油断
―――――――――――上空
「ピー助凄い!」
何を狂ったのか僕について行くと言ったシオン。逃げられるのも癪だしそれに片手で優しく抱きながら平原へ飛ぶ。
やわらかい肉質。そしてずっと撫でられる首
「飽きないのか?我の首を撫でつづけるなんて。そんなに好きだったのか?」
「ピー助は首を撫でられると目を細めるんだ。それが可愛くて・・・」
「くだらぬ。」
そのままさらに上空へ上昇する。
あまり上空に昇るとシオンの身体が気圧の変化に耐えられないだろう。それにこの大きさだ。対空戦の準備をされていたら堪らない。影などでばれてもうっとうしいだけだ。
「ピー助。ジャーキー食べる?」
「・・・・・・」
「なんで持ってるんだ?って顔だねそれ。」
「いや。だいぶ話し方が変わったな。と、気のせいか。」
そういいながらすぐ平原を目視する。たしかに大軍勢だ。
しかし壊滅させることはできる。簡単だ。パッと見でも対空戦の準備よりやはり攻城に向いている編成だ。
それならば簡単だ。適当に同士討ちをさせればいい。
「ピー助ー。ピー助はなんで戦っているの?」
「うるさい。いい加減にしろ。大体シオンも勇者であろう。」
「・・・そうだけど私はみんなみたいに戦えないし・・・強くないから・・・」
すこしシュン・・と項垂れるシオン。やはり回復魔法とその周辺の派生魔法が得意だが攻撃魔法やただの攻撃が出来ないことを気にしていたか。
「・・・言っておくが我の一番大嫌いな魔法は回復魔法だ。何度も何度も回復して戦闘を継続させる様はまさにしつこく付きまとう蠅だ。」
「そ、そうなの?」
「だいだい飽和攻撃をしているのに回復魔法の存在のために防御側が有利になり過ぎているのだ。だから我は嫌いだ。ただそれだけである。」
そう言いながら静かに軍隊の索敵範囲に入る。
―――――――――――――平原
「上空に敵です!!」
その声と共に一気に戦闘態勢を整えようと慌ただしく軍隊が動く。
「連弩!早くしろ!撃ち落とせ!!」
「大砲は下がらせろ!火薬も引火させるな!」
叫び声と共にどんどん準備が整い始める。
「む。気が付かれたか。やはりこの高さでここは不味かったか。」
「ピ、ピー助っ!」
「気が散る。シオンは黙って我の支援をしてればよい。」
準備が整う前に叩く。起訴中の基礎である。
もちろん射程が長い魔法が詠唱され撃ちだされる。
炎、風、氷・・・・あらゆる魔法が僕めがけて襲いかかる。
「【忘却の風】」
魔法は確かに相殺できない。
だが当たらなければいい。所詮は止まっている一点を攻撃するような代物だ。動き続ければ当たらない。
それに詠唱している暇など戦闘中にあるわけがない。
「あ、当たらない!」
「連弩撃て!!」
そのまま大量の矢が上空へ射出される。何本か体に突き刺さるが関係ない。しかし風圧で矢が折れる。
負傷したと思う個所もない。しかし何故だろう。回避行動をとるたびに視界の端に血らしき赤い何かが飛び散っている。
「ピー助っ。怪我してるっ!止まってよっ!」
「・・・・・戦場で止まることは死を意味する。そんなことも習わなかったのか。」
「でもっ!この怪我じゃ!」
痛みはない。それさえわかっていれば戦闘が終わるまで戦い続ければいい。回復などはその時にやればいい。
治療など戦闘時において1人でやることではない。支援やどうしてもの時のみだ。
「あぁんっ!ピー助落ち着いてって!」
「暴れるな。落ちて大けがをするぞ。」
混乱する眼下の軍を見ながら旋回する。一撃離脱こそ空中を舞う者の神髄。
無数の矢に魔法。荒れ狂う風と羽根。大地が屍と血で埋め尽くされていく。
ふと旋回時自分の身体を見る。
刺さっている無数の矢。爆発する炎魔法で焦げている羽根。裂けている身体。
「ピ―助っ・・・お願い・・・止まって・・・」
「・・・・・・」
泣きながら僕の身体を叩くシオン。そして一瞬意識がなくなる。
流石に血を失いすぎたか。だがここで落ちる訳にはいかない。
しかし意識がなくなるほど傷を負ってしまった僕は暫くして。
墜落した。
♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯
「ピー助っ!ピー助っ!」
遠のく意識の中シオンの声が聞こえてくる。
あぁ・・・無茶しすぎたな・・・
「あ、あなたはシオン殿!魔物に捕えられていたと聞いていましたがご無事でしたか!」
「やめてっ!ピー助を殺さないでっ!」
「いえっ。いくら勇者のシオン殿のお頼みでも・・・」
何を言っているのかわからない。しかし僕をピー助と言ったことははっきり聞こえた。
約束をやぶって。これはお仕置きが必要だな。
「隊長どの!魔物の軍勢が補給路に襲撃!このままではわが軍は包囲されます!」
「くっ!ここで全滅したら魔物に王都を渡すことになるぞ!これよりわが軍は撤退を開始する!」
「この大型の魔物はどうしましょうか・・・・」
「シオン殿を抱えて飛んでいた。つまり魔物の中では上位に入るほど強大な力を持っているに違いない。辛くはなるが王都まで運搬するぞ。まずは退路の確保だ!総員奮励努力せよ!」
♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯
「ピー助・・・ごめんね・・・」
「・・・・・・・」
寡黙な彼は私が何度も静止してくれと頼んだが全く止まってくれなかった。
私の未熟さが露呈した瞬間でもあった。
揺れる視界。襲いかかる熱風。耳をつんざく雷鳴。
彼は私を守りながら軍団を蹴散らしていた。
私がしっかり戦闘中でも回復魔法を唱えることが出来たならこんなことにはならなかったはずなのに。
私は騎士団の方々に護衛されながら王都に戻ることを余儀なくされた。
でも私が泣きながらお願いしたからなのかピー助も一緒に王都に連れて行くことになった。
・・・・・・ピー助。処刑されちゃうのかな。
騎士団の人達の目を盗みながら気が付かれない程度に回復させる。
一応は騎士団の方々を回復させるためでもあるんだけどね。
ピー助。生きて。
ラーズグリーズは強大な敵だ。
奴は全てを超越している。
しかし倒せない相手ではない。
彼は防御力が0だからな。
一発でも攻撃が当たればあるいは・・・・




