20.
「私は、内部文書が何処にあるか知りません。騎士団本部には入ったことがありませんし、寮の最上階の上官の部屋は、一度だけ掃除に入っただけです。それ以降、その階には上がっていません。」
「総団長、私の調べでも、彼女は下働きとしての枠を越えていません。他の下働きからも、怪しい行動等は話に出てきませんでした。」
「私は確かに見ましたわ!使われていない部屋を出入りする彼女を!」
使われていない部屋?
それなら、アレで証明できるかも?
試してみよう。
それで駄目なら、最終的に魔法を使おう。
「あの……私ではないことを証明できるかもしれません。」
「ほう?どうやって?」
「先程、彼女が言った部屋に行きたいです。それから、片栗粉と綿を使わせてください。」
「いいだろう。私が案内しよう。」
総団長の指示で、騎士の一人が必要なものを持って来てくれるみたいだ。
その他の全員で、例の部屋に向かうことになった。
例の部屋は、騎士団本部の一階、日当たりの悪い場所にあった。
「確認しますが、取引はこの部屋で間違い無いのですよね?」
「ああ。間者もここで、女と会ったと言っている。」
「わかりました。では、始めます。」
騎士が持ってきてくれた、片栗粉と綿を受け取る。
片栗粉に綿をポンポンと当てて、粉をつける。
そしてそれを扉の取手に、優しく撫でるように粉を乗せる。
その後は、余分な粉を綿で払っていく。
すると、そこには指の模様、指紋が浮かび上がってきた。
これは前世でよく知っている、犯人探しの定番だ。
まさかこんなところで使うとは思わなかったけど。
「ほう。」
「これは……」
「指には指紋というものがあります。指紋は一つとして同じものはありません。ですから、この取手の指紋と私の指紋を比べていただければ、私が取手を触っていない、つまりこの部屋に入ったことがないとの証明になります。」
騎士たちがかわるがわる確認すると、皆んな納得の表情を浮かべていく。
「これは犯罪捜査に有用ですね。」
「ああ、是非とも使っていきたい。」
「君が内通者ではないことを、私が証人となろう。」
「ありがとうございます!」
総団長が言い切った以上、私を犯人扱いする人はいないはず……
「待ってください!そんなわけのわからない方法で、煙に巻こうとしているのでは!?」
……いたわ、ここに。
彼女はどうしても私を犯人に仕立て上げたいみたい。
でもそれって、もしかして……
「これから下働きや侍女を調査するとして、一人ここにいらっしゃるので、まず彼女から調査するのはどうでしょう?」
「はあ!?ふざけないで!そんな、わけのわからないことをするわけないでしょう!?」
「ただ見比べるだけだ。時間は取らせない。」
「ちょっ……ちょっと!」
「ああ、君はもう戻っていい。」
「わかりました。失礼します。」
喚く声を聞きながら、私はとっとと退散するのだった。




