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動き出した出会いⅢ

1週間ぶりに更新ですぅ

みさこが茶色がかったローブに着替えて部屋を出ると、黒いローブを着た赤髪の少年、赤毛の魔術師が待っていた。先ほどまで話していた千夏の姿はない。


「準備はできたみたいだな。」


そう言うと赤毛の魔術師は彼のローブのどこからともなく携帯を取り出す。


「もしもし。俺だ。これから作戦を実行する。千夏の部屋まで来てほしい。」


簡単に電話の相手に用件だけ告げると、彼は携帯をローブの中にしまった。


(どこにポケットがあるんだろう?)

首をかしげるみさこである。


「ちょっとそこ、どいた方がいいかもな。」


「え?」


短い会話のやり取りの後、ぶわっとみさこと赤毛の魔術師の間に藍色の魔方陣があらわれた。

その突然の衝撃に思わずみさこは尻もちをつく。

シュルルルと音を立てると魔方陣は無くなり、代わりに一人の人物が現れた。


「あにき。お待たせしました!」


現れた人物はまるでヤクザ者のような言葉づかいとは裏腹に端正な顔立ちをした少年だった。

背丈もみさこより低く華奢であり、藍色のボブくらいの長さの髪をもう少し伸ばせば女の子を名乗ってもおかしくはなさそうである。


「御苦労。待つほどの時間じゃないし、十分早いぞ。」


「いえ!あにきのためとあらば、呼ばれてからコンマ数秒でお迎えに上がるのが舎弟の勤めですゆえ。まだまだでございます!」


「まぁ‥期待しておく‥」


元気一杯の少年とは対照的に若干引き気味の赤毛の魔術師である。


「ところであにき。要人はどちらでしょう?」


「お前の後ろだ。さっきの衝撃でいい感じに吹っ飛ばされてたからな。」


少年はハッとした顔で振り向いた。


「ご無事ですか!?」


そう言って少年はみさこに手を差し伸べた。


「あ、ありがと‥」


少年の手を借りてみさこはなんとか立ち上がった。


「自己紹介が遅れました!私、あにきの第一の舎弟こと多島彼方(たじまかなた)と申します。」


「私は‥」


名乗ろうとしたみさこの声を彼方が遮った。


「存じ上げていますよ!みかこ様!」


「いや、私は」


「違いましたか?あぁ!リカコ様でしたね!」


「そんなファッションモデルみたいな名前じゃなくて‥」


「みちこ様でしたね!」


「なんか年齢上がった感出てるね‥」


なんとなく漫才を成立させている二人であった。


「もういい彼方‥さっさと飛ばしてくれ。」


呆れ気味に赤毛の魔術師は言った。


「すみませんあにき‥。人の名前を覚えるのは苦手なんです。」


若干泣き目になりながら彼方は言った。

(かわいいなぁ‥)

みさこはその女の子っぽい可愛らしい顔を見てさっきまでの無礼を水に流す。


「では、参りますよ‥」


涙を拭いて彼方が真剣な表情で告げる。

みさこはさっきのように尻もちをつかないように若干身構えた。何が起こるか分からないみさこにとってこのような行動は重要だ。


「愚かな羊たちよ。その景色をじくっ!?」

彼方は呪文を唱えている途中で舌を噛んでしまったようだ。


「うぇーんあにき~」


泣きながら彼方は赤毛の魔術師にすりよった。


「お前はなぁ!さっさとしねぇか!!これから作戦を実行するっていうのに、締まらないな!!」


「かわえぇ~」


対照的なリアクションをとる赤毛の魔術師とみさこ。


「それでは今度こそ。」


テイク2と言ったところか、赤毛の魔術師から離れた彼方が今度こそ告げる。


「愚かなる羊たちよ。その景色を時空とともに連れ去れ!」


彼方がそう唱えると彼が登場した時と同じ藍色の魔方陣が現れた。

3人は藍色の光に包まれていく。


「あにき。ご武運を。みさこ殿も。」


赤毛の魔術師は彼方に向かってゆっくりとうなずいた。


「あれ?私の名前?」


みさこが不意を突かれて頓狂な声を上げると、彼女の視界は真っ白になった。



◆ ▼ ◆ ▼ ◆ ▼ ◆ 


次にみさこが目を覚ますと、まったく見覚えのない場所だった。

荒れたコンクリの地面に壁、窓の外の景色から見るに2階以上の高さがあるようだ。


「ここは‥どこかの廃墟か何か?」


独り言を呟いた彼女の後ろから思わぬ返答がきた。


「正解だ。察しがいいな。ここが相手との交渉場所になっている。」


声の主は赤毛の魔術師だった。

みさこは彼の方を向いて話す。彼女は彼にぶつけておくべき話があったのだ。


「ねぇ。その交渉って何なの?私が必要なの?」


「永作も言ってたろ?全て終わったら解放するって。そんなに気にすることはねぇよ。」


「なんですぐに開放する人にむかって、みんな自己紹介するの?」


みさこの鋭い質問に驚きを隠せない赤毛の魔術師。


「普通、誘拐犯のグループがベラベラ個人情報話す?まぁ、魔術とか言ってる時点で少し普通じゃないけどさ‥」


依然として黙る赤毛の魔術師に彼女はたたみかけた。


「自己紹介っていうのはこれから関係を保っていく人にすることだよ。私を解放する気なんてないでしょ。」


「‥‥だったら、ここから逃げるか?」


「それはしない。というか出来ないよ。あなたは不思議な力を持ってるから。」


「じゃあなんだってんだ?」


怪訝そうな顔の赤毛の魔術師にみさこは言った。


「千夏って子が言ってた。私の探してる人を知ってるって。あの時は聞けなかったけど、あなたも知ってるなら教えてほしいの。」


「お前は自分の立場が分かってるのか?仮にお前が俺たちがお前を解放する気がないという本心を見破ったとしても、なんの交渉材料にもなりはしない。お前の被・誘拐者という立場は変わらないんだからな。」


淡々と言う赤毛の魔術師に威圧されるみさこ。


「でも!私はずっと解放されないなら、私の探してる人に、、けんちゃんに会わせてくれても!」


そうみさこが言い放つと赤毛の魔術師は体を彼女から背けた。

みさこは彼が体を背けた理由がすぐに分かった。


(あの人‥‥ 泣 い て た ? )


ズズッと鼻をすすると赤毛の魔術師は小さな声で口を開く。


「無理な相談だ。」


そして、みさこはその小さな声に今になって懐かしさを覚えていた。

(あれ?この声‥)


キキーと車の止まる音で彼女の思考が中断された。

彼らの言う交渉相手がやってきたようだ。

間もなく階段から何人かの足音が聞こえてきて、3人のスーツ姿の男がやってきた。


「そいつが光属性か?」


スーツ姿3人の内の一番短髪の男が赤毛の魔術師に聞いた。


「あぁ。そうさ。」


赤毛の魔術師は短く答えるとサッと拳銃を取り出し、あろうことかその銃口をみさこに向ける。

スーツ姿の男たちに動揺が走る。だが当然、彼ら以上にみさこは動揺していた。


「さぁて、楽しい楽しい交渉の時間だ。」


赤い髪の少年の不気味な声が廃墟に響き渡った。



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