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彼女の家柄がまぁまぁすごい

 女神は今日中と言った。今日中に俺を異世界に送ると。

 愚かなり、女神ィ!


 それであれば俺は家に帰って、寝て過ごすまで。


 ——ふははは、余裕をカマしていられるのも今のうちだぞルイ! お前はすでに地獄へ片足を突っ込んでいるのだ!


 女神は何かスイッチが入ってしまったようで、さっきからこの調子だ。

 女神にできることは限られているとはいえ、俺も最善を尽くすのみ。


 さっさとタクシーに乗って帰るか……とスマホを取り出したところで、俺はメッセージに気がついた。


『おはよう累。朝からごめん! 今から会えないかな?』


 差出人は東明姫咲。正真正銘の俺の彼女だ。

 こんな朝から?

 不思議に思ったが、ちょうどいいといえばちょうどよかった。


『悪いんだけどさ、車出してもらっていい?』

『うん!』


 俺は近くにあったコンビニに入り、プリンを物色するふりをしながら15分ほど時間を潰した。新作を一つ買おうか二つ買おうか迷ったところで姫咲のピンク色のやたら長いリムジンがやってきた。


「もう、コンビニは停めづらいんだから。もう少しまともな場所に呼んでよねっ。大塚、この間免許取ったばっかで運転下手なんだよ。それに斜めに駐車するのは恥ずかしいし」

「別の車にすれば?」


 姫咲はそれには答えず、後からやってきた使用人の大塚さんの方を向いた。大塚さんは姫咲のメイドのような人で、二十代半ばの女性だ。


「大塚。プリンを5、6個見繕いなさい」

「お嬢様、太りますよ」

「はいクビ~! 大塚クビ~!! 無職~!!」


 言われつつ、淡々と指示をこなすのはお馴染みの光景と言える。

 こちらは使用人がつく家柄ではないため、それが普通かはわからないが。


 姫咲は何事もなかったかのように俺に笑顔を咲かせた。

「ごめんね累。急に会いたいなんて。ん、なんか変な格好ね。ゴルファーみたい」


 この服をきている経緯は話さないほうがいいだろう。


「まぁ俺はゴルフをやらせてもなかなかのもんだったと思うよ」

「言ってろばーか!」


 笑顔でケラケラ笑いながら噛み付くのは俺に対する愛情表現だとわかっている。大抵の相手に対し姫咲はお嬢様然とした所作を見せるが、大塚さんと俺は例外だ。


「実は俺もさ、今日はあんまり体調悪くてさ、帰ろうかなと思ってたとこ。よかったらそのままうちで桃鉄やろうぜ」

「もう100年飽きたんだけど。まぁいいけどさ」


 俺は姫咲のリムジンに乗り込んでうちに向かった。

 20分ほどかけてひとり暮らしのマンションに到着した。大塚さんは先に帰ってもらったので、姫咲と二人きりだ。


 二人でソファに腰掛け、適当にテレビをつける。

 そして俺は姫咲に訊ねた。


「そういえば、学校は?」

「サボっちゃう。累もでしょ?」

「まぁ——」


 言いかけたところで、姫咲は唇を重ねてきた。

 姫咲は細身だが胸はかなり大きく、ニット越しにそれの重量と柔らかさが伝わる。

 少し長いキスをした後、姫咲は顔を離してトロンとした目で言った。


「いまどんな気持ち?」

「それ、俺に言わせる?」


 はいはい、朝からお盛んだな。さて、一度シャワーを浴びて、など頭の中でシュミレーションしている間、姫咲は続けた。


「あたし、累にはいつもどきどきする。それに、ずっと一緒にいたいって思う。それをね、今日、突然言いたくなった。ううん。前から言いたかったんだけど、決心がついたの」


 姫咲は話がやや飛躍する癖がある。

 この場に於いてもそのような雰囲気があると、俺は感じ取った。

 そして、それは女神の力であると。


 ——フラグの力を思い知れええええええええええええええええええええええええ!


 おおなんだよ女神、急に。

 驚くのもつかの間、姫咲は言った。


「結婚しようよ。累」


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