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たいてい正午前に1回は済ませてる

 再び自室。

 俺は大塚さんを抱いていた。


 女性的な柔らかさが特徴的な姫咲とは違うアスリートのような体つきは、まるで初めて出会ったというほど新鮮だった。


 彼女の体を弄っていると、大塚さんは言った。


「お嬢様にバレたら、本当に首ね」

「バレたら、困るなぁ」


 俺は彼女の胸に手を当て、心臓の音を感じながら言った。

 悪いことをしている。だから、強くドキドキする。


「ところでお前は、これが罠だとか考えなかったのか?」

「罠?」


 こんな気持ちよくて楽しい展開が、罠?

 大塚さんは何を言っているのだろう。


「俺は姫咲に言われて累に気があるふりをしたんだよ。お前が、本当に結婚する相手にふさわしいか、姫咲は知りたいんだ。使用人に手を出す男は駄目だってな」


 冷めた表情で、まるで見下すように俺を覗き込み、そしてタバコの残り香を漂わせながら大塚さんは俺に唇を重ねた。


 血の気が引いた。

 執拗なキスに、俺は処女のように何もできなかった。


 キスが終わり、彼女は仰向けに寝ていた。


「弱ったな」

「そうだろ」


「ああ、俺は姫咲に振られるんだろうな」

「どうだろうな」


「そうなったら、代わりに大塚さんが付き合ってよ」


 大塚さんは、驚いたように俺を覗き込み言った。


「お前は、俺を責めないのか?」

「責める? なんで」


「だって俺は、お前を嵌めたんだ」

「指示したのは姫咲だし」


「姫咲は最後までしろとはいっていないさ」

「手を出したのは俺だ」


 俺は大塚さんの手を握ろうとした。

 大塚さんはそれをするりと避けた。彼女は立ち上がり、シャワーも浴びずに服を着始めた。


「興が削がれたし、帰るよ」

「ご主人に報告ってわけ?」


「まさか。最後までやったなんて言ったら俺は無職だ。それは嫌だからな」

「……え、じゃあ……姫咲には言わないの?」


 答えず、大塚さんは出て行った。

 時計の秒針の音が聞こえるほどの静寂の部屋は、まだ少しだけ苦い匂いがする。


 俺は頭からベッドにダイブした。


 大 勝 利 !


 こんな勝利、あっていいのか!

 姫咲との関係は保たれた上に、大塚さんを楽しむことができ、それまでのやりきれないモヤモヤを発散できた。


 さすがは、俺だ!


 ——お前のモテ方、エグいな……。勇者とはそうあるべきなのか、ううむ。


 おう、急にどうした女神よ。


「そんなに動揺するところあったか? おまえが大塚さんを差し向けたんじゃないのか?」


 ——はい。確かに、多少修羅場にしてやろうと、大塚さんに悪い選択を選ばせたところはあります。しかし結果として何も起きずとは! いえ、本番行為をおこなって何も起きずというのはおかしな話ですが、何も起きずとは!


 これは俺も運がよかったと思う。

 まさか大塚さんが魅力的で行き過ぎたことが功を奏すとはな。


 すっきりしたし、あとはこのまま家の中でダラダラ過ごせば何も起きずこの世界にいられるだろう。どうだ女神よ! この完璧な作戦は!


「ところで、そっちの様子はどうなんだ? いよいよ魔族に支配されつつある感じ?」


 ——ぐ、ぐぬぬ。あ、ぜんぜん、へ、平気です!


 こいつ顔は見えないけどめっちゃわかりやすいな。


 ——いま、王都クマノ最強の剣士、ダグルス一行と魔王がぶつかっているとの報告が入っています。この戦いに勝利さえすればルイ! そもそもあなたはいらない子なのですよ!


「ああ、じゃあ行かなくていいな。よかったよ」


 ——ダメです! ルイは予備! 予備勇者ですっ!


 こいつめっちゃ失礼だな。

 なんてことを言いながら、そろそろ昼だしウーバーイーツでも頼もうかな、と思ったそのときだった。


 不意にスマホにメッセージが届いた。姫咲からだった。


『婚姻届、提出しちゃいます!』


 市役所の前、そこにはすでに俺の名前、印鑑入の婚姻届を持った姫咲。


 ——ふふふ、はっはっは! 思い知ったか、ルイよ。

 おまえは今日、死亡フラグで死ぬのだぁぁあああああああああああああああ!


 姫咲、おまえ……。

 おのれ、女神ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!


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