6 素材の売却とスキルの一端
素材の整理をしていた俺は、あることに気づいた。
「……ゴーレムの素材、多すぎだな」
この前、変異体を倒したときに一緒に倒した大量のゴーレム。
その素材が、マジックバッグの中をかなり圧迫していた。
変異体が生み出したものだからか、通常のゴーレムよりドロップ率は低かった。
それでも倒した数が数だ。結果として、手元にはかなりの量が残っている。
「こんなには使わないな」
必要な分だけ残して、あとは売却してしまおう。
そう考えた俺は、ダンジョン近くの素材買取店へと向かった。
「いらっしゃいませ」
「素材の売却をしたい。」
店に入り受付まで行くと、さっそく店員にそう伝える。
素材を売却するのはいつもこの曜日のこの時間とルーティン化しているため、この店員とも顔見知りのようなものになっている。
「ではこちらのスペースへ...今日はどのような素材をお売りしていただけるので?」
「41階層のゴーレムの素材だな。」
素材を出すスペースへ案内され、そこにあふれんばかりのゴーレムのドロップアイテムを出していく。魔石、鉱石、岩製の防具や武器―ハンマーなど...店員は驚いた表情でそれを見つめる。
「...多いですね。少しお時間をいただきますが」
「構わない」
そう言って店員は端末を操作しながら素材を確認していく。そして途中で俺に話しかけてきた。
「41階層というと、魔物が増加したらしくて大変だったそうですね。」
「ああ...行ったけど、そこまでじゃなかったな。」
「もう落ち着いているという話は本当でしたか。」
「そうだな。"今はもう"落ち着いてるな。」
「...」
それを聞いた店員の動きが一瞬止まり、ちらりとこちらを見てくる。
「素材はこれで全てですか?"他には"ありませんか?」
「ああ、"他は"使い道がある。」
「...そうですか。では買取価格ですが───」
そうして売却を済ませた俺は、ついでに低階層で取れる素材をいくつか購入して店から出た。
低階層は経験値も少ないし、一々探索していたら時間がもったいないからな。お店で買ったほうが効率がいい。
(さて、次は変異体の素材を使って防具を強化するか。)
そして次に向かうのは装備に付与をするお店...ではなく、ダンジョンだ。
付与は自分でやったほうがいい。そしてそれをするならダンジョンの中が一番効率よくできる。
ダンジョンの入り口に立った俺は、転移石は使わずにそのまま魔法陣の上に立ち、1階層へと転移をした。
付与をするなら、ここが一番いい。
───ダンジョン1階層
ダンジョン開放初期は賑わっていたこの階層も、今や人気がなく寂しい階層へとなっている。
だが、だからこそ作業をするにはこの階層がいい。
スキルを『能力付与』や『魔力操作』などの付与用に切り替え軽く歩き回る。
そしてゴブリンを発見したので、マジックバッグから防御用の杖と、付与させる防具とゴーレムの変異体の素材を取り出しゴブリンに近づいていく。
「グギャ!?」
堂々と近づいてくる俺に対し、ゴブリンは驚いたような声を上げつつも襲い掛かって来た。
「防御壁」
俺は防御呪文を唱え、ゴブリンとの間に魔法の壁を作る。ゴブリンは必死に壁を叩くがびくともしない。
初球の防御呪文だが、レベル差もあるため1階層のゴブリンではこの防御を破ることはできない。
俺は杖をしまい、防具と素材を手に持ち付与を始めた。
別に家でも付与することはできる。だがより正確に、強力に、ミスなくするにはこの方法が一番だ。
それが『単独戦闘中に身体能力やスキル能力が上がる』というスキルを持つ俺が出した答えだ。
ゴブリンが俺に向かっている限りは「戦闘中」の判定になるため、能力が上昇する。なので今のうちに装備に意識を向け付与スキルを使用する。
素材と装備を合わせ、必要な構築を組み立て適切な魔力を流し込む。
「...こんなもんか。」
そしていくつか工程を済ませると、手元から変異体の素材は消えていた。
手元に残ったのはさらに防御力の上がった、深層用の防具。
ミスはなく、完璧な仕上がりになった。
「これなら普段の探索をもう少し上にしてもいいかもな」
今の最高到達層は、かなり無理をしての数字になる。当時の俺は焦ってがむしゃらに進んでいたため、今思うとよくあそこまでたどり着けたと思うほどだ。
だからこそ最近は最高階層よりも低い場所に潜っていたが、装備が強化された今なら、それより上の階層を探索することができるかもしれない。
だが最高階層を安定して探索するには、まだ足りない。
しかし確実に近づいてはいる。そこへ行くための“準備”としては、上出来だ。
(深層はまだ、探索できていない場所が山ほどある。俺の目的のためにも、深層の情報集めは必須だ。)
この装備でどこまで行けるか。試すのは、明日以降だ。




