1つ1つが下級、中級、上級に分けられておる」
なるほど、つまり、下級の上中下、中級の上中下、上級の上中下の9段階に分けられているのか
「他にも特級と呼ばれる特別な階級もあるがこれを貰えるやつは滅多におらんのでな、これは気にせんでよい」
「特級ですか…」
「ゼン爺、特級ってどんくらい強い?」
「そうじゃな〜、上級の上より強いからの〜過去にいた奴はたった1人で5体のドラゴンを葬ったと聞いたが本当かどうかは定かではないのう」
ふむ…とりあえず特級はとんでもなく強い階級と…覚えておこう
「まぁともかく、ギルドは国連が管理することになった…しかしこれは地獄の始まりじゃった」
「地獄?」
「国連が決めた事はな、依頼はギルドが管理する。冒険者はギルドの命令に逆らえない。冒険者の登録制。登録には銀貨1枚が必要。ギルド員は他国に好き勝手に行き来できるというものじゃった」
「…えっと?」
それのどこか地獄?
「…これにより数多くの問題が生まれたんじゃよ」
「問題とは?」
「例えばな、ギルドの職員で危険な仕事は嫌いな冒険者に命令でやらせる。死んでもいいとな。そう奴が現れたんじゃ。その上、金のいい楽な仕事は知り合いやお気に入りのやつに回したりする」
あれ?なんだか地球の日本でよくある奴じゃないそれ?
「冒険者の登録制もそうじゃ、言わば金さえあれば誰でも冒険者になれる。国連は冒険者の実力を質ではなく数で補ったんじゃが…こいつも酷かった。犯罪者紛いや犯罪者の多くが冒険者になってしまいやりたい放題じゃった」
「やりたい放題って?」
「依頼人を殺して金だけ奪ったり、仕事をしとらんのに依頼は完了したと言い張ったり、冒険者を夢見てなった子供を騙して奴隷として売り捌いたりとな本当に酷かった」
「そんなに酷かったんですか?」
「そうじゃ。しかも危なくなれば他国に逃げればいいとな。完成に無法地帯じゃったよ」
ゼン爺は悲しそうな顔になる
「しかし、ある国で事件が起きた。ダンジョンと呼ばれる魔物を生み出す迷宮は昔からあったんじゃが、その国で今まで見たことの無い様な化け物がダンジョンから何体も出てきたんじゃ」
ある国のダンジョン?などと考えているとミレイさんが耳打ちをしてきて
「…例の人間のダンジョンマスターが作ったダンジョンです」
あーはいはい。いたねーそんなの。敵国を滅したら仕事放棄したやつだっけ?
「あちこちから強い冒険者が集まり魔物の討伐に向かったんじゃが…誰1人戻ってこなかった」
「…そんな事件が」
人間のダンジョンマスターもその時はちゃんと働いていたのか
「その後命令でな、世界中から冒険者が集められたんじゃが誰1人としてその命令を聞くものはいなかった…」
「誰1人ですか…」
まぁ自分よりも強い冒険者が行って帰ってこなかったのに出来るか!って事なのかな?
「わしも当時は冒険者として活躍しておったがの…逃げたわ、みんなが逃げた…国連はな、逃げた冒険者を犯罪者とみなしたが冒険者達の判断は早かった。犯罪者になったのなら好き勝手にやると」
「…それはまた」
「本当に酷かった。ただでさえ酷かったのにあちこちで皆が皆やりたい放題にやり始めたからの…最終的に国連は冒険者を廃止してしまった」
「そんなことが」
その時代、創造神としては喜ばしい時代だったんじゃないかな?
「しかし、悲しいことだけでない。それから100年後にな、ある男がギルドを立ち上げた」
「冒険者は廃止になったのでは?」
「冒険者はな、しかしギルド自体は残っておった。しかもこのギルドは今までのギルドとは違っていた」
「何が違ったんですか?」
「まず、ギルドを1つの商会にしたんじゃ」
「商会に?」
「商会にする事で誰でもなれることを禁じた。それによりギルド員同士の壁をなくしたんじゃ。ギルド員は仲間だ、家族だと教えてな」
「ん?」
どう言う事だ?
「今までギルドは、数じゃった。1人死んでも新しく1人入れればいい、こういう考えじゃった。しかし身内ならば家族ならば違う。気遣うし教え合う、仲間じゃからな。誰しも知り合いが死ぬのは嫌じゃろ?そういう考えを1つのギルドでやったんじゃ」
「ああ、なるほど」
今までは誰かが死んでも興味もないし知りもしなかった。でも商会にすることで気にするようになったのか…考えたな
「そうすることにより依頼もどんどん達成していくようになってな、それを聞いた者達も似たようなギルドを沢山立ち上げたのじゃ。今では多くのギルドがある。魔法使いしか入ることのできない魔導士ギルド、商人しか入れない商人ギルドとかの」
と言う事は、貴族ギルドってのはそうやって作った貴族しか入れないギルドってことか
「そのおかげで犯罪も減り、再び国連は冒険者を認めたんじゃ…これがギルドかの」
「…ギルドとはそういうものだったんですか」
「そうじゃギルド員は家族じゃからの。気づいたことは教え合うし知っていることは教える。そうやって冒険者の死亡率を下げたんじゃ…わしもここでは貴族語や冒険者の注意事項を若い連中に教えとる」
だからリックや大剣を背負った男もある程度の礼儀作法を知っていたのか、お辞儀とかさ
「…戦闘ギルドというのは?」
「ん?ああ、そのギルドの専門のことじゃ」
「専門?」
「多くのギルドができたからの〜、今まではギルドは魔物を討伐するものじゃったが商人ギルドに魔物の討伐を依頼しても意味がない。じゃからギルドは1つ1つが専門を決めておる…うちのギルドは魔物や犯罪者の討伐、護衛や物を運んだりといろいろやっておるが基本は戦闘じゃ、だから戦闘ギルドと名乗っておる」
「…なるほど」
ギルドにも色々あるのか
「おじいちゃ〜ん、手伝って〜」
「おっ!きたきた!」
ゼン爺が反応したので振り返ると、給仕の女性がワンボックスカーほどもある大きな酒樽を運んでいた…デカっ!
「は〜どっこいしょっ!」
ドン!!!!!
女性が酒樽を置くと大きな振動が建物全体に響く…一体何kgあるんだ?
「はあ〜重かった〜。ご注文の品の龍の肝酒よ。言っとくけどわざと大きいのを持ってきたんじゃなくて、龍の肝は大きいからこのサイズからしかないの」
なるほど。だから200万もするのか
「今日はこやつの奢りじゃ!お前らたんと飲めい!!!」
ゼン爺が大声で言うと、大歓迎が起こる
…こりゃ参ったな




