ある少年少女の幻想入り
今回は緋月が書きます。
「なぁ……数秒前まで駅前にいまたよなぁ…俺ら」
「そう……ですよね?」
深い森の中を少年と少女はさまよっていた。
「おいおい!これって異世界転生とゆうやつじゃねえか!?緋依奈?」
興奮している少年とは裏腹に緋依奈と呼ばれた少女は呆れたような顔をした。
「違いますよ空兎、私達はまだ死んでませんし神様も見てません。それに転生じゃなくて転移じゃないですか?」
「た、確かにそうだな。これからどうする?」
空兎と呼ばれた少年は緋依奈の冷静さに驚いていた。
「とりあえず移動しましょう」
「あぁ、そうだな」
そうして二人は深い森の中の奥に入っていった。
「なぁ……深くなってくような気がするだが………大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫じゃないですよぉ………」
緋依奈はその場にへたり込んでしまう。
「は…はぁ!?」
「しょ、しょうがないじゃないですか!!私達は異世界にいるんですよ!?異世界の地理なんてわかりませんよ!!」
緋依奈は空兎に向かって涙目になりながら怒る。
「す、すまなかったからそんなに怒るなよ……」
「まぁ、とりあえず進もうって言ったのは私ですし……こちらこそすみませんでした……」
と言って緋依奈はペコリと頭を下げる。
「あっさり謝られると気が狂うんだが……兎に角、戻ってもしょうがないし進むぞ」
「わかりました!」
と緋依奈はピシッと敬礼する。
(……かわいい)
緋依奈は学校ではベスト4になっているほどの美少女だ。
ちなみに空兎はベスト12だ。
「………ったく、こうゆうことを狙ってやってないのが反則だよな…」
と空兎は小声を漏らす。
「そういえばさ、空兎?」
「なんだ?」
「あの……なんでしたっけ?えっと……」
「あの不登校だった男女2人か?」
「あぁ!そうそう、そうです!………名前なんでしたっけ?」
緋依奈は首を傾げる。
「確か……誰だっけ?」
「空兎も覚えて無いんですね……」
「あぁ、スマン」
「空兎が謝らなくていいですよ!!元はこんなこと聞いた私が悪いですし…」
緋依奈が焦っているせいか早口で話す。
こうなると、頑なに緋依奈は自分が悪いと言い続ける。
とても友人想いなんだろう。
「いやいや、俺だって覚えてないのが悪いよ」
空兎も同じだ。
同じやり取りを5分くらい続けると、
「あー!もうわかりましたよどっちも悪いです!これで終わりにしましょう!ね?」
緋依奈が痺れを切らして言う。
「あの2人……私達が連れて来ないと学校に来ませんでしたからね……心配なんですよ」
「そうだったな」
「それに、あの娘頭が悪いわけでは無いのに何故学校に来ないのでしょう……」
「そっちもなのか?」
空兎と緋依奈は2人で別々に担当していたのだ。
「俺が担当した奴は理数の成績がエグかったぞ?」
「しかも、童顔でイケメンですしね?」
「あぁ、ムカつくほどイケメンだ」
空とはニヤッと緋依奈に笑いかける。
「実は、女子達での秘密だったのですが、あの人は学校イケメンランキング1位なんですよ!?」
「は?女子達もそんなんやってたのか?」
先ほど言ったランキングは男女共に秘密にされていたのだ。
「はい、そうですが……『も』ってことは……」
「あぁ、俺らも美少女ランキングをやってたな……で、俺は何位なんだ?」
「あ、12位ですよ」
「お、意外と高いな。ちなみにお前は4位だったぞ」
「えぇ!?私がですか!?」
緋依奈は目を見開く。
「あぁ、そうだよ。確か…アイツも1位だったな」
「そんなあっさり返さないで下さいよ!」
「いや、お前普通に納得出来るし」
「え……そうなんですか?」
緋依奈は顔を紅く染める。
「てか、不登校2人がイケメンと美少女だとはなぁー」
「え、えぇ確かにそうですね……」
緋依奈はまだ動揺しているようだ。
「まぁ、今はどうでもいいですね」
「確かにな。この森を抜けねぇと……」
2人は森の中を進んでいった………
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「「…………」」
2人は森を出るどころか、木々が多くなり辺りが暗くなっていた。
「なぁ、俺こんなところで死にたくないんだが……」
空兎は半眼で木々を睨む。
「それは……私だって……そう…ですよ」
緋依奈は息を切らして木に手を付いていた。
「オイ、さっきから思ってたんだが…お前ってそんな体力無かったっけ?」
「す、すみません…私も……こんなはずじゃ……なかったんですが」
「普段から鍛えて無いからだろ?お前帰宅部だしな」
「運動は……苦手なん………ですよ」
「まぁ、少し休m『バタッ』」
「ッ!?オ、オイ!緋依奈大丈夫か!?」
緋依奈が何の前触れも無く倒れた。
「ったく、しょうが無いな……倒れるまで無茶しやがって………」
と言いながら緋依奈を背負う。
「お、意外と軽い。まぁ、ちっこいしな」
緋依奈は身長が155㎝しかないのだ。
背中に当たる物は意外とあるけど…
空兎はそんなことを考えて顔を紅くする。
すると、
「ん!?あれは家じゃないか!?」
遠くに洋風の家が見えたのだ。
「丁度いい!行ってみるか」
空兎はその家に近づく。
「おぉ……」
と、感嘆の声を漏らす。
そこには青の屋根に白い壁、おとぎ話に出て来る家を思い出すようなデザインだ。
庭には花壇があり、丁寧に手入れをされているのが、花壇の事を何も知らない空兎でさえわかった。
多分ここに住んでるのは女の人だな。
うーわなんか緊張する……
空兎はその家の玄関で立ち止まる。
「スー……ハー……」
ため息まじりの深呼吸をする。
「トントン」と軽く扉を叩く。
「すみません!森で迷ってしまったのですが人が倒れてしまいました!どうか休ませて頂けないでしょうか?」
空兎には似合わない敬語をフルで使う。
緋依奈との会話でいつの間にか敬語を自然と使えるようになったな
と思い苦笑する。
少し経った時、
「はいはーい、今出ますよ!」
と、中から高めの女性の声が聞こえる。
「ガチャ」と鍵が開く音がする。
「ありがとうございます!」
ドアから出てきたのは、金髪のショートカットに青のワンピースのようなノースリーブにロングスカートを着ている
その肩にはケープのようなものを羽織っており、頭にはヘアバンドのように赤いリボンが巻かれている。
「お礼はいいからまずはその娘をベットにに寝かせて!」
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「ふぅ……一応一難は去ったようね」
少女は緋依奈の額に濡れたタオルを置き、息を吐く。
「えぇ、本当にありがとうございます」
空兎は深々と頭を下げる。
「フフフッ、そんなにかしこまらなくてもいいのよ?」
少女は軽く微笑みながら空兎に話かける。
「いえいえ、そんな……」
空兎は緊張しているようだ。
「じゃあ、この娘と同じ口調でいいわよ」
「なら、遠慮無く。改めて緋依奈を助けてくれてありがとう」
「この娘のことが大事なようね?友達想いなのね」
「あ、ありがとう……」
空兎は照れで顔を下に向ける。
「フフフッ、私はお茶を入れて来るわね」
と言って少女は部屋を出てしまう。
「ったく、無茶しやがって……」
と、眠っている紗此野に向かって言う。
いつもいつも誰かの為に無茶するんだよな……
あの不登校にも
「入れてきたわよ。あら?どうしたの?そんな顔して……」
「いや、ただの考え事だ」
「そう、そういえば自己紹介ね。私はアリス・マーガトロイドよ」
流石異世界、名前が聞いただけじゃ覚えずらい
「あぁ、俺は冬崎空兎で、寝てるのが夜舞緋依奈だ」
「わかったわ空兎。私のことはアリスって呼んで頂戴」
「了解、よろしくな。アリス」