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(4)ヤマタイ

 それから三月が過ぎた頃、わの村の沖に三十隻以上のそと人の舟が現れた。その舟には、そと人の女や子供、そして見た事もない大きな鹿の様な動物も乗っていた。そと人の舟はその後も西の海を行き来し、そと人達の数は三千を超え、兵士達とその家族がわの村に定住した。わ人達は奴隷として扱われるようになった。


 そと人の兵士達は「ウマ」という大きな角のない鹿の様な動物に乗って、近隣の村を見まわり、わ人たちを従わせ、武器と貢物を差し出させた。そして入り崎の拝み人たちを捕らえ、わ人達に「そと人達は神の使いだ。これからはそと人達の命令に従え」と言わせた。

 そと人達はわ人に命じて稲を植え、高い床の家を建てさせ、秋に収穫したコメをその建物に保存することを始めた。そして毎月のように、そと人達の舟がわ人達が差し出した布、毛皮、琥珀、貝の装飾品などの貢ぎ物を積み込み、西に向けて出航して行った。


 一年が過ぎ、二年が過ぎ、三年が過ぎた。そと人達の舟は何度もわの村と海の向こうを往復し、貢ぎ物を海の向こうへ送り、海の向こうからそと人を運んできた。そと人達の数は五千を超えた。

 王となったそと人が現れ、金の冠と鎧を着て、大きな建物の前に近隣の村の長たちを集めて、土下座を強要するようになった。そと人達は近隣の村々から女を集め、王の世話をする下女とした。


 そと人の王は、さらに遠くの村へ言葉を伝えた。

「ヤマタイの王に従え。貢ぎ物を差し出せ。そうしない村は戦いによって、従わせる」

 その村から、良い返事がない時には、近隣のわの村の男たちを駆り集め、槍、弓矢を持たせて、遠くの村に向かわせた。わ村の男たちは、後ろから監視するそと人達の兵に追い立てられるように、遠くの村へ行軍していく。わ人の村が、他のわ人の村を襲うとは、これまで聞いたことがない事だった。わ人たちは遠くの村のわ人たちに、事情を話し、

「そと人達に、女たちを人質に取られている。これは仕方なしにやっている」

と知らせ、戦わずに降参してもらった。そして、それらの遠くの村もヤマタイの王に従い、貢ぎ物と女たちを人質に差し出す事になった。


 ある日、マサ達の集落にそと人の兵士が現れ、刀を突きつけてマサの妻イミとヤカの妻イリを、下女として差し出すように命じた。マサとヤカは海から帰ってきて、妻たちがヤマタイの兵士たちに連れ去られたことを知った。マサとヤカは、すぐにそと人から妻を奪い返す事を決めた。ふたりは山に隠していた石槍と石刀を手に取った。マサとヤカは物音を立てずにわの村へ向かい、妻たちがいる家を捜し出した。そして、二人のそと人の見張りを石槍と石刀で倒し、中へ踏み込んだ。家の中にはマサとヤカの妻と隣村のヒキという女がいた。マサとヤカは妻たちを連れ出し、倒れている見張りのそと人の大きな弓を奪い、村の外へと走りだした。


 二人の見張りが倒れた叫び声を聞いて、近くの家々からそと人の兵が刀を持って追ってきた。走ることにかけては、そと人達よりずっと速く、暗闇でもこのあたりの道を知っている五人は追っ手を引き離して山道にさしかかり、落とし穴を避けてさらに走る。後ろで、ドサッと言う音がして、追っ手の一人が仕掛けた落とし穴に落ち、叫び声をあげた。


 マサ達五人は一人も欠けることなく山奥の安全な場所へと逃げ込んだ。マサの妻イミとヤカの妻イリは、

「そと人が、おまえ達の夫はおまえ達をヤマタイに差し出した。と言ったが、私たちは信

じなかった」と言う。

ヒキは「私の夫は助けに来なかった」と怒っている。

そこへヒキの夫のハラが駆けつけてきた。隣の村にヤマタイの兵たちが来て、ヒキが逃げた。ヒキの夫はどこにいる」と呼ばわったらしい。そこで、ヒキの夫のハラは山に逃げてきたという。ヒキの怒りは大変なもので「こんな意気地なしの夫は離縁だ」と大声を出す。しばらくヒキの怒りは続いたが、マサが「これからどうするか相談しよう」と言い出してその騒ぎを静めた。

 村に帰ればそと人達に見つかる。家族に迷惑がかかる。家族を一緒に連れていくにしても、危険な目に合わせる事になる。六人は自分達だけでわの村を去ることにした。南の山を越えると弓矢づくりの村がある。その村の長は、ナロという良い弓を作る名人だという。六人は南の山を越えたその村に行くことにした。


 六人の向かう先の夜空には「道標(みちしるべ)の星」といわれる南の中天に輝く大きな星が、色を変えるようにキラキラと輝いていた。

 マサ達六人は山道を歩き続け、翌日の夕刻に弓矢づくりの村に入った。マサ達は村の長ナロを訪ね、この村に来た事情を話し、倒したそと人から奪った弓矢を見せた。村の長ナロは珍しそうにそと人の大きな弓を見て驚いているようだった。

「この村にも、ヤマタイの使いは来ているが、そと人達の弓矢を近くで見た事はない。はじめて近くで見るが、この弓はマキの木で作って桜の木の皮できつく巻いてある。弦も違う」弓矢づくりの長は、しばらくその弓を借りたいという。その間、六人はこの弓矢づくりの村に滞在する事になった。


 弓矢づくりの村の人々はマサ達六人を歓迎してくれた。マサ達が弓矢づくりの村の人々に、わの村で起こった出来事を話すと、人々は眉をひそめた。

「それは大変だ。どうにかしないといけない。」

「このままでは、わ人達がそと人達の言いなりになってしまう。」

「しかし、ヤマタイのそと人達は三千人を超えている。わ人達は近隣の村を合わせても千人、しかも武器が劣っている」


 弓矢づくりの村の男たちはこういった。

「ここから東の地に行くとわ人と近しいヒタ族の国、もっと南の地にはクマ族やヒムカ族の国がある。人数はそれぞれ数千人はいるはずだ。ヒタ族とは弓矢と干物を交換している。これらの国の人達に、そと人達の事を伝え、弓矢や盾や金属の刀の話を伝えたら、わの村の人達と協力して、そと人達を海へ追い返すことができるかもしれない。これはこの弓矢づくりの村の為でもある」

弓矢づくりの村の長は、

「わしもこの人達と一緒にヒタ族の国へ行こう。行って、そと人達の弓矢や盾や金属の刀の話を知らせてこよう!」と言ってくれた。


 そして数日後、旅の準備を終えた弓矢づくりの村の長ナロは弟子五人を連れ、マサ達六人とともに、東の地にあるヒタ族の国へと出立した。

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