0.
目を覚ますと、真っ白な空間にいた。
何故自分がここにいるのかわからない。
私は……誰だ?
何もない真っ白な空間を割いて出てきたのは、これまた真っ白な服を着た人。
人、なのだろうか?
目の前にいるのに、存在感が全くない。
違和感がすごい。
「××さん。あなたは死にました。ご愁傷様です。」
……え?
死んだ?
私が?
その人が告げた突然の事実に、思考が停止した。
「二月三日、午後八時半。あなたはスリップした車に撥ねられて即死でした。」
あぁ、そうだ。
思い出した。
とても寒い日で、雪が降っていた。
地面が凍り、仕事帰りの道を慎重に歩いていたら、後ろから悲鳴とクラクションが聞こえたんだった。
何かがぶつかって、冷たくて痛かったのを覚えている。
そうか。
あの時、私は死んだのか。
思い返せば、なんの面白みもない無駄な人生だった。
生きるためにはお金が必要で、嫌な仕事でもこなさないといけなかった。
段々と、どうして仕事をしているのかわからなくなっていた。
生きるために仕事をしているのか、仕事をするために生きているのか。
空虚な日常を繰り返すばかりだった。
何の意味も見出せず、死んだのか。
「それで、私はどうなるんですか?」
「あなたには異世界に転生してもらいます。」
「……は??」
まさか小説みたいなことが、本当にあるなんて思っていなかった。
「地球はもう、生命の受け入れができないくらい満員なんですよ。なので少し前から、異世界に魂を送ることになったんです。まぁ、異世界に行ってもらうわけなんで、何かしたいことを言ってください。叶えられる範囲で、一つだけなら聞きますよ。」
確かに地球はもう人口がすごくて、環境破壊になっているから仕方ない。
したいこと、かぁ……
「空を、飛びたい。自由に、空を飛んでみたい。」
深く考える前に、言葉がこぼれ落ちた。
疲れている時、ふと空を見上げると、翼を広げた鳥を見かけた。
この大空を自由に飛んでいる姿が、すごく羨ましく思っていた。
異世界だったら、空を飛ぶこともできるのではないだろうか。
「可能ですよ。では、空を飛べるようにしておきます。後はこちらで決めておきますので。では、いってらっしゃいませ。良い人生を。」
その言葉を最後に、ふっと意識が途切れた。
――――――
「空を飛ぶ……ですか。」
転生のルール上、同じ人間には転生できないことになっている。
空を飛ぶ生き物で真っ先に思いつくのは鳥だが、それでは面白くない。
人生は面白くなくては。
あぁ、そうだ。
アレにしよう。
ちょうどあの世界から問題が上がっていたことだし、ついでに解決してもらえばいい。
少しのスパイスは、人生に必要だろう。
では、いってらっしゃい。
異世界ブロワマールへ。




