33 東雲迅のダンジョン攻略
東雲のスキルおさらい
スキル上限拡張・俊足・集中・スタミナ増加・俯瞰視点・渾身・重撃・毒軽減・部分硬化・認識強化・戦闘の心得
【東雲迅】ダンジョン攻略するで!目標は65階層突破!【ダンジョン省雇用探索者】
「みんなの時間、邪魔すんで!東雲迅や!ダンジョン潜っていくで!」
:邪魔すんなら帰ってや~
:邪魔するなら帰れ~
:邪魔や~帰れ~
「...なあ、ほんまにこの挨拶で行くんか?アンケートで決まったことやけど、ワイは配信のたびに帰れって言われるんか?」
東雲はダンジョン省との話し合いの末、ダンジョン省雇用探索者となった。とは言え『探索者は自由』の方針が崩れるわけではなく、基本的には個人での活動を続けている。
例の探索者との接触によって自分のことが知れ渡ってから、配信を始めた東雲。
例の探索者と関わった人、ではなく、東雲迅という一人の探索者として名前を売るためだ。
そして何度か配信をしてから、『有名な人はみんなそれぞれ独自の挨拶がある』ということで、視聴者と共に配信の挨拶を考えた。その結果決まったのがこの挨拶だ。視聴者はみんな満足しているが、東雲としては納得していない。
:アンケで決まったんだから文句言うな
:独特でわかりやすくていいじゃんか
:関西人なんだからプロレスには付き合え
「いや、プロレスなんはわかっとるよ。でもなんかこう、もっとかっこいい挨拶とかあるやんか?」
:かっこいい挨拶?
:そんなんあるか?
:たとえばどんなの?
「そうやなぁ。『あなたの心にトキメキを。ナイスガイ東雲がお送りする、華麗なるダンジョン探索。ご覧あれ』とか、かっこええと思わんか?」
:ダッッッッッッさ
:センスなさ過ぎてビビるわ
:何食ったらそんな視聴率1%未満の深夜番組のキャッチコピーみたいなの思いつくんだよ。
「そんなにあかんか!?」
...と、配信が始まりしばらくはコメントとじゃれ合っていた東雲だが、しばらく話してから本題に戻る。
「まあ冗談はこの辺にして。今日の配信や。タイトルにある通り、65階層突破を目指すで。」
:何階層スタート?
:今って63階層までじゃなかったっけ?
:一日で63、64、65階層突破するつもり?
「そう、63階層スタートや。まあ普通に考えたらそんだけ更新するんは難しいけど、今回は大丈夫や。なんせ新しい情報が出てきたからな。」
:あー、例の探索者のやつか
:ちょっと前に65階層までの解説してたもんな。
:解説配信見てなかったけど、そこまでいったのか。
「そうや。あの探索者が解説してくれたからの。ほんま助かるで。こっちからしたら答え配られとるようなもんや。」
例の探索者は、ここしばらく60階層台の解説を続けていた。もちろん東雲はその配信を見ていたし、終わってからも何度も見返して情報を頭に叩き込んだ。
魔物の戦い方、気を付けるべき地形、先に進む魔法陣の場所。それらを全て教えられたのだから、これまでより段違いに攻略しやすい。
「60階層台はなかなか厄介やからのう。魔物の強さとは別のしんどさもあるし、早く抜けられるなら抜けてしまいたいわ。」
60階層台はアンデッド階層で、ゾンビやスケルトン、ミイラやレイスなどが出現する。
地形は森や草原ではなく洞窟の形をしており、薄暗く視界が悪い。足元もデコボコしていて不安定で、腐敗臭も漂っている。
そのため途中で休もうとしてもなかなか気が休まらずに、肉体的、精神的疲労が溜まりやすい。
日本トップチームの天譚九曜もその要素に苦戦しており、海外のトップチームも「できればあそこは何度も攻略したくない」と言っているほどだ。
:例の探索者は平気そうだったけどな
:それでも一気に駆け抜けるのを推奨してたな
「ほんまな。なんであいつは平気そうな顔してたんや。『悪臭大好き』みたいなスキルでも持ってるんちゃうかって思ってまうな」
:そんなスキル聞いたことねーよw
:見てるだけだとわからんけど、そんな臭いきついのか
「我慢できる範囲やけど、ずっと続くとストレスになるな。やからまぁ、ワイは対策として香水とかを体と顔面にぶっかけてから行くわ。」
そう言って東雲は瓶やスプレーを取り出し、体や顔につけていく。これはこれで匂いがきついが、腐敗臭よりは断然いい。
そうして準備を終えた東雲は、63階層に転移をしていった。
ダンジョン63階層
薄暗い洞窟。
壁や天井から垂れ下がる岩と、じめっとした空気。
そして鼻をつく、腐敗臭。
「…うわ、来たな。これやこれ」
転移した瞬間から、嫌な匂いが鼻にまとわりつく。
香水をつけている分、腐敗臭そのものよりはマシであるが、それでも顔をしかめてしまう臭いだ。
「さっさと行ってまおうか」
東雲は道順を書いたメモを確認してから動き出す。
いつかはこのあたりの階層もじっくり探索するべきだとは思うが、とりあえず今は突破優先だ。
迷路のようになっている枝道をどんどんと進んでいく。
普通ならば暗闇で視界が悪いので慎重に進むのだが、東雲には『認識強化』のスキルがある。
認識強化は、目に入った情報を素早く認識処理できる能力だ。暗闇であろうと少しでも視界が確保できるのであれば、地形やモンスターを素早く把握することができる。
「...ん、スケルトンとレイスか。嫌な組み合わせやな」
曲がり角の先に魔物を発見。スケルトンは動きが素早くて斬撃が効きにくく、レイスは物理攻撃が効きにくい。剣が主力で魔法を切り捨てている東雲としてはあまり相手にしたくない魔物だ。
とはいえ通り抜けようとしても素早いスケルトンに邪魔されてしまうだろう。全速力で走れば振り切れるとは思うが、いくら認識強化があったとしてもこのデコボコの地面を駆け抜けるのは危険だ。
「しゃーない、倒してしまうか」
:いけるのか、東雲
:どっちから倒すよ
:華麗なる戦闘を見せてくれ
東雲は剣をしまい、打撃武器のメイスと魔法武器の杖をマジックバッグから取り出し、片手ずつ持つ。
そして遠くから魔法を放ち2匹の魔物にこちらを認識させた。
東雲に気付いた2匹は、まずスケルトンが素早く迫ってくる。東雲は杖を足元に起き、それをメイスで迎え撃った。
`(レイスが合流するまでの数秒でこいつを倒す!)
スケルトンの剣をはじき、体当たりでひるませる。 そして隙ができたところに大きく振りかぶり『渾身』と『重撃』をのせた技を放つ。
「豪鋼破!」
その技が直撃したスケルトンは粉々になり、粒子となって消えていく。そして一息つく暇もなく、落とした杖を拾い今度はレイスに向かって技を放つ。
「貫雷槍!」
貫通力のある雷の槍は一直線にレイスに向かうが、その直線過ぎる雷はレイスに避けられる。
だがレイスが避けた先にもう一つ雷が飛んできた。
「一発目は誘導、二発目が本命や。」
スケルトンの時と同じくスキルをのせたその攻撃は、一撃でレイスを沈めた。
:おおおおおおお
:両方一発やん!!!
:全部倒していこうぜ!!!
「アホか!毎回これをやっとったらすぐ魔力切れてまうわ。スキルも技も使い放題ちゃうねんで。」
東雲はドロップした魔石を拾いながらコメントに向かって大声を出す。
そしてマナポーションを飲み魔力の補充をしながら言葉をつづける。
「マナポーションも費用かかるし、毎回飲んでたらトイレ行きたくなるしな。みんなの前で見せることになるで」
:そこは画面外で音切ってやれよ
:何故目の前でやる想定なのか
:卑猥物をわざと映したら厳罰だぞ
そんなことを言いながら、話もほどほどに進んでいく。魔物が一匹の場合はできるだけ技やスキルを使わずに倒し、二匹以上の場合は通り抜けるか素早く倒す。そうしていくうちの64階層へと続く魔方陣へとたどり着いた。
:早いな
:海外チームとか、道に迷って半日くらいかかったらしいのに
「答えがあるならこんなもんや。それにワイはソロやから、足並みそろえる必要もないしな。」
チームは安定感があるが進行は遅くなる。行動の素早さは、ソロの利点と言えるだろう。
ダンジョン64階層
「...いやらしいところにおるのう」
洞窟を進んでいたところで、壁際に隠れるようにミイラが潜んでいた。認識強化によりすぐ発見できたが、普通の探索者なら気付かずに奇襲を受けていたかもしれない。
:狙って隠れてたのか?
:たまたまじゃね?
:30階層台の沼ワニみたいに、奇襲メインってわけではないか
正面から戦えば一対一で負けることはないので、冷静に処理していく。
「ま、この程度のイレギュラー対応できひんかったら話にならんしな。」
それ以外は特に問題が起こることもなく、65階層へと進むことができた。
ダンジョン65階層
「ここで気を付けるべきは、中ボスや。将軍ゾンビが徘徊しとるらしいからの。」
:見つけたら戦う?
:今回はスルーでいいんじゃね。そんな早くないらしいから逃げ切れるんじゃない?
:将軍ってある通り部下を呼び出すらしいから、ソロにはきつそう
「残念ながら今回は見つけたとしても逃げやな。自分の成長のためにもいつかは倒したいけど、二階層走り抜けとるコンディションやとちょっとやりたくないわ。」
さすがに中ボスと戦うならば万全の状態にしておきたいので、今回は戦わずに突破を目指すことにした。
できれば出会わずに突破したい、その願いが通じたのか出会ったのは通常モンスターだけで、そのまま66階層へと繋がる魔方陣まで到達できた。
「よっしゃ。ここの転移石はいくつか拾ったから、またどっかで中ボスと戦う配信もやるで。今回はこのあと、66階層行って転移石確保したら終わりや。」
ダンジョン66階層
少し歩き回りゾンビやミイラを倒したところで転移石を拾った東雲は、そこで今回の探索を切り上げることにした。
「ほい、ほんなら今日はここまでやな。さすがにちょっと疲れてきたし、鼻もおかしなってきたわ。」
:おつおつ
:これ天譚九曜こえたんじゃないの?
:いや、天譚九曜はこの前67階層まで行っていたぞ
「そうなんよ。残念ながらまだ超えてへんわ。まあ別にええけどな。前までのワイやったら無理して探索続けようとしてたかもしれんけど、今はもっと上を見てもうたからな。ここでそんなムキになる必要ないわ。」
:80階層台と比べるとね
:焦っても危ないだけだしな
:リスクとリターンが見合ってない
:みんな普通にしてるけど、ソロでこの階層ってとんでもないことだぞ?w
「そういうことや。まぁとりあえず先に終わりの挨拶だけしとくで!みんなの時間、邪魔したで!東雲迅や!」
:邪魔するんならやらんといてや~
:邪魔やからやらんといて~
:邪魔や~やるな~
「いや、ほんまこの挨拶考えたやついつかシバくからな!」
次回は3月5日(木)更新です




