34.
あまりにも騎士たちが動かないので、こちらから動くことにした。
一歩、二歩と足を進めると、ズサーッと音がしそうなほど、騎士たちが一斉に下がった。
『………………』
無言でジーッと見つめていると、視界の端にいた総団長が前に出てきた。
第一騎士団長も、剣を抜いたまま、慌ててついてきた。
少し見づらかったので、首を下げた。
「ルクセイラ、で、いいのか?」
『ええ、そうです。この姿では、初めて。』
「いや、初めましてではない。」
『??』
何のことだろうか。
この姿であった覚えはない、はず。
「以前、戦場で、ワイバーンを倒してくれた。」
『……あぁ、あの時の!』
「前回も、今回のことも、礼を言う。助けてくれて、ありがとう。」
『いえ、別に助けたわけではないので、礼は不用です。それよりも……何かいい匂いがします。』
「……は?いや、何も持っていないが?」
『ん〜?……ああ!そっか、そっか〜そう言うことか〜』
やっと納得できた。
人型の時にも感じた、不思議な感覚。
そして匂い。
竜の姿で改めて見ると、よくわかった。
総団長は私の発言に、疑問符を浮かべるばかり。
まぁ、人間にはわからないから仕方がない。
『よし。私の言葉を繰り返してくださいね?我、ヴィルセン・イーゼルは。』
「?我、ヴィルセン・イーゼルは。」
『真実の名の元、光の竜と盟約を結ぶ。』
「真実の名の元、光の竜と盟約を結ぶ。」
「ちょっ……!!」
私と総団長を囲うように、足元に幾何学模様の魔法陣が出現する。
第一騎士団長が止めようとしたが、もう遅い。
「『永遠に、等しき友とならん。魂、朽ち果てる時まで!!』」
魔法陣が虹色に輝き、お互いの胸を鎖で繋いだ。
『我が名はルクセイラ・×××××。契約を承認する。』
鎖はすぐに見えなくなったが、お互いの胸元に盟約の印が刻まれた。
盟約に使われるのは、私の真名。
盟約相手にしか、聞き取れないようになっている。
『ルクスって呼んでね!よろしく、ヴィル!』
私は、語尾にハートがつきそうなほど、ルンルンな気分だった。
私の喜びに合わせて、自慢の尻尾もフリフリと揺れる。
あぁ、今日はいい気分!
ひとしきり盟約の嬉しさを堪能したから、人型に戻ることにした。
大きい竜の姿だとやっぱり不便だし、竜は珍しいから人型の方が何かと面倒がなくていいだろう。
改めて人型に戻り、口を開こうとすると、騎士が一斉に後ろを向いた。
私はキョトンと目を瞬かせると、あっと思い出した。
人型になった時、服着てなかったんだった……
「締まらないなぁ」と思いつつ、慌てて服を着るのだった。




