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英雄の旅路  作者: トンヌラ
23/30

空戦

――――――――――エリアアルカディア/国境沿い


風がたまに吹き荒れる山脈の頂上から心配そうに魔王城を見ているラミア族の女性。

彼女は風月の嫁さんにしてラミア族の長であるフノス=ミッドガルドである。

宝石のように美しい瞳に逞しい蛇の身体。


「ううぅ。風月が穏便な交渉をするわけないのじゃ。ハーピーとの罵りあいで終わればいいのじゃが・・・」


風月が喧嘩を売るとは思えないがハーピーの方から喧嘩を売る可能性は大いに考えられる。

その結果また全面戦争などやってられない。というか内乱時に我らラミア族がどちらに所属するかの問題もあったため絶対に戦争など起きてほしくない。


「うがー!全く。ハーピーも風月も色々と折れなさすぎじゃ!やはりここは妾が・・・・」


悩みつつも何もできない自分の力の限界を感じつつ家に戻ろうと思い山脈から降りる準備をしていたら何かが降ってくる気配がした。

ちらりと気配の方向を見たらハーピーがまるで木の葉のように墜落してくるではないか。


「おぉ・・?あれはちと不味いの。あのままじゃ・・・」


落下予測地点にスルスルと這っていく。

ハーピーは軽さなどを追及した故に怪我などしたらその治癒に時間がかかる。

そのため今になってやっとハーピーの主力が戦闘に復帰できるようになったことを知り少し驚いている。


「そんなことを考えてはおっては間に合わぬか。たまには機敏に動いてみるかの。」


にょろにょろとゆっくり這うのではなく一旦体の向きなどを整えてから落下してくる小娘を見据える。

そして一気にその小娘に飛びついた。



######


「これ。小娘。・・・・起きぬか。」



目を回しながら気を失っているハーピーの小娘を軽くぺしぺし叩きながら色々観察してみる。

なるほど。きっとエネルギー切れというわけか。

ぐうぐうと情けなく腹を鳴らす様は自然と笑みが微笑みがこぼれる。


「うーむ。近くになにかあったかの。そもそも・・・・この小娘は木の実を喰うのかのぅ?」


どっちにしろこんなところにいるよりかは街に言った方がましだろう。

そう考え妾はこのハーピーの小娘を抱えながら下山した。




――――――――――――――魔王城


「だーかーらー!!!あんたらバカのせいでこっちはどれだけ被害が出たと思ってるの!」

「知ったことじゃねぇ!!ちまちまご丁寧に敗残兵に時間かける暇があったらさっさと前線押し上げろってんだよ!」


円卓を囲み未だに風月とサマが言い争う。

ケンタウロスとしては敵よりも司令部を速攻で制圧させるような進撃を主に作戦を立てている。対してハーピーは隙間ない監視の元で後ろから生き残りの弾が飛んでこないように徹底的に敵を倒す。慎重な前進を心掛けている。

つまりどうしても進軍速度に差が出てしまうのだ。


「そもそもあんな戦術取らなくていいだろう!お前らハーピーは俺達よりも行動の幅があるんだからよ。」

「あんたらバカみたいにカチカチに固くないんでね!!こっちは新兵をなるべく失いたくないの!」

「なんだとー!ひよっこの育成が出来てないのが問題なんじゃないか!それはそっちの責任だろ!」



お互い重箱の隅をつつくような口論が続く。

そんな中ダイアナ女皇がこんなことを言ってしまった。



「結構前から思っていたんだけどさー。お互いの戦術が一番だと思うなら交換すればいいじゃない。ケンタウロス達がハーピーの戦術をやってハーピーがケンタウロスの戦術を。それでだめならお互い文句の言い合いをすればいいんじゃないの?」


この発言がその争いの終止符になった。




―――――――――クリティ山脈/国境沿い/上空



「大丈夫ー?」

「無理ー!」

「なら大丈夫かー」



ソルと最近やっと戦えるようになったひよっこのハーピーが紅白戦を行っている。

大型種のソルに束で襲いかかっては軽くいなされてしまう。

その様子を見ては苦笑いをするキティート。


「ほーら。もっと格闘戦強くなりなさいよ。あまりもたついてると落とすぞー!」


空中戦闘機動の種類は多いがひよっこ達はまだそれが出来るわけがない。

そもそも親の行動などで飛び方を学んでいるハーピーにとってみれば独学は当たり前。

更に言ってしまえば親の質がそのまま子供の能力に直結する。


そうやって今まで強い者が強い弱い者は弱いという状況が続いていた。

しかしそれでは近い未来種族が自滅するかのように滅んでしまうと考えた精鋭のハーピー達が成人になり親の元から巣立ったハーピーを再教育するという名目で紅白戦を取り入れたのだ。


♯♯♯♯♯♯♯


「ほーれほーれ♪」

「ソルー。少しは手加減してあげないさい。もう戦えない子だっているのよー?」



キティートが注意する。それに生返事をするソル。

地上ではソルに全く歯が立たず泣いているひよっこ達が他のハーピーに慰められていたり戦闘には参加せず観察して学んでいたり様々な反応をしている。




「キティート。あと何人?」

「・・・・もう全滅してるんだけど。」


あれー?と首を傾げにへっと悪びれず微笑むソルに呆れたように溜息を吐き近寄るキティート。

近寄ればその体格差に驚くハーピーもいればソルと同期のハーピーは驚いている反応に苦笑していたりする。



「えー。他の子はいないの?ちょっとネクサスとワルキューレー。上がってきてよー。不完全燃焼ー!」


ソルが地上に向かって叫び精鋭部隊である2部隊との紅白戦を”所望”する。

地上からは「ふざけんなー!」「調子のるなー!」「誰が負け戦するかー!」など怒号が飛んでくるが暫くすれば黒い羽毛で統一されたハーピー達と白い羽毛で統一されたハーピー達が上空に上がってくる。


「ネクサスとワルキューレと・・・・けっこう生き残ってるよねー。私の同い年。」

「部隊編成だっけ。内乱の時ケンタウロスの見よう見まねでやってみたけど凄かったもんね。」

「今まで各個撃破されていたのが無くなったからねぇ。」


編隊を組みソルの近くに飛んでくる2部隊を見つつソルが微笑む。

傭兵稼業が主なハーピーはなんといってもその生存率の低さが長年の種族問題だった。

すぐに撃墜されその結果戦闘できない体になるか死亡するため多産多死の状況が続いていた。

その状況を少し良くしたのが編隊飛行である。各ハーピーが敵の位置や大体の武装を他のハーピーに知らせるため被弾の確率が少なくなったのだ。



「・・・戦場って生き物の命を消費して新しい戦法や新しい技術が開発されているみたいでなんか嫌になるのよね。」



そう呟くとキティートを2部隊に加えて単騎で相手し始めるソル。

精鋭の戦いはまさに美しく情け無用の空戦。隙を見せたハーピーが喰われる。

上空はあっという間に本場の戦場のような轟音に包まれる。

放たれる数々の魔法弾。撃墜されたらしく地上に戻ってくるハーピー。ソルも被弾するが平気そうに反撃をする。

しばらくすれば決着がつくだろう。

誰もがソルが勝つと思ったその時。


「ギャー!撃墜ー!」


ソルの悲鳴が響くと同時にソルが上空から降りてくる。

ひよっこ達は何が起きたのかわからなかった。少しソルとキティートのことについて知っているハーピーは呆れたような顔をしてソルと同い年のハーピーはげらげら笑う。


そう。キティートがソルに撃墜判定を喰らわせたのだ。



♯♯♯♯♯♯♯♯♯


「ちょっと卑怯よー!!ええっ!いつ後ろに回ったのよ!」

「しょっぱなからだよ。バーカ。」


キティートはソルの行動が手に取るようにわかっている。一番傍に居たハーピーなのだから当たり前だ。

後はソルが油断するところで特大の魔法弾を無誘導で当てればいいだけである。

無誘導の場合早期警戒を促すアラートが機能しないのである。


ソルは紅白戦の際毎回毎回同じ手で撃墜されている。

そのためある意味様式美と化している。調子に乗ったソルをキティートが窘める姿は母親と我儘な娘に見えてくるため長く戦闘地域の空を飛んでいるハーピーにとっては癒しの一部に入っている。


今回の紅白戦ではネクサスとワルキューレの被撃墜数に驚くひよっこが多かった。

それもそのはず。ハーピーは傭兵稼業が主というだけでありその速さを活かした物資の運搬業務を行っているハーピーもいるのだ。


「はぁん・・・辛み・・・」

「もう少し考えて動くことだねー」


バタンと大の字になって倒れるソルに甘えるように飛びかかるキティート。

この二人の力関係が時々わからないことになる。喧嘩では圧倒的にソルが強いのにそのソルがキティートに泣きつく時もあればキティートがソルに泣きつくこともある。


不思議な二人だが強いことには変わりないのだ。

ソル=ミーティア


所属 クリティ山脈

性別 雌

種族 ハーピー+大型種+変異種


体長21mというハーピーの中では大きい部類に入る。

金の長髪に真っ赤な羽根と逆光でなければよく見える存在のため戦場において真っ先に狙われる。

対空対地何でもできるマルチロールタイプ。

通常のハーピーよりも航行距離と滞空時間が長い。そして武装も多岐に亘る。


その中で特筆する物があるすればレーザー系の武装である。

人魚の中にもレーザーを放つ者はいるがハーピーの場合このレーザーに追加効果が付与されている場合が多い。

ソルのレーザーに付与されている効果は【爆発】

着弾した場所を中心に大規模な爆発が発生する。

この武装の問題点は多段ヒットを大前提とするため爆発の回数が尋常じゃない。

他の武装は投下型の魔法を主にしている。


現在居るハーピーの中で一番強いため発言権は族長並みにある。

が、政治的なことには全く持って興味がわいていないし理解もしないので他種族との交渉は苦手分野に入る。

一応人魚とは意気投合出来たらしい。


常に新しいことを考えているためたまに変な構想を言い出したりする。

実際空母の存在はソルが人魚と相談した結果生まれた兵種でありこれのおかげでハーピーの魔力供給が簡単になった。

魔力供給がいちいち自陣まで戻ってなどという手順を踏んでいたため自陣が前線から離れるハーピーに取ってみれば前線復帰が早くなるので敵兵の殲滅速度が飛躍的に向上した。はず。


実際のところ空母役の人魚との連絡があまり取れず更に着艦の訓練なんてしていないためうっかり海に落ちるハーピーが多数。その結果人魚に助けられることが多く前線復帰が出来ないハーピーの少数いた。


ソルは空母を提案したのに魔力供給に戻る際ケンタウロスの攻撃により撃墜した。



ソルとキティートは幼馴染のため子供のころから仲が良かった。

ソルは変異種のため親がいない。キティート自身は好奇心旺盛のため変異種のソルにべったりだった。

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