人は
桜並木の道、満開の桜を眺める。
もう二度と見ることは無いかもしれない。
多くの知人の顔が脳裏をよぎる。
今思うと、彼はそんなに悪い奴じゃなかったかもしれない。
彼も、彼女も、あの人も……。
人はどうして、思い出すのはいい事ばかりなのだろう。
嫌な事を思い出しても、その時はとても嫌だったとしても、思いでの中ではその思いは薄れてしまう。
そう考えると、今の自分はまだやれるのではないかとも考えてしまう。
あと一歩、もう一歩。
そうやって、人生と言うものは茨の道を、歯を食いしばりながら歩いて行く事のようにおもう。
しかし、その茨の痛さは、次の茨へ向かう途中にはもう忘れていて。オブラートに包まれた記憶と化す。
限界だった。もう無理だと思った。
自分が、無価値なものに思え、世界のすべてが敵に思えた。
自分のできる事は全部したのかと問われた。
逃げ出す事もできた。
しかし、それは、自分の弱さでできないでいた。
それならいっそすべてを捨てたほうが楽だと思った。
だから、今こうしているのに…、いざとなると、その理由さえもオブラートに包まれた記憶と化していて。
桜並木の道を楽しそうに歩く子供がいた。
彼らは知らないだろう、この人生と言う茨の道の怖さを。
いや、知る事は無いかもしれないし、程度は違え知る事になるかもしれない。
むしろ知らない方が幸せなのだ。
万物すべてを満足に出来る人なんていない。
そうした、道で知る事になるだろう。
そう考えていたら。
肩の荷が下りたように、気分が軽くなった。
よし、もう一歩頑張ってみようと思えた。
世界の人々は、多かれ少なかれ、壁にぶつかっているんだ。
逃げる事はいつでもできる。
なら、頑張って、その壁を壊す事をしよう。
来年また、この桜を見に来ようと胸に誓った。




