逆鱗
人には触れてほしくないことだってあるだろう。
それは魔物も同じである。
しかし何故違いが生まれてしまうのか。
それは誰にもわからない。そして解明もすることも無い。
何故ならこの世に存在全てに【人と同じ】という超常現象は起きないのだから。
――――――――――――王都フィヴァル/城内/シオンの部屋
「そろそろお話になっても・・・」
「い、嫌です・・・」
汚れた軽装備から着替えお姫様のようなドレスを着せられて椅子に座るシオン。そしてその対面に座る大臣や魔女。そしてハジメ。
ラーズグリーズのことをずっと言わないためまさか誘惑魔法や洗脳魔法にかかっているのではないかと最初は疑われたがそんなことはなかった。
しかしいくらなんでも口が堅過ぎだろう。
あんなに近くにいてなおかつあの魔物にあんなに大事にされていたのだからきっとなにか秘密があったに違いない。
報告に挙がっただけでもそんな感じだが本人に聞くのが一番だと思ったのだろう。
「あの魔物について本当に知らないんだな?」
「はい・・・」
頷くシオン。
今日はこれ以上聞いても進展はないだろうと思った人々はシオンの部屋から去る。
しかしハジメだけはその部屋に残る。
「ハジメくん・・・」
「シオン・・本当にあの魔物に何もされていないんだな?」
「う、うん・・・」
軽く目を逸らすシオンをハジメは抱きしめそのまま深く深く接吻をした。
プルプル震えるシオンの身体に優しく手を回すハジメ。そして二人はそのまま二人だけの時間を過ごしていった。
―――――――――――王都フィヴァル/ラーズグリーズ専用地下牢
どれぐらい時間が経ったのだろうか。
人間はあらゆる手段を用いて僕から情報を取ろうとしていた。
次はどこを攻めるのか。次はどこを守るのか。
しかしそんなことは知らない。要塞都市を陥落させろとしか言われてない。
「・・・・これ以上何を吐き出させようというんだ・・・」
「ふん。最後はあのシオン殿と何をしていたのかを話して貰おうか。」
「・・・・あの子は関係ない・・・人質として使えるかと思っただけだ・・・」
その瞬間計器が鳴る。嘘だとばれた瞬間高圧の電流が僕の身体に襲いかかる。
暑がらず剣での攻撃も痛がらない僕に対しての最良の手段がこれだったに違いない。
確かにこの攻撃は辛い。意識を失えば無理やり起こされる。
「・・・・・す・・」
「す?もっとはっきり言え!」
「ぐぅぅっ!!・・・・だ、だから・・・我は・・あの小さき勇者が・・・」
―――――――好きなのだ・・・・
そして何日か経過。その間に魔族・人間にラーズグリーズが捕えられたと情報が広まった。
魔族は落胆し悲しんだ。人間は喜び捕えた部隊を英雄のように讃えた。
そして月が見えない暗く冷たい夜を迎えた。
「・・・・・・」
「ピー助・・・」
ハジメに連れてこられてシオンは初めてラーズグリーズを見る。
ぼろぼろになった羽根。無造作に放置されている傷。そして何も口にしていないような身体。
拷問という日々をここまで耐えてこれたのは自分への愛だと気が付くシオン。
「ハジメくん・・・彼は悪い人じゃないよっ。だから・・・ここから出してあげて・・・」
「・・・残念だけど断るよ。さて、シオン。いいかな?」
そう言うとシオンの反応を確かめもせずに僕の前で濃厚な接吻をし始めた。
最初は嫌がるシオンも次第に大人しくなっていきプルプル震えるだけになった。
そしてそのまま二人は僕の目の前で獣のようにお互いの身体を貪り始める。
こっちが牢から出れないことをいいことに。
「目を背けるな。こっちをずっと見るんだ。哀れな鳥人。あの森で出会った時の気品はどこに行ったのやら。」
「ピっ・・・助っ・・助けっ・・」
嫌がるが体格のせいで逃れることが出来ない。そしてそのままハジメはシオンに・・・・・・
自分の中で何かがハジけた。多分大変なことをしたんだろう。
おびえるシオンの瞳。生暖かい感触。血まみれの手と体。
次に何をしたのか覚えてない。ただわかっているのは。我は激怒したのだろう。このゴミに対して。そして食らいつくした後シオンも食った。飢えた獣の如く。
もちろん普通なら騒ぎを聞きつけて衛兵などが来るだろう。
しかし今の時間は深夜だ。静かに寝ているだろう。
そんな時間に我は自分の怒りとこれまで受けてきた仕打ちへの復讐を兼ね暴れた。
メイドを食らい王女を食らい王妃を食らい。
衛兵を殺し執事を殺しペットを殺し。
壁を壊し家を壊し城門を壊し。
気が付き我に返った時居たのは名も無き孤島だった。
何もない。あるのは海のさざめきだけだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
ふとシオンを抱えているのに気が付いた。気絶しているが我のせいで裸だ。
せめてもの寒さ凌ぎと言ってはおかしいかもしれぬが我の身体に抱き寄せる。
そしてわずかに生えていた木々を倒し炎でたき火をする。
翌朝になれば何かわかるだろう。
それまで眠るとしよう。
この時、シオンの身体は着実に変化していた。
魔物との恋愛感情。そして人間を支援しない様。
いくら勇者と言えどもそれらの行為を許すほど神は寛大ではなかった。
翌朝。シオンは勇者の能力を失って普通の女の子になっていた。
一応回復魔法は使えるがどうやら上位の魔法などは使えなくなっていたそうだ。
「ど、どうしよう。」
「・・・・・関係ない。これから使えるようになればよい。」
「・・それもそうだね。」
何もない孤島で二人きり。自然と笑みがこぼれてしまう。我は確かに昨夜大暴れしたのだがそれを差し置いてもいまシオンと二人でいることができるのが嬉しい。
嬉しいのだ。
守る者。守られる者。
戦う者。戦わされる者。
全ては立場によって変わる。
しかし戦争に善悪があるのか。
それは誰にもわからない。
誰もが加害者になり、被害者なのだから。




