10.
それは、遥か昔のこと。
ブロワマール神は、もともと神によって、人間から神に引き立てられた。
数千年と長い期間、実直に神の役割をこなしていた彼は、ついに、世界を創る権限を持つ上級神になったのだった。
様々な神について世界を見てきた彼は、意気揚々と世界を創り始めた。
様々な失敗を元に、失敗のない完璧な、理想の世界を創ろうとしたのだ。
けれど彼は気がついていなかった。
どれだけ完璧に創ろうと、失敗のない世界などできないと言うことに。
世界で生きる生き物たちは、生まれた瞬間から神の手を離れる。
彼らの行く道を、感情を、全て完璧に制御するなど不可能なのだから。
途中までは彼の思った通りに進んでいた。
けれど途中から、歪みが生じるようになってきた。
一つの歪みを取り除いても、またどこかで歪みが生まれる。
その繰り返しの中で、彼は思った。
負の感情があるから、歪みが生まれるのだ。
醜い感情がなければ、皆んな幸せになれるはずだと。
手始めに、自分の闇を切り離すことにした。
闇を切り離すことで、自分は完璧になれたと思った。
次に、自分の闇に、世界の歪みを捨てることにしたのだ。
そうして、まとめて捨てようと思った。
切り離した側は、なくなって良かったと思うだろう。
けれど、切り離された側は、どう思うのか。
切り離された闇も歪みも、神の、人の、感情の一部だ。
何故捨てられなければならない?
元を正せば、感情を持つ生き物として生み出した、神のせいではないか。
なぜ、なぜ、なぜ!!!
そうして煮詰まった歪みは、闇を飲み込み、世界や神を蝕む瘴気となったのだ。
神が気づいたときには、全て遅かった。
後戻りできないほどに穢れた神は、完全に瘴気に飲み込まれる前に、神の核を砕き、世界にばら撒いた。
神の核の欠片は、竜という生き物となり、神の代わりに世界を管理する存在となったのだ。
それが始まりの、光竜と影竜だった。
神を飲み込んだ瘴気は人格を持ち、やがて堕神と呼ばれるようになった。
そうして、竜族側と堕神側の、終わりの見えない戦いが始まったのだ。
堕神は勢力拡大のために、世界に瘴気を撒いた。
瘴気に当てられた生き物は、化獣と呼ばれる恐ろしい化け物になり、生きているものを襲うようになった。
また瘴気は、生き物の負の感情を増幅させ、負の感情もまた、瘴気を増加させるようになった。
完璧を求めた世界は、争いの絶えない混沌の世界へと変わってしまったのだった。
これが、昔々の始まりの物語。
無自覚で傲慢な神が生み出した、罪の証。




