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(7)新しいわの国

 ヒタ国の兵達は勝利に歓声を上げ、ヤマタイ兵の追跡から戻ったわ人の男達と共に、ヒタ国の人々が待つ集落に戻った。ヒタ国の人々は喜びに沸いた。三百人のわ人の男達は、一緒にヤマタイと戦った仲間としてヒタ国の人々に大歓迎され、昔からの友人の様な扱いとなった。ヒタ国の人々はわ人の男たちにたくさんの食事と酒をふるまった。女も子供も含めた大勢の村人が繰り出し、まるで祭のように四本の大木で組まれたやぐらを中心に太鼓をたたいて踊りはじめた。


 ヒタ国の男達とわ人の男達はひとしきり、戦勝の喜びを分かち合った。

「ヤマタイの奴らを、追い返してやったぞ!」

「二度とヒタ国に近づこうとは思わないだろうな」

「ヤマタイの奴らを追い出して見せる!」

 わ人の男達はいまからヤマタイに攻め込んで、人質になっているわの村の人々を取り戻したいと、ヒタ国の長に申し出た。しかしヒタ国の長はこう諭した。

「わの国の人々の気持ちはわかる。だがすぐにヤマタイと戦うよりも、わの国の南、ヒタ国の西の土地に新しいわの国を作り、ヤマタイから逃れて来るわの村の人々を助け、守るというのはどうだろうか?むろん、ヒタ国の兵も同行して力を貸す」

わ人の男達は、ヒタ国の長の言葉に感謝し、その提案を喜んで受け入れる事にした。


 数日後、今度は三百人のわの国の男達と応援のヒタ国の兵士五百人が、ヒタ国の人々に見送られて、新しいわの国をつくる場所に向けて出発した。わの国の男達はヤマタイの兵士達が残した弓矢と盾を持って兵士らしくなっている。マサ達もその一行に加わっている。

 二日後、弓矢づくりの村へ立ち寄った一行は村の長ナロと再会し、これまでの戦いの様子とわの国を作るために、わの国の南、ヒタ国の西の土地に向かう事を伝えた。弓矢づくりの村の長はひとしきり喜んで聞いていたが、注意すべきことがあると言い出した。

「ヤマタイの国は今回は負けたが、悪辣な知恵があり、まだこちらの数倍の兵を持っている。数の多い敵に対して、目立つ行軍をするのは上策ではない。まずはわ人達がヤマタイに見つからないように密かにその土地に向かい、山道や峠をおさえて砦を作り、ヤマタイへの備えを固め、その後にヤマタイの国に囚われているわ人たちを助け出す。ヒタ国は、ヤマタイがこれからどう動くか見ているべきだ。ヤマタイが攻めてくる事があれば、その時に駆けつけて戦うべきだ。ヤマタイは海から攻めて来る事が多い。ヒタ国の海岸の守りも重要だ。海岸に石塁をたくさん作って、海からくるヤマタイの兵に備えるべきだ」

 わの国の男達もヒタ国の兵士達も、弓矢づくりの村の長ナロその言葉に納得するほかなかった。


 村の長ナロの意見に従い、ヒタ国の五百人の兵士達は何かあればわ人達を助けるに来る事を約束しヒタ国へと帰還していく。ヒタ国の兵士達を見送ったわの国の兵士達は弓矢づくりの村の長ナロと弟子三人と共に、目立たないような山道を抜けてに目的の土地に向かった。


 翌日わの国の男達は新しいわの国の土地に到着した。そこは西に泥だらけの入り江の海が広がる土地で、住んでいる人はなく、鹿や猪がやたらと多い土地だった。わの国の兵士達はヤマタイの兵から奪った大きな弓で、獲物を楽々と仕留める事ができた。

 わの国の兵士達はヤマタイの国との戦いに備えるために、弓矢づくりの村の長と相談し、まずヤマタイの国との境の北の峠に砦をつくる事にした。物見櫓と狼煙台を兼ねた砦に五十人が立て籠もり、ヤマタイの国の兵が攻めて来るのに備える。よじ登ってくる敵に槍を投げ石を落とす仕掛けをする。梯子はしごを架けてくる場合に備え、先が二股になった長い棒を下から突き出す工夫もする。ひと月をかけ北の砦が完成し、出来る限りの備えをした後、わの国の兵士達はヤマタイの国にいるわ人達に「新しいわの国」の知らせを送った。


 ヤマタイに捉えられているわ人達は「新しいわの国」の知らせを受け取り、連絡を取り合ってヤマタイから逃げ出し、「新しいわの国」に到着しはじめた。ひと月と経たないうちに数百人が新しいわの国の地に集まった。西の入り崎にいた拝み人たちも新しいわの国に逃れて来た。わの国の人達は家族・親類・縁者との再会に喜び涙を流した。こうしてヤマタイの国の南に新しいわの国がつくられ、ヒタ国との同盟の下、ヤマタイからの侵攻に備える事になった。新しい生活を始める事になったわの国の人々は、その地がもとのわの国よりも南向きの土地が多く温暖であることに喜んだ。山の幸も海の幸も、もとのわの国と同じくらい多かった。


 マサは新しいわの国の長に推挙された。何より、マサが弓矢づくりの長と共にヒタ国に向かい、ヒタ国と協力してヤマタイの兵を打ち破ったことが、わの国の人々の支持を集めた。共に行動したヤカとハラも、マサが新しいわの国の長になった事を喜んだ。ヤカとハラの妻たちはマサの亡くなった妻イミの子チミも含めた四人の子供たちを兄弟のように育てた。四人の子供たちは村の子供たちと元気に走り回る年齢となっていた。

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