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(3)わの村の戦い

 そして夏が過ぎ、秋になり西風の吹くある日、わの村の沖に再びそと人達の舟が現れた。今度は二十艘を超える大きな舟が、わの村の浜に漕ぎ寄せてきた。乗っている男たちは、鎧を着て盾と弓矢と槍、刀を煌めかせている。


 これを見たわの村の男たちは、すぐに女子供を山へ逃がし、わの村の長のワトを先頭に年長の男達三十人が、弓矢と槍を持って、浜を見下ろす丘の上の石塁に集まった。

 三百を超えるそと人の兵士達が、浜に上がってきて盾を構えた。そして大きな弓を構えて、石塁に向かって矢を一斉に放った。そと人達の矢は石塁を高く飛び越え、雨のよう降り注いだ。石塁の中の男たちは、上からの矢に頭や肩や腕を射抜かれ、半数以上が倒れた。わ人が放つ矢はそと人達には届かなかった。

 そと人の兵士達は密集隊形を作り、エイ、エイと声を上げて石塁に近づいてくる。そと人の数人が、石塁近くの落とし穴に落ちたが、そと人の兵士たちは構うことなく石塁の中に侵入してくる。

 マサの父親のハサは矢傷を負いながら、近づいてくるそと人の兵士に突き槍を投げた。先頭のそと人が突き槍に射抜かれて倒れる。ハサは倒れるまで突き槍を投げ続けた。村の長のワトを含めた男達が戦いの中で倒れたが、逃げ延びた数人の男たちは、女子供が逃げ込んだ山に向かい、戦いの様子を知らせた。女子供は身内の不幸を嘆きながら、さらに山の奥へと向かう。


 わの村の男たちは山道を走り続けて隣村にたどり着き、大勢のそと人が来てわの村を襲った事を知らせた。その日のうちに村々に知らせが行き、百五十人の弓矢と槍を持った男たちがわの村に集まった。男たちは相談して、三百人はいると思われるそと人の兵を襲う準備を始めた。すぐに攻めかかるべきだという意見もあったが、相手は人数が多い。山道に誘い込んで、待ち伏せて仕留めるべきだという意見が多かった。そこで、そと人のいる浜辺から山へ向かう道に弓矢と槍を持った男たちが待ち構え、落とし穴や罠をいくつも仕掛ける事にした。


 そと人達の大きな弓と戦うために、木の盾を用意する事になった。盾などは、鹿や猪を狩るときには不要で、わ人達は作った事がない。しかし、そと人の放つ矢を防ぐには、木の盾が必要だ。近隣の村へ使いを走らせ、木の盾を作る事になった。家の扉、敷板等の使えそうな板をかき集め、いくつもの縄でくくって取っ手をつける。わ人達がそんな準備に走り回っているうちに、その日は暮れていった。


 足の速いマサがわの村へ物見に行く事になった。マサは山を回り込み、西の入り崎の崖からわの村のある浜を見下ろした。わの村の集落にはそと人の姿はなく、石塁の近くにわ村の男たちの遺体が残されていた。沖の鯛島付近にそと人の舟が見える。マサは山に戻りそのようすを伝えた。それを聞いたわ人達はわ村に戻り、そと人達に殺された遺体を運び出し、わ村が見える山の中に埋葬した。


 翌日の朝になった。わ人達の中で、木の盾で矢を防ぐことができれば、石塁でそと人の兵士を追い返せるという意見が出た。相談の結果、まず石塁で待ち構えて戦い、機を見て山に逃げる様子を見せて、追いかけてくるそと人を山道へ誘い込み、落とし穴や弓矢で倒そうという事になった。

 わの村を見下ろす丘の上の石塁に、急ごしらえの木の盾を持った五十人のわ人達が多くの突き槍を持ってそと人達を待ち構える。石塁の後ろの森の中では、弓矢の得意な者たち百人が、森に近づくそと人達を狙う。


 昼近くになり前日の三十艘を超えるそと人の舟が現れ、わの村へ向かって押し寄せてきた。五百人のそと人の兵士達が続々と浜に上がってきて盾を構え、石塁に遠矢を放ってきた。わ人達は、降りそそぐ矢を木の板の盾で防ぐ。

 五百人のそと人達が横長の隊形を作り、エイ、エイと声を上げて、盾の後ろから遠矢を放ちながら、石塁を取り囲むように近づいてくる。わ人達は、石塁を囲まれ森に退く機会を失った。

 そと人達は、わ人の矢や投げ槍を盾で跳ね返し、四方から石塁の中に突入してきた。わ人は突き槍で戦うが、そと人達は、わ人の槍を金属で出来た刀で切り払い、切り付けてくる。わ人のほとんどが、首を切られたり、腕を切られたりして倒れた。そと人達も数人が、わ人の槍に突かれて倒れた。


 そと人達は倒れたわ人達にとどめを刺し、戦う事をやめた十人のわ人を縄でくくって捕虜とした。そして、鯛島から連れてきた島人に、そと人の言葉をわ人の言葉に変えさせてこう言わせた。

「このそと人達は、しばらくここにとどまる。これは海が荒れているので仕方ない。お前たちがそと人に従えば、残りの村人は殺さない。村人に食べ物を持ってくるように伝えよと言っている」

そして一人のわ人の若者の縄を外して、鯛島から連れてきた島人にこう告げさせた。

「おまえが村に行って、そと人の言葉を伝えよ。伝えよ。日が傾くまでに食べ物を持って帰ってこなければ、捕らえた仲間を一人づつ殺す」


 年少の者は、わ人達のいる山へ走り、これを伝えた。山に入ってくるそと人の兵士を迎え撃とうとしていたわ人達は、しかたなくそと人達のいう通りに食べ物を届ける事にした。その日から毎日、わの村の人達はそと人達へ食べ物や鍋、薪などを届けた。その後そと人達は、毛皮や布を持ってくるように言い出した。


 ひと月が過ぎても、そと人達はわの村から出て行かなかった。ふた月が過ぎても、そと人達が人質をとってわの村に居座る状況は変わらなかった。

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