挿話2
長く続くと思われていた戦争は、極短期間で終結した。
竜の乱入により、大打撃を受けたプリオーネ帝国は、全戦力を自国へ帰還させた。
プリオーネ帝国との戦争が下火となり、第十騎士団を残して、私は王都の騎士団を連れて、王都に帰還した。
今回の戦争の報告と合わせて、竜についても報告も上げると、国の上層部は騒然となった。
当然だろう。
ここ数百年ほど竜の目撃情報はなかったのに、ここにきて生きている竜が確認されたのだ。
全てを威圧する壮大な姿と、圧倒的な破壊力。
竜の力を間近で経験するなんて、誰も想像していなかった。
今回はたまたま竜の被害がなかったものの、あの力が我が国に向けられたらと思うと恐ろしい限りだ。
研究者や専門家たちは、国の要請で、国内の竜に関する資料を掘り起こしているところだろう。
伝説の竜が姿を現した以上、最悪を想定して動かなければならない。
戦争の後処理だけでなく、竜の調査の仕事も増えてしまって、頭が痛い。
そんな忙しい中で、敵国の間者に内部文書を取られるという事件が起きた。
確実に、我が国を裏切っている内通者がいるはずだ。
その調査の中で、奇妙な女と会った。
少し前に、職業斡旋所から紹介された下働きの女だ。
名は確か……ルクセイラ、と言ったか。
一般的に整った顔立ちをしており、その目が印象的だった。
また、騎士団総団長である私、第一騎士団長、第二騎士団長、その他数名の騎士に囲まれているというのに、全く怯える様子がない。
自然体で、だからこそ違和感を感じた。
だが彼女のおかげで、内通者を捕まえることができた。
その点は評価したいと思う。
「総団長。今回の捜査方法、画期的なものでしたね。できれば犯人捜査方法として確立してはどうでしょう?」
そう尋ねてくるのは、第一騎士団長カーライル・リンクだ。
カーライルは母方の従兄弟で、王族を守護する第一騎士団長なので、よく話をする気やすい間柄だ。
「ああ。それは私も思っていた。あんな方法があるなんてな。」
「驚きましたね。」
「彼女、ルクセイラだったか?どう思った?」
「そうですね……調査では、真面目で勤勉、人格も問題なく、仕事の手際もいい。私個人の印象として、あまりに動じなさすぎるというか……冷静すぎる。そして、頭の回転が速い。後は、自衛できる力があればなおよし、ですね。」
「例の件か。彼女を候補に入れるつもりか?」
「私はいいと思いますけどね。反対ですか?」
「いや、検討しておこう。」
「了解しました。」




