挿話1
それは突然始まった。
プリオーネ帝国から、宣戦布告が来たのだ。
我がイーゼル王国は、緑豊かな土地と、多種多様な鉱山を持つ国だが、国としては小国よりの中堅国に分類される。
北側はプリオーネ帝国と接し、東側はマーヤン王国、ナフタン王国と接している。
西側から南側に向かって、危険度の高い魔物の生息するブラックフォレストが広がっている。
ブラックフォレストは危険な場所ではあるが、その代わり貴重な薬草や素材が入手できる場所でもある。
これらの理由から、資源が豊富なイーゼル王国は、接地している各国から常に狙われているのである。
過去、何度か宣戦布告をされており、休戦したとしても、ずっと小競り合いが続いていた。
今回は、大国であるプリオーネ帝国から宣戦布告がされ、急いで戦力を集めて北砦にやってきた。
今回はいつになく強硬な態度だったので、イーゼル王国の上層部もかなり警戒している。
相手がプリオーネ帝国だからと言って、負けるわけにはいかない。
私たちの後ろには、守るべき民たちがいるのだ。
私はこの国の王族として、民を守らなければならない。
それが王族として生まれた、私の使命だ。
「総団長!敵が動きました!」
「第五騎士団は、遠距離から魔法攻撃を開始。抜けてきた兵士は、右翼は第十騎士団の第一部隊から第十五部隊、左翼はその他の第十騎士団と第九騎士団が抑えろ。魔法攻撃が終われば、第五騎士団と第六騎士団が中央を抑えろ。」
「「「はっ!!!」」」
プリオーネ帝国の戦力は推定五万、こちらの戦力は約三万。
数の差はあるが、我が国の騎士なら防げるだろう。
これ以上、敵の応援が増えないことを願う。
作戦本部に次から次へと伝令が駆け込み、刻一刻と戦況を知らせてくる。
それと同時に、医療部隊である第四騎士団に、怪我人が運ばれてきている。
どれだけ経験しても、戦争とは嫌なものだ。
「総団長!」
「どうした!?」
「ワイバーンです!敵はワイバーンを使役し、対空権を取られました!!地上からは、フォレストウルフと思われる個体が多数出現!現場は混乱している模様!!」
「ワイバーン!?それに、フォレストウルフだと!?プリオーネ帝国は、魔物を操れるようになったのか!?」
どうする……
どうすればいい……
魔法攻撃は、使い果たした。
ワイバーンには攻撃が届かない。
「総団長!!」
「今度は何だ!?」
「そ、空を見てください!!竜です!竜が現れました!」
竜?
そんな馬鹿な……
天幕を出て、雲一つない快晴の空を見上げた。
日差しを遮り、何かが地上に影を作る。
グォォォォォーーーーーー!!!!
(いただきまーーす!!!!)
その咆哮に、心が身体が震えた。
全身に震えが走り、指一本たりとも動かせない。
心が怯えて、萎縮してしまっている。
それは、私だけではなかった。
戦争中であるにもかかわらず、全ての人間が、魔物が動きを止めて、息を潜める。
一拍後、フォレストウルフは気を失って倒れ、ワイバーンは人間の制御を離れて散り散りに逃げだした。
姿を現した白銀の竜が、ワイバーンに襲いかかった。
私たちはその光景を、ただ立って見ていることしかできなかった。
戦場を舞う白銀の竜は、天からの使いのようで、見惚れるほど美しかった。




