9.
島の中心地に、目的の集落があった。
中央に大きな湖と大木が立っており、その周辺が集落となっている。
集落に降り立った私たちは、すぐに人型になった。
すると、集落の人型竜たちにすぐに囲まれて、各々知り合いと話し始める。
が、私の周りには例の如く、一定の空間が空いていた。
実家の集落の竜たちは大分慣れて話してくれるようになったけど、やっぱり初見はそうなるのか。
初めて来た兄さんでさえ、同世代に囲まれているのに。
ちょっぴりブルーな気持ちになっていると、人の壁を縫って、綺麗なスノーホワイト色の髪をした壮年の男性がやって来た。
「初めまして、新たな光竜よ。私はヘブライラ、君の前に生まれた光竜だ。よろしく。」
「初めまして、ルクセイラと言います。会えて嬉しいです。」
「礼儀正しいお嬢さんだ。それに力も強い。」
「ありがとうございます。」
「君と話したいと思うんだが、良いかい?」
「ぜひ!父さん、母さん、ヘブライラさんと話してきてもいい?」
「ああ、もちろん。」
「失礼のないようにね。」
「はーい。」
「では、行こう。」
父さんと母さんに許可をもらった後、ヘブライラさんの後ろに続いた。
湖の側まで来ると、近くにあったベンチに並んで座った。
私たちの移動と同時に、集まっていた竜たちもそれぞれに分かれて歩いて行った。
同年代に連れられている兄さんは、心配そうにこちらをチラチラと見ているが、皆んなに引っ張られて行った。
「君の兄は心配症みたいだね。」
「私の方が強くても、すごく心配されるんです。」
「兄というのは、そんなものだよ。」
ふふっと笑うヘブライラさんは、男性なのに中性的な美しさを持っている。
今まで見た竜の中でいつばん美しい竜だ。
きっと竜の姿も、人型と同様に美しいのだろう。
私たちはしばらく無言で、生活の営みを見ていた。
チラリとヘブライラさんを見ると、慈しみの眼差しで竜たちを見守っていた。
まるで全ての竜の父親のような、可愛い我が子を見つめるような眼差しだった。
確かヘブライラさんは、約千五百年前に生まれていたはず。
つまり約千五百歳。
今の私では想像がつかないほど、長い時を生きてきたのだろう。
その中できっと、たくさんの生と死を目の当たりにしてきたはずだ。
それは一体、どんな気持ちだろうか。
悲しみか、空虚か、それとも……?
「少し、昔話をしようか。」
ヘブライラさんの声で、ハッと意識を戻す。
「昔々の神がまだ存在していた時の話を。」
「神が存在していた時の話?」
「そう。全ては神の、無自覚の傲慢さから始まったのだ。」
ヘブライラさんは、淡々と静かに話を始めた。




