約束
大事な物。大切な者。
人には人の記憶がある。
今まで歩いてきた道。今歩いている時間。
それは皆等しく分け与えられる。
振り返ってはいけない。そこは美しく深い闇だから
―――――――――――要塞都市テールドフェル地下牢
ワイバーンの偵察の結果平原に2万近い軍勢が集まってるとのこと。
及び森林の中には少数だがすでに斥候がいたこと。
そして軍隊は王都から来ているということ。
「以上が俺達が偵察した結果だ。」
「よく大まかな人数がわかったな。」
「奴ら兵を区域を分けるように分散させてたからわかりやすかっただけっす。大体の数をハーピィに言って計算してもらって。・・・・・・俺ら頭で考えるの苦手っすから。」
「なるほどな。しかし約2万か。よくそこまで兵を引っ張ってきたな。尊敬に値してもいいと思うぞ。貴様らも戦闘は数だということもしっかり頭に入れておくように。」
そう言いながら息が荒くなってる薄着のシオンを優しく撫でる。
先ほどまで魔王が交渉中に都市の地下牢で夫婦の営みを存分にしてたからだ。
その疲れも少し残っているが人間軍の数が多すぎる。
場所がわかっているなら奇襲をしかけるのが良い手だろう。
「・・・場所に間違いはないな」
「うすっ。間違いはないっす。そこあたりはばっちりっすから。」
「ならばよし。暫くはこの都市で休憩してていいだろう。」
「了解っす。・・・・しかしラーズグリーズ殿。一つお聞き―・・・聞きたいことがあるっす。」
報告に来たワイバーン数匹のうち1匹が僕に問いかける。
「・・・こんな狭い地下牢で何していたんっすか?その子も息が上がってるし。・・・・なんか蒸れてるし・・」
「・・・そんなことを聞くでない。殺すぞ。」
ギロリと睨む。確かに地下牢はさすがにダメだったか。次からは場所を考えなければ。
そしてうっかりしていた。魔法を解かねば。
周りに自分とシオン以外いないことを確認した後、魔法を解く。
「ふ、ふえっ・・・」
「目が覚めたか。」
目の前には人間を苦しめそしてこの都市を攻めた魔物がいる。
しかも周りにいた3人も居なくなってる。
自分の身体も好き勝手に蹂躙され尽くした後だとはっきりわかる。
「あ・・・あぁうぅ・・・」
口をパクパクさせるシオン。
洗脳魔法というのを理解できないのかなにも質問されずに時間が過ぎる。
「・・・シオン。君の声を聞かせてくれないか?」
顔を近寄せ見つめると急に視界が歪み鋭い音が地下牢に響く。
「・・・・・あ、えと・・」
シオンが半泣きになりながらまた固まる。
そして僕に体を預ける。
声を殺して泣くのがわかる。泣かれている間自分の身体にその小さい拳が何度も何度も叩かれている気がした。
―――――――――――――王都フィヴァル
「なるほど。それが魔王軍の勇者か」
「はい。俺は無視されて要塞都市が陥落されるのが見えたので王都まで戻ってきたわけです。」
「たしか持っているスキルは【未来視】だったはずであろう。なぜ見えなかったのだ。」
王都ではハジメと王様が会話している。ラーズグリーズのことを。陥落した要塞都市のことを。
ハジメはラーズグリーズのことを知っていた。だがあのような接触になるとは見えなかった。
そしてまさかあのような化け物が異世界からの勇者だったなんて
「勇者ですら勝てぬ相手に・・・しかし勝たねば・・・」
「お、王様?何を考えているんですか?」
「あー・・・なんでもない。とにかく他の勇者との合流を優先しよう。他の勇者はどこに飛ばされたかわかるかね?」
王様の声はすがるような声を上げつつハジメを見る。ハジメは頷き安心するように言う。
「大丈夫。他の2人は合流できます。」
―――――――――――――――――要塞都市テールドフェル地下牢
「シオン。落ち着いたか?」
「は、はい・・・」
泣きやんだシオンを撫でつつゆっくりと深呼吸をする。
結果的にシオンは僕について行くことになった。
理由としては単純に【怪我しやすい】からである。
「・・・・しかしなんでそんなくだらない理由で我の伴侶になることを決めたのだ?まだ魔法が解けてないのか」
「・・・ふふ。やっぱり。真面目だけど悪役になりきれてないですね。」
にっこりと笑うシオン。少し顔をしかめる僕。
「私は。この世界に来る前鷲を救えなかったんです。私の管理が甘いばっかりに。なので・・・」
「・・・・我と小鳥を同じに見ているというわけか。舐められたものだな。」
「もぉ!大きい小さいなんて関係ないですよ!・・・あなたはその鷲に似ているんです。だから・・・もう失いたくない。」
私情で仲間を裏切るのか。そう思ったがよく考えたら僕も私情で魔王を殺すかもしれないんだ。
今はまだ。なにもわからないが。
そもそも未来なんて予想できるわけがない。たとえ勇者がそのような【スキル】を持ってたとしてもだ。
それに未来がわかるならばとっくに僕の召喚や姿。能力などの情報が出回るはずだ。
「ねぇピー助。私のこと好き?」
「・・・・・・は?」
唐突にピー助と呼ばれた。可愛い名前だがこんな大型の。しかもずっしりと堅牢な筋肉ムキムキの僕に言うことだろうか。
「なぜ我がピー助などというとんでもない名前を言われなければいけないのだ。」
「・・・・なんでだろね?似ているです。ピー助に。」
「まさか混乱魔法を間違って唱えてしまったか?言葉もどこかおかしい気がしてきたぞ」
少し罪悪感に包まれながらもシオンを見る。いたって普通の女子である。
「混乱なんてしてないよ。でも、伴侶になるんならそう言った特別な名前あってもいいんじゃないかなーって。だから私の世話していた鷲の名前から取ったんだ。」
「・・・・・・・・まぁいいだろう。シオンよ。だが大衆の前でその名を言うな。」
小指を立てて近づける。よくある【ゆびきりげんまん】である。
もちろんシオンは軽く赤くなりながらやってくれた。
「こどもじゃないんだけどなぁ」
「我から見ればシオンにしろあの勇者共にしろ魔王にしろ皆等しく子供だ。もちろん我も・・・」
「そういえばピー助の【スキル】ってなーに?」
「知らん。【スキル】とやらを見る術をそもそも知らぬ。」
そういうとシオンが得意げな顔になり僕の目の前に立つ。
そしてドヤ顔で「つよさ表示!」という。
「・・・・シオンよ。まさかとは思うがそんなくだらないことで我を鑑定する気か。」
「あ、あれー?私達の時は出来たのになぁ。」
「ふん。我はそんな馬鹿馬鹿しい行動では推量れぬということだ」
そういいながらシオンに優しく服を着せる。
そしてまた抱きしめ地下牢を後にする。
「よろしくね。ピー助」
「よいから首を撫でるのをやめろ。」
要塞都市の無条件降伏が決まりそして平原の軍が動き始めたと思われるとき。
僕にまた新しい命令が下った。
「ラーズグリーズよ。平原に構えている軍を叩け。陽動でもいい。その間我の近衛兵が補給路を断つ。」
「・・・承知。我が主君よ。」
「それと炎王殿が我の要求を達成したのちに宮殿へ来いと。」
炎王。
ドラゴン族の頂点に位置する龍人。
魔王城周辺の火山の山脈からその周辺の森林までを領土にしている四大貴族の一貴族だ。
いったい何のようなんだ。
ラーズグリーズ
種族 ガルーダ
性別 ♂
レベル 1267650600228229401496703205376
攻撃力 65535
防御力 0
体力 9999
魔力 9999
素早さ 65535
固有スキル 【Präsenz schütteln Razgriz】・・・自分の存在を確立しない。認識されてない場合存在そのものがぼやける。主に思い出されない。
【dark ghost】・・・半径5m以内の場所ならどこへでもワープできる。ただし戦闘区域であることと飛行状態であること
【軋轢と調和】・・・戦争中の種族との印象度の減少が早くなる/関係を結んだ人物との印象度を300に固定する
【地には平和を】・・・地上に仇なす全てから受けるダメージが0になる
【神殺し】・・・種族【神】【天使】【悪魔】【神獣】【聖獣】へ与えるダメージが増える。
【好色家】・・・そのまま/戦闘に参加している異性からの印象度が高ければ高いほどステータスが上昇する
【ラーズグリーズ】・・・計画を壊し戦争を終わらせる者。その存在はおとぎ話に。そして悪魔から英雄へ。
スキル 【アルマゲドン・オーバーチュア】・・・無数の爆発する光線弾が目標及びその周辺に高速で撃つ。着弾した周辺はクレバスのような裂け目が出来る。
【忘却の風】・・・突風を起こして全てを壊す。力の加減を間違えれば巨大ハリケーンが出来上がる。
【全魔法Ⅹ】・・・すべての魔法を無詠唱で唱えることが出来る。
【ミュージックボックス】・・・深く記憶に残っている曲を歌うことが出来る。
【地には平和を】・・・何かが起こる。