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英雄の旅路  作者: トンヌラ
15/30

傲慢

―――――――――――――エリアアルカディア/ケイローン城/天守閣


「・・・・で?俺が人間世界に行って。人間を絶滅させりゃいいんだな?」

「そこまでは言ってない。敵対する人間の国を倒せと言ってるんだ。」

「だから絶滅だろ。あ、絶滅はねーか。あの研究オタクの国は手出ししねぇよ。」


ケンタウロスはどうも扱いにくい。

悪く言うが無駄に知恵も頭もまわるケダモノ故敵愾心を煽り暴れさせるということが出来ない。

酒を好むため酔わせて暴れさせるのもいいがそもそも魔界に出回っている酒の大半は此処アルカディア産なのだ。

さてどうしようか。


「・・・だいたい。俺達を今になって出陣させようってのが気にくわねぇよな。あの青二才だけじゃ足りなかったのかよ。」

「確かに今急に出陣を要請したのは悪い。しかし今必要なことなのだ。」

「必要・・・ねぇ。んで?戦争が終われば俺達はまた鼻つまみ者ってわけだ。」



たしかに戦争が起こる前はケンタウロスはどの種族からも嫌われていた。

それに周りの国とは交流も煙たがる排他主義故に好感度は常に最低だった。

しかし他の国との交流がない分独自の文化や技術が発展した。

この城もそうだ。外見は普通の堅牢な城とは違いまるで観光名所のような豪華絢爛な城である。


「ふむ。この戦争を気に諸貴族と交流を深めてみればいいのではないか?」

「そんな気はない。・・・・と言いたいところだが実はあるんだなこれが。だがまだ駄目なんだ。この国は見ての通り貨幣経済が浸透してねぇ。そんな国がいきなり貿易やらなんやらの問題にぶち当たってみろ。ケンタウロスの伝統芸の焼き討ちがそこらじゅうで起こるぞ。」

「うぅむ・・・だが貿易じゃなくてもいいんじゃないか?」



話が逸れに逸れてるが気にしない。

しかしこうやって会話してみるとわかるが風月は戦争なんかより国内の情勢を何とかしたいのが伝わってくる。

まず一つ。この国は魔界の中でもトップレベルの資源と技術を保有しているためそれを武器に他国と交渉したい。

そして二つ。この国はいまだに物々交換で成り立っている非常に不思議な国である。無理に貨幣経済を取り入れるつもりはないが今後貿易となると貨幣が必要である。そうなると嫌でも貨幣と付き合わなければならない。


「つまり。今俺は軍隊を動かす気もねーし。今後に備えて物々交換と貨幣経済の両立を目指していかなきゃならねぇんだよ。」

「ふむ。相場とかはあるのか。」

「さぁな。ただな。職人同士の交渉になる。1グラムの金と1グラムの米が命と信用を左右する戦場だ。相場なんてわかるわけないだろう。」



そう言いながら風月は頭を掻く。

国のトップがこんな状態ではやはりそのうち大変なことになるだろう。



「さて、話を本筋に戻すか。電撃戦の要求だが今現時点においては返事は出来ない。青二才の状態にもよるし何より人間の武器の中に銃が出てきたっていうじゃないか。」

「あ、あぁ・・・それもあるからケンタウロスと相性がいいかと思って。」

「確かに鉛玉を適当に撃つだけの兵器なんて盾兵で十分蹂躙できる。だがな。あの猿共が鉛を撃つだけのゴミじゃねえことはわかってんだろ。絶対に飛び道具を使ってくる。・・・・魔族で例えるなら俺みたいな猛者をな。」



風月は私の顔をずっと見ながらスラスラと様々なことを言っていく。

電撃戦を行う上で必要な物資とその結果。それに見合う戦士達への報酬の支払い。

道中の村や街に住む人間への暴行や略奪。下手したら更地になるかも知れない。



「勇者という飛び道具があの馬鹿猿共にある限り戦争は終わらねぇ。つまりだ。勇者を召喚する機構をぶっ潰さない限り・・・・血で血を洗うことになるだろう。」

「・・・何が言いたい。」

「俺達が電撃戦で王都までを更地にしても勇者を召喚する魔方陣をぶっ潰さない限り世界の至る所から大量の勇者が召喚されるだろうよ。そしてそれが意味することは俺達魔族の敗北と・・・・あの猿共の恐怖政治の始まりだ。勇者には適当に美女を引っ提げて鼻の下を伸ばさせてよ。」



スラスラと様々なことを言っていく風月。

明らかに杞憂に終わることが殆どだったがそれでもたまに的を射ていることを言っていく。

魔王の座には全く興味を示さなかったが下手をすれば魔王になっていたかもしれない。



「・・・・・3か月。3か月待て。そうすれば若い雄共が立派な戦士になる。そうすれば一気に片付く。」

「3か月か・・・」



長すぎる。今後新たな勇者が召喚されるかもしれないのに3か月は長すぎる。

しかしその分戦力が増強され戦略を立てられるのならそれはそれでいいかもしれない。

が、やはり今電撃戦をしてもらわなければならないのだ。




「3か月か。長いな。いくらなんでも長すぎる。その間にまた勇者が召喚されてその勇者が先の4人より強かったらどうするんだ。」

「・・・・はぁ。あのな。電撃戦は確かに熟練の兵士が山ほど必要だ。・・・・だがそれはボンクラが集まって行うことだ。・・・・俺なら。一人で充分だ。」



風月は静かにそう言うと立ち上がり天守閣から出て行ってしまった。

最後の言葉。確かに自信が溢れていた。そして彼女なら成し遂げるだろう。





―――――――――――――エリアアルカディア/サジタリウス市場



此処では日夜戦争のような取引が行われ続けている。

まさに知恵と知恵。経験と経験のぶつかり合い。

衛兵もこの市場にいる時だけはまるで戦の最前線にいる時のような気迫をしている。

物々交換ということもあり必ず揉める。そして死体が出た時に動くのだ。


そんな魔境のような市場に響く足音。

この瞬間だけはその市場もまるで氷で支配されたかのような静かな空気に包まれる。

そして道をあける。さながら巨大なナニカの通行を妨げないように。



「・・・・・・ふん。」


そう。この市場に現れたのだ。

鈍く銀色に輝き重厚な存在を放つ特殊な鎧。

そして星を撃ち落とす人馬のような紋章が刻まれている巨大な盾。

空を裂き大地を消し飛ばすとも言われている大剣を携え。



「どけどけっ。踏み潰してぶっ殺すぞ!」


風月が完全装備で市場に現れる。

先代を殺した時ですらほぼ全裸に近かったのにこんなに装備を整えてる以上とんでもないことをやらかす気満々なのはその場にいた全員が理解できていた。



そして風月がその巨大な関所を軽々と跨いで街の外に出て行ったのを見て市場のケンタウロスが騒然とする。

大体はこんな意見がやり取りされていた。


「風月は何しに行くんだ!?」

エリアアルカディア



特産品:米・酒・様々な鉱石

在住種族:ケンタウロス・妖精・エルフ


総人口:約149万


完全な独裁政治体制。”長”と呼ばれるその座は一番強いケンタウロスが就くことが出来る。

現在は玄馬 風月が就いている。


物々交換が主流の珍しい国。

そしてなんといってもこの国の練度は他の国の軍隊とは全く違う次元に到達している。

その分戦士の数は訓練開始時に比べてほんの一握りの僅かな者しか残らない。

教官の指導についていけなくなった者やそもそも試験で落とされる者。

様々なことを駆け抜けた猛者のみが戦場に立てるのだ。


ケンタウロスは戦闘系の魔法には精通していないが農作や鉱物に関する魔法は並の国程には精通している。

鍛冶技術はドワーフにも劣らないほど進化・発展している。

彼らの鎧は人魚や龍に卸されている。大型の武具を作ることに特化しているため体の小さい者に扱い辛い一品ばかりである。

ドワーフが作る武具とは別の種類に入るほど魔法や鍛冶作業が違う。


実は魔界で唯一ライフリング技術が確立している。が元々銃を使うより盾を持って突っ込む気質の者が多いため銃の概念はあるが製造はされていない。

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