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第四話 動き出した出会いⅣ

「なんのつもりだ‥?」


スーツ姿の3人組の中で最も短髪の男は赤毛の魔術師に尋ねた。察するにこの男が3人の中でのリーダーのようだ。とある廃墟の一室で二人の会話は続く。


「なんのつもり、ねぇ」


赤毛の魔術師は続ける。


「もしもこれが取引だと思っていたなら謝ろう。交渉だとウチの連中は言ってたが、それも正確には正しくない。これは、脅迫だ。」


淡々としているものの威圧感の塊のような声色で告げる赤毛の魔術師。彼に銃口を突き付けられているみさこは依然として恐怖のために身動きが取れない。


「我々をなめているのか?赤毛の魔術師よ。」


「なめてなんていねぇさ。魔術結社、‘白銀(はくぎん)の集い’。」


赤毛の魔術師の鋭い眼光が光る。


「そいつを殺すつもりか?」


ややあって短髪の男が返答する。


「お前らの出方次第だ。」


「というと?」


場に緊張が走る。それと同時にみさこにもより緊張が走る。彼らのやり取り次第で自分の命が取られてしまう可能性が出てきたからだ。


「この光属性、北氏(きたうじ)みさこをお前らに引き渡す代わりに今後お前ら、‘白銀の集い’は俺たち政府側の勢力には逆らわない。というのが交渉の条件だったはずだ。」


「あぁ。そうだな。」


「だが、俺はこの条件を変更する。北氏みさこを殺してほしくなければ‘白銀の集い’はこの誓約書にサインしろ。」


「誓約書?」


赤毛の魔術師は例のごとくどこからともなく一枚の紙を取り出して説明した。


「この誓約書の効果はいたってシンプルだ。もしも今後、‘白銀の集い’が政府側に魔術的攻撃を仕掛けた場合は‘白銀の集い’のメンバー全員は魔術的力を失うという俺たちの魔術の最も重要な発動キーだ。」


「ふざけるな!その条件は我々にとって不利すぎる!そもそも、この交渉に応じたところで北氏みさこが殺されるの阻止するだけで‘白銀の集い’が彼女を手に入れられないじゃないか!!」


激情する短髪の男とは対照的に赤毛の魔術師は冷静だ。


「交渉決裂なら、こいつを殺すまでだな。」


「なっ‥!」


「考えてもみろよ。最初の条件は明らかにおかしい。光属性なんていう魔術界の核兵器を手にした組織が政府側に尻尾を振るなんて考えにくくないか?」


短髪の男は返す言葉もないといった表情を浮かべている。一方のみさこは恐怖で足を震わせていた。

(こ、ここから逃げないとっ‥!このままじゃ殺される!何よりこの赤毛の魔術師って人はっ‥!!)


「残念だ。」


赤毛の魔術師は短く言葉を発すると引き金に力をこめはじめる。

その場がさらに緊迫する。みさこは目を堅くつぶり、短髪の男が待て!と叫ぼうとしたその時だった。


「落ち着いたらどうですか?」


そう言って一人の男がドアの無い入り口から部屋に入ってきた。三人と同じようにスーツ姿で眼鏡をかけている。一見、仕事のできるサラリーマンのような風貌だがこのようなイレギュラーな場にやってきているという時点で、彼も普通ではない。


「何者だお前?」


赤毛の魔術師は尋ねた。


「名乗る必要はないですかね。」


そこで眼鏡の男の眼光は強まる。



「こ こ で 死 ぬ 人 に」



パン!パン!と2発の銃声が廃墟に響き渡る。赤毛の魔術師はとっさにみさこに飛びついて回避し、相手の死角となる別の部屋に転がった。


戸上(とがみ)さん!何やってるんですか!?」


短髪の男は眼鏡の男、戸上に言い寄った。


「この部屋の様子は見させてもらっていました。彼らが交渉を無視するのであれば赤毛の魔術師だけでも始末しておけとの上の指示です。」


「ですが、これでは政府側との決別が深刻化してしまうのでは?」


短髪の男は戸上にさらに尋ねる。そして、その返答は思わぬ形で返される。

パン!と一発の銃声。

短髪の男は戸上の銃撃によって倒れた。


「ふぅ。いけませんねぇ。‘白銀の集い’の結束を乱しては。あなたのような補充の効く駒に必要以上の行動は求めていないんですよ。」


戸上はそう吐き捨てると、残りの二人に指示を出す。

「死体回収班を手配してください。そして、あなたたちはここから去ること。ここからは魔術戦ですからね。」


残りの二人は先ほどの同僚の死に動揺しながらも戸上の指示通りに動いた。

そして、その二人がいなくなり新たな一人が部屋に現われる。


「戸上、ねぇ。重荷の魔術師、戸上一郎か。」


赤毛の魔術師は戸上の前に、倒すべき相手の前に立つ。


「あの赤毛の魔術師に知っていただけるとは光栄ですね。」


「あんたレベルの魔術師をこうも迅速に投入してくるっつーことは、‘白銀の集い’は交渉する気が初めから無かったようだな。」


二人の魔術師の間に火花が散る。


「あなたに言われたくないですねぇ。それに、そんなことはありませんよ。でなかったら、そもそも交渉条件なんて提示しません。あんな、ダメ元の交渉条件なんて。」


戸上はうすら笑いを浮かべて言う。


「そういうのを交渉する気がないって言うんだよ。」


同じくうすら笑いを浮かべる赤毛の魔術師。

ここに二人の魔術師の戦いの火ぶたが切って落とされる。

次回はやっとバトルです

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