32.
やっぱりかぁ〜
三番が正解だったね。
今のこの戦力じゃ、死ぬだろうね。
ドンッ!!!
また、音と共に、地面が揺れる。
「総団長!第五小隊からも救援信号がっ!」
「鳥を飛ばせっ!第一、第二小隊は第三小隊の援護をしながら撤退!第四小隊は、第五小隊を援護しながら撤退をっ!」
「はっ!」
「全員、先頭準備っ!!」
「「「「はっ!!」」」」
先程までの静けさが、嘘のように変わった。
魔物討伐は始まったばかりなので、まだどの小隊もさほど遠く離れていない。
走って撤退しているだろうから、ここに到着するのも時間の問題だ。
今のところ、生命反応が弱っているものはいない。
怪我をしていても、致命傷の者はまだいないだろう。
それも時間の問題だろうけど。
あぁ、見えてきた。
「総団長!」
森から駆け込んできた騎士が総団長を呼ぶ。
「何があった!?」
「化獣です!魔物に紛れて、多数の化獣が現れました!」
「こんなところに化獣だと!?」
森から、次々と撤退してきた騎士が駆け込んでくる。
怪我人は第四騎士団に任せて、戦えるものは体勢を立て直して正面に展開した。
「瘴気に触れないよう、気をつけろ!」
ただの怪我とは違い、基準値以上の瘴気に触れれば死んでしまう。
例え少量だとしても、徐々に侵されていく。
そして瘴気には、治療法がない。
瘴気による苦痛を和らげることはできても、瘴気の侵攻を止めることはできないのだ。
腕や足であれば、切断するのが一番の治療法だ。
魔物と化獣の区別は簡単だ。
一目見れば、瘴気に侵されているとわかる。
だが、両方入り混じっている場合、区別しながら戦うのは不可能に近い。
よって、瘴気に侵される者が増えると言うことだ。
私は第四騎士団と共に、後方で怪我人の治療にあたるように指示された。
後方にいるからわかる。
完全に押されている。
前線が決壊するのも、時間の問題だ。
総団長もそれを判断したのか、王都に援軍要請を出していた。
援軍が来るのは、早くて二時間後。
ただ、援軍が来るまで、ここがもつかどうか。
怒号、悲鳴、獣の唸り声、金属の音……
指示の声が届くのかわからないほど、音が溢れている。
総団長が最前線で戦っているから、かろうじて士気が落ちていない。
第一騎士団が総団長のすぐ側で戦っているから、すぐにどうこうならないだろうが、総団長が崩れれば、もう終わりだ。
《ヤケに粘るなぁニンゲン。》
ゾワリ
空気が変わった。
その声は、聞くものを恐怖に貶める声だった。
言葉を理解できるのに、聞いた途端、深い闇に飲み込まれそうな、耳にねっとりと絡みつく言葉だった。
木々の間から姿を見せたのは、二足歩行の、ツノの生えたヤギみたいな姿。
瘴気を全身に纏うそれは、圧倒的な恐怖を与えた。




