1パート
14歳だったユイの心の傷は深かった。中学の頃にいじめを受けていた。寒い日に水をかけられたり、靴の中に泥をいれられたりしてきた。中学卒業の寂しさは悲しいほどになく、ユイは残酷なほどにほっとしていた。
人を信じることを忘れたようなユイにとって母は大事な存在だった。父は転勤が多くあまり家にいないため母と一緒にいる時間が他の誰より長く他の誰より大切だった。
そんなユイが高校に言ったが人が信じられなくすっかり心を閉ざしたユイは友達がなかなかできなかった。
そんな中あの事故が起きた。ユイは、母は生きていると信じていた。そして親戚の家から通うユイを唯一支えていたのが、その思いだった。がんばって勉強していれば母がいつかやって来てほめてくれると信じていた。そしてそれを確信していた。
やがて高校三年生になり、ユイはクラス替えがあってもさして変わらず心を閉ざしたままだった。
そんななかいきなり話しかけてきた人がいた。
「ねぇ、お名前は?」
「ユイだよ。」
「今日、放課後時間ある?一緒に遊ぼ!」
人懐っこく話しかけてきたのが誰あろうノゾミだった。クラスでも友達が多く、私なんかと遊ばなくてもほかにいっぱいいるのではと思ったが内向的なユイにとっては嬉しかった。
放課後、掃除が終わるや否やノゾミは飛び付くようにユイの前に来た。
高校から飛び出すと一緒にジェラートを食べたり、UFOキャッチャーでぬいぐるみをとろうと二人で頑張ったり、カフェへいって下らない話をたくさんしたりした。
そして雑貨屋へ行っておそろいのブレスレットを買った。
「ノゾミちゃん、久しぶりに楽しかったよ。」
「ノゾミでいいよ。」
「どうして誘ってくれたの私なんか。」
「えー、なんとなく。」
「何となくかいっ!」
ユイは笑いながら突っ込んだ。
「あのクラス友達いなかったから作りたくてあなたがいいなって。」
「そっか。私なんかあのクラスどころか高校に友達いないし。」
「私がいるじゃん!まぁあと一年だから友達作らなかったとしても問題ないかも知れないけどそこは自由。」
「友達増やしたいなー。」
「お、じゃあまた遊ぼうよ。」
高校でのはじめての友達は素敵な友達だった。そのあと毎日のように駅の近くの雑貨屋にまわったり、カフェでお話をしたりした。
文化祭の時にはたくさんの友達に囲まれているノゾミが手を伸ばしてくれて友達の輪にいれてくれたからたくさん友達もできた。
二人きりだった遊びも人数が増えて多いときは八人くらいでカフェにいくときもあったくらいだった。
でもノゾミと二人で遊ぶときはやっぱり楽しかった。多いときも楽しかったがやっぱりノゾミといるときは特別楽しかった。