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英雄の旅路  作者: トンヌラ
16/30

血戦

―――――――――アトランティス/地上への回廊


「ん・・ここから地上に帰れるのか。」



ダイアナ女皇とは別れて地上に帰る。長い時間ここに居た気がする。

傷も癒えたらしいし地上の様子も気になる。

それにこれ以上ここにいると人魚達が子作りを要求してきて大変なことになる。

なぜ我との子をそんなに孕みたいのか気になったから聞いてみれば「強くてかっこいいから」だそうだ。


「まったく・・・」


そう溜息を吐きながら後ろを見る。

腹が膨らんだ人魚達が多数我を見ている。

仕方がない。別れがつらいのもあるだろう。


静かに手を上げて隠れている人魚たちを呼べば一斉に我に抱き着いてくる。

我は一人一人丁寧だがどっぷりと深いキスをしていく。

それに誘発されたのか我慢できない人魚達を我は思い出代わりに食べ尽くしてから地上に戻った。




―――――――――――アトランティス/海底への回廊付近



「はぁ・・・何日居たのだろうか。」


多分2日前後なのだろうが1週間は経ったと思えるくらい疲労が溜まった気がする。

久しぶりの地上の空気。荒れた大地。

そういえばここと人間界はどうして繋がってしまったのだろうか。

我が来る前は内乱が起こっていた。そして急に人間が攻めてきた。

気になることは沢山ある。そう。沢山。



溜息を吐きゆっくりと空を飛び始める。

目指す先は炎王の宮殿だ。



――――――――――――――ドラゴマウンテン/九頭竜城/執務室



「アトランティスよりラーズグリーズがこちらに向かってきています。」




炎王の耳に情報が流れてくる。

その中でこのような情報があったのだから少し首を傾げる。

魔界に戻ってきているのなら魔王城まで戻ってくればいい。

それにラーズグリーズならあの人間の軍勢を気にせず飛ぶことが出来たであろう。

人魚達は確かにふしだらな種族だが水辺や水中では龍と対等かそれよりも少し弱いかというくらい強い。

人間の軍の進軍など出来ないだろう。


まぁ考えていても仕方ない。きっと彼なりの考えがあったからこそ戦ったのだろう。



「ふぅ・・・・書類仕事はこれで最後か。」

「はい。残りは現地視察と坑道の点検ですね。」

「坑道の点検くらい他の執務官にも出来るであろう。そもそも坑道自体もう魔物の住処同然なのだからほっとけばよかろう。」

「住処同然だからですよ。炎王殿。この国における出生率と特定の年齢までの生存率を考えてください。」


龍は一度に複数の卵を産卵する。

そしてそこから既に競争は始まっているのだ。

他の兄弟姉妹を押しのけて強者を目指すのだ。


そして我が国には主に2種類の種族が存在する。


一つは四足歩行の龍。

もう一つは二足歩行の龍。


前者は数こそ極端に少ないが各々の寿命は果てしなく長く力も強大である。

後者は数は多いが四足歩行の龍と比べると寿命も力もない。しかし四足歩行の龍に出来ないことが出来る。

その中の一つがさっき言っていた坑道の点検なのである。



ちなみに私も二足歩行の分類に入る。




そして例外なのが飛龍族である。

彼らは空を悠々と飛ぶが手や腕がない。爪はあるが。

そのため龍の中では珍しくあの体のサイズで上位の魔法を詠唱出来たりする。

そのため我が国では国境の防衛隊などを務めている。

が、ラーズグリーズに付き従い飛んで行った新兵の部隊が帰ってこない。

それだけが飛龍族に対する気がかりだった。




―――――――――――――――魔界/空中




「~~~~~~」


歌を歌いながらゆっくり飛ぶ。

ラーズグリーズ。今思えばこれが一番最初に出てきた記憶なのだ。

他の記憶も思い出そうと思っても細かいことがわからない。

自分の身体にしっかり染みついている記憶。



戦闘機動。ミサイルアラートの音。吹き抜ける風の音。激しく防波堤にぶつかりそして高く水しぶきを上げる海。駆け抜ける電車の音。けたたましいスポーツカー。


よく考えてもこの程度だった。

そして我が覚えている記憶は殆ど音だった。

そうなるとこの世界に来る前は我は音に関する何かをしていたのだろうか。


そう考えていたら炎王の宮殿が見える。

山脈の中に城みたいな要塞みたいな建物が見えればそれが正解だろう。

そうじゃなくても魔方陣での転送が出来るはずだ。




「・・・・よし。やっとたどり着いたな。」


長かった。

要塞都市を攻略して攻め落とした後に行くつもりだったはずなのにこんなに時間がかかってしまった。

炎王は忘れてないだろうか。我に何を頼もうとしていたのかを。

忘れていたとしてもきっとほかの頼みごとをされるだろう。



そう思いながら宮殿の屋上の屋根に乗りそこからゆっくりと降りる。

そして開いている場所から中に入る。

もちろん衛兵は我に対して敬礼してくる。

やはりここが炎王の宮殿であろう。



「炎王殿はどこだ。」




――――――――――――――平原



「・・・・ひゃー。人間界広ー。」


魔界から人間界にやってきた風月。

その姿は人間から見たら化け物以外の言葉は出てこないであろう。

しかし彼女には関係ない。なぜなら彼女は自身の評価など気にしないからだ。

結果が全て。超実力主義の社会で育った結果の思考だった。



「・・・・街ちっせー。マジかよ。魔族。こんな辺鄙な都市に長年防衛されてたのか。・・・・弱くなったな。魔族も。」



そう言いながら木々を踏み倒しながら剣と盾を構え進軍していく。

そのルートは要塞都市を大きく迂回して山脈を目指す軍隊の進軍ではありえない進軍方向だった。

1人でかつ体力があり単独でも大勢の軍隊を蹴散らせるという稀有な例である風月ならではの行動だった。



「・・・・地図も作っておくか。後々の進軍に役立つだろうな。」


そう独り言を言いながら周りを見ては頷く。

地図になる紙は用意してないが魔法で何とでもなる。

それこそダンジョンのみや、街のみといった限定的なのに限った魔法だが風月は世界地図を魔法で出来るだろう。

だが一度見てみないとわからない。そこだけが欠点だった。



「・・・・はぁ。かったりい。」



そう言い立ち止まる。

目の前に森林の中に3人人間がいる。


「おらぁ!!森ん中でこっそこそ機会を狙ってんじゃねーよ!!!うざってんだよ!」



そう言いながら戦闘は開始される。

ミナヅキが風月の視界に入る。

サリーが風月の足を拘束するかのように薔薇を絡み付かせていく。


3人目が動かない。

この3人目はこの前召喚された傭兵と名乗っている勇者である。

そして2人の勇者はこの3人目の存在を知らない。




「デカブツだ!サリーっ!気を付けろよ!」

「ふんっ!魔族なんかにっ!」


二人は息を合わせながら風月に明確な敵意をもって襲いかかる。

が、違い過ぎた。持っている物が。



「・・・・・・よぇえ。雑魚が。」



不動を貫いていた風月が剣を振るう。

そしてサリーの魔法に合わせて盾を構える。

魔法は無慈悲にもサリーに跳ね返り剣はまるでミナヅキの動きを読んでいるように叩き下ろされる。



「きゃあぁぁっ!」

「サリーっ!」


魔法が跳ね返されるなんてサリーにとっては初めてだった。

今まで戦ってきた魔族は圧倒的に強力な魔法で薙ぎ払っていけばいいだけだったから。

そしてついにこの巨馬が動き出す。


「さーて。逃げる時間はくれてやったのにお前らは何も考えず蠅のように俺の邪魔をしてくれたな。この落とし前どうつけてくれるんだ?」

「知ったことじゃない!私たちは勇者!負けるわけがない!」


サリーが悔し紛れにそう言い放つ。

ミナヅキは少し焦る。

ラーズグリーズの出現のせいで自分たち勇者が王の支援をあまり受けれなくなってきたからだ。

挙句この前の魔界侵攻だって要塞都市を攻め落とせたはいいもののその後の人魚の国を攻め落とせず結果おめおめと王都に戻ってきたのだ。

勿論その結果ミナヅキ達勇者の立ち位置はどんどん低下していった。

召喚した直後には貴族も優しくそして支援もしてくれたが今では騎士と同じような扱いをされている。



「負けることはねぇ。か。大層な傲慢だな。・・・・ま、その傲慢のせいで死ぬ思いをしてもらうとするか。」



そう言い風月は二人から少し離れる。そして剣を振り下ろす。

魔力や技量などの違いを見せつけるために。

わざと”ケンタウロスだったら”回避が容易いもっとも基本中の基本剣技を。



「そーら!こんぐらい避けれるだろうが!勇者様ならよぉ!!【バッシュ】!」


叫ぶ必要がない剣技の名前を叫び剣を地面に叩き付ける。

衝撃波が森に広場を作っていく。

その衝撃波はサリーを狙って伝わっていく。



「サリー!!」


ミナヅキが叫ぶ。

ギリギリ範囲外に逃れることが出来るミナヅキはその衝撃波がサリーを狙っていることを感づいていた。

しかしサリーにはわからなかった。

魔法で視界が悪くなる。それを理解していなかったから。いつも一撃で終わらせていたから。


サリーがミナヅキの叫び声に気が付きミナヅキの方を向く。

その瞬間サリーの意識は無くなる。そして風月の高笑いが響く。


衝撃波は無慈悲というか予想通りというかサリーの身体を消し飛ばした。




♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯♯



「ははっ!脆弱の塊だな!人間は!衝撃波で消し飛ぶんじゃ魔王討伐なんて夢のまた夢だな!!」


ミナヅキを見つつ周りを見る。

あの正体不明の人間を警戒する。

あの衝撃波を回避した挙句今の今までこちらに仕掛けてこない。

わからないことこそ一番怖いことだし恐れなければならない。



「サリーっ・・・」

「・・・お前もすぐあの生意気な雌猿の元に送ってやるよ。」


ミナヅキに向かって剣を向かった直後鈍い発砲音が聞こえる。

風月の身体を貫く。飛び散った血が風月の周りの木を少し赤く染める。



「・・・・っ!ここで来るかよっ!」

「!?・・・・隙ありっ!!」


体勢が崩れた風月にミナヅキが斬りかかる。勿論使う剣技や魔法全てを使って。

風月が体勢を立て直しながらミナヅキの攻撃を防ぐ。そしてミナヅキが離れた直後にまた発砲音が響く。



「ちっくしょう!さっきからチマチマ嫌らしいタイミングで邪魔してきやがってっ!」

「・・・・味方がいるんだ。俺も負けられない!」


しかし体勢を立て直した風月にとってみればこのミナヅキの攻め方は単調すぎた。

突撃してきたミナヅキを狙ってたかのように剣を振り上げる。

ミナヅキの身体を裂くと同時にまた発砲音が鳴り響く。



「・・・・!!!」




その弾は確かに風月の首を貫通していたのだ。

正体不明の5人目の勇者は1人目と2人目の勇者を犠牲に風月に致命傷を負わせたのだ。

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