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創造スキルは万能です~ソロでダンジョン深層まで攻略していた俺、配信に映ってバズってしまう~  作者: ターシ


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29 探索者狩りと、湊のスキル

0時に前話を投稿してあります。まだの方はそちらからご覧ください。


 探索者狩り、または初心者狩り


 それの存在自体は知っていた。

 探索者になる前の講習でも、配信でも、何度も聞いた言葉だ。

 自分たちが狙われる位置にいるというのも、頭では分かっていた。分かっていたつもりだった。


 だが実際に、本当に襲われるなんて、夢にも思っていなかった。


(どうする!?どうすればいい!?)


 湊は必死に考えを巡らせる。

 相手は4人。おそらく自分たちよりレベルは上だろう。


「...結、武器を構えて」


 いまだ呆然としている結に、こっそりと言葉をかける。

 武器を構えていれば少しは警戒して動きを遅らせることはできるはずだ。


 結はそう言われハッとして武器を構える。だがその手は震えている。


「お?やる気か?でも女の方は震えてるぞ。それにな、お前らの能力は知ってるぜ?今回は大した能力じゃなかったもんな?」


 そう言われ、湊は内心で舌打ちをする。

 おそらくこいつらは自分たちの配信を見ている。だから手の内もバレているんだろう。


 湊の固定スキルは『ランダムスキル』だ。


 スキルをランダムに一つ、使えるようになるというもの。

 最初は自分だけだったが、少し成長したおかげで今は結に対して使うこともできる。


 だが今回の探索は、湊も結も付与されたスキルは大して使えないものだった。

 それを知って襲撃に踏み込んだのか。


 だが...


「...配信で見せてるのが、全部とは限らないよ?」

「あ?」

「ランダムスキル発動!!!」

「何!?」


 そう言って湊は自分と結に対してランダムスキルを使用する。

 配信では一日に一度しか使っていなかったが、実はランダムスキルは再使用ができる。本当は、いいスキルが出なかった時にもう一度やりなおすことができるのだ。

 だがこれまでは配信で見せていなかった。いざという時のために隠していた手だ。


(付与されたスキルは...当たりだ!!)


「おい!やっちまうぞ!」


 探索者狩りは焦ったように、つがえていた矢を放つ。

 ヒュンっと音がして矢が向かってくるが、その矢を湊は剣で叩き落とす。


 湊に付与されたのは『高速思考』。思考が早くなり、使用中は周りがスローモーションのように見える。


「ぐっ!?」


 だが、その分脳への負荷が強い。今の一瞬だけでこめかみに鋭い痛みが走った。

 それに思考が加速するだけで動きが早くなるわけではなく、自分もスローモーションの中で動かなければいけない。

 今のはたまたま上手く行ったが、次も上手く動けるかはわからない。

 即席のスキルを使いこなせるほど、湊は戦いの達人ではない。


「結...。結に付与されたのは『俊足』だ。それを使って逃げてくれ。」

「え...?で、でも」


 探索者狩りが本気で始末しに来ようとしてきたところで、湊は結に伝える。


「別に僕が犠牲になろうってわけじゃない。逃げて外に出て、助けを呼んできてほしい。それまで僕が粘る。」

「そ、それは...」

「頼む。このまま戦って勝つよりは、そっちの方が可能性があるんだ。」

「う...」


 結はうろたえるが、このまま戦って勝ち目が薄いというのは結も感じていることだ。


「おらああ!」


 探索者狩りが走ってくる。悩んでいる時間はない。


「行って!!」

「わ、わかった...!お願い!死なないでね!」


 結はそう言って、泣きそうな顔のまま走りだした。

 『俊足』により突然足が速くなったので一瞬コケそうになるが、なんとか体勢をなおしてその場から走り去る。


「おい!女が逃げたぞ!」

「早い!速度系のスキルか!?」

「チッ。俺が行く!」


 探索者狩りの一人が、結を追いかけるために走りだす。


「行かせない!」

「おっと、お前の相手は俺たちだ。」


 湊はそれを止めようとするが、目の前まで来ていた相手にその行動は阻まれる。

 それに...


(くそ、今のやつも速度系か!?)


 結を追いかけて行った相手も足が速かった。おそらく俊足と同系統のスキルを持っている。

 あれでは追い付かれてしまい、転移石を使う30秒間が確保できないかもしれない。


「まあ、あの震えていた女相手なら一人で充分だろ。俺たち3人はこいつをやるぞ」


 そう言って3人は湊を囲む。弓矢を持っていたやつも、いつの間にか剣に持ち替えていた。

 結のことが心配だが、それ以前にこの状況を切り抜けないといけない。

 湊は目の前に集中して武器を構えた。


「ははっ、随分落ち着いてるじゃねえか」


 正面の男が剣を肩に乗せたまま笑う。


「さっき矢を叩き落としたよな?いいスキルを手に入れたか?」

「……」


 湊は答えない。

 代わりに、意識を研ぎ澄ませる。


 高速思考

 発動と同時に、世界が沈む。

 すべてがスローに見え、視界の隅から隅まで見渡すことができる。


(来る)


 左。

 視界の端で、男が踏み込む。

 横なぎをしてくるが、湊はそれに合わせて剣を動かす。


 ガキンッ!!


 強い衝撃。

 腕が痺れる。


(重い……!)


 ゴブリンとは違う。受け止めるだけで精一杯だ。

 押し返す力はない。


「おっと、そっちばかり集中してていいのか?」


 正面の男が踏み込んでくる。

 喉元を正確に狙った突き。


 湊は無理やり体を捻り避ける。

 刃が、首筋を掠めた。

 ほんの少し血が滲む。


「チッ、かすっただけか」


 舌打ち。

 そこからさらに、右から三人目が来る。


(間に合わない...!)


 右からの蹴りが腹に直撃する


「がっ……!」


 息が詰まる。

 体が吹き飛び、地面を転がった。

 視界が揺れ、高速思考が途切れる。


「はっはっは! 大したことねえな!」

「おい、いきなり首狙うなよ。さっさと終わっちまったらつまんねえだろ。」

「悪い悪い。しかしさっきのは何だ? 一瞬反応が良かっただけか?」


 笑い声が聞こえてくる。

 遊ばれている、悔しい感情が湧いてくる。


(立て……)


 湊は歯を食いしばる。


 まだだ。まだ時間を稼がなければならない。

 遊んでくれるならむしろ好都合だ。結が逃げる時間を確保できる。


 足を震せながら立ち上がる

 震えているのは痛みのせいだけじゃない。立ち向かう勇気はあっても、怖いものは怖い。


「お、立ち上がったか」

「いいねえ。楽しんでいこうぜ」


 三人がゆっくりと近づいてくる。

 弄ぶように。


(くそ……)


 三対一では、さすがに歯が立たない。

 魔物とは違う、明確に連携した動きだ。


 高速思考があっても、体が追いつかない。

 それに...


 ズキッ


 頭に痛みが走る。

 使うたびに、痛みが強くなっている。

 長くは持たない。


(結……)


 無事、逃げられただろうか。

 あの追っていった男も速かった。

 俊足があっても、捕まる可能性はある。


(頼む……)


 逃げ切ってくれ。

 助けを呼んでくれ。

 そうすれば...


「ほら、どうした?」


 正面の男が構える。


「来ないなら、こっちから行くぞ?」


 向かってくる探索者狩りたち。


 そこから7分間

 湊にとって、これまでの人生で最も集中した時間となった。


「おらっ!」


 男の拳が腹に直撃する。


「ぐっ...!」


 血を吐きながらその場に倒れそうになるが、なんとか後ろへ下がり距離を取る。


「おー、思いっきり殴るってこんな感じなんだな。」

「いいだろ?スッキリするよな。」


 男たちは笑いながら話している。


(何分...何十分経った...?結はどうなった...?)


 腕が斬りつけられ、剣は持てなくなった。

 高速思考の負荷により、鼻血も出てきた。

 頭がぼうっとして、視界がかすんできた。


「言っとくが助けは来ねえぞ?ここの探索者たちは11階層なんて低いところを探索しない。それにドローンを壊したタイミングは、『少し早めに配信を切った』、程度のタイミングだ。それだけじゃ、たとえ配信を見ていたとしてもダンジョンの職員たちは気に留めない。大人はな、明確な証拠がなければ動かないんだよ。」


 男が何かを言っているが上手く聞き取れない。

 ポーションを飲む隙もなく、回復ができない。


「女の方もそろそろ終わったか?」

「かもな。こっちもそろそろやっちまうか。」

「そうだな。痛めつけるのは楽しんだし、最後は切り刻む感覚を楽しもうぜ。」


 剣を持った3人が近づいてくる。

 絶体絶命の中、湊の頭にある考えは一つだけだった。


(僕はもうだめだけど、せめて結だけは...)


 そして近づいてきた男は、湊に向かって剣を振り下ろした。


─────────────────────────────────────


 息が苦しい。肺が焼けるように痛い。

 それでも、若葉結は走っていた。

 足がもつれそうになるのを、必死に堪える。


 逃げなきゃ。


 その言葉だけが、頭の中で何度も繰り返されていた。

 背後から足音が聞こえる。


 ザッ、ザッ、ザッ


 一定の速さで、確実に近づいてくる音。


「ははっ、速いなぁ!」


 男の声。その声には楽しさが感じられる。


「でもよぉ」


 ゾッとするほど近くで、声がした。


「逃げ切れると思ってんのか?」

「!?」


 振り返ると、すぐ後ろに剣を持って笑っている男がいた。


 結の心臓が凍りつく。

 速い。俊足を使っているのに、追いつかれている。


(やばい……やばい……!)


 外に出て助けを呼ばなきゃいけないのに。


 手元の転移石に意識がいく。

 転移石の起動には30秒かかるし、起動中に激しい動きをするとキャンセルされる。

 これだけ相手が近いと使えるわけがない。


 希望だと思っていた転移石が、ただの石ころのように感じられた。


「あっ!?」


 そう思ってしまった瞬間、どうしようもないと考えてしまったタイミングで、足がもつれてこけてしまった。

 『俊足』で速度がのった勢いのまま地面にたたきつけられる。

 ゴロゴロと転がり、全身が打ち付けられて痛む。


「あーあ、残念。逃げきれなかったな。」


 その声と共に、結に影が覆いかぶさる。

 もう、目の前まで来ている。

 慣れないスキルで全力疾走したことで、結の体は限界だった。

 もう立ち上がれない。動けない。


「もう少しは生きてられるさ。殺すのは、悲鳴をたっぷり聞いた後だからな?」


 男は残酷な言葉とともに、剣を振り上げる。


(ごめん...湊...!)


 涙目になりながら、心の中で謝りながら、歯を食いしばる。


 そして剣が振り下ろされた瞬間。


 キィン


 と、澄んだ金属音が響いた。

 明らかに、人を斬った音ではない。 


「……は?」


 呆然とした男の声。

 振り下ろした剣は途中で止まっていた。

 いや、()()()()()()()()()


 結の目の前。いつの間にか誰かが立っていた。

 いや、誰かではない。

 知ってる背中だ。配信で何度も見たことがあり、日常でも話したことがある人。


「え……」


 息が止まる。

 男が、驚いた声を出す。


「な、んだ……お前……いつ」

「...」


 剣を受け止めた人物は、何も言わずに剣を弾いた。

 ただそれだけの動作で、探索者狩りの体が大きくのけぞる。


「なっ!?」


 信じられない、という顔。

 その男は、結を庇うように一歩前に出た。

 そして振り返らずに言う。


「じっとしててくれ。すぐに終わる。」


 その言葉だけで、結の中の恐怖は一気に消えた。


 そこに立っていたのは、ダンジョン最深到達者。

 唯一の存在であり、最強のソロ探索者。


 世界で一番頼りになる先輩が、助けに来てくれた。


「だ、誰だ...。いや、どこかで見た気が...」


 探索者狩りの言葉は、最後まで続かなかった。


 その探索者は瞬きのうちに探索者狩りに接近し、盾を顔にぶつける。


「ぶっ!?」


 鼻血を出しよろめく探索者狩り。

 続いて剣の柄で腹を殴打する。


「ぐえ!?」


 腹をおさえて前のめりになる。

 そして下がった頭目掛けて、膝蹴りが襲いかかる。


 大きく吹き飛ぶ探索者狩り。吹き飛んで倒れた先で、ぴくぴくと痙攣を繰り返す。 


 『すぐに終わる』

 それは比喩でもなんでもなかった。本当に、数秒で決着がついた。


「大丈夫...そうだな。」


 探索者狩りが気絶したのを見て、その探索者...先輩は、結のほうを振り返る。その言葉を聞き、ようやく結は動き出すことができた。


「あ...!ありがとうございます!でも...!湊が!!湊のところには3人いて!!」


 言うこともまとまっていないまま、とにかく口に出す。


「お願いします!湊のところにも行ってあげてください!私にできることならなんでもしますから!」


 結は必死で先輩にお願いをした。

 自分だけが助かるんじゃだめだ。湊も助からないと...!

 そのためには、何でも差し出す覚悟があった。


 だが、先輩はそれを聞いても落ち着いた様子で言葉を返した。


「大丈夫だ。」


 遠くの方を眺めながら言う。


「湊の方には、もう一人が向かっている。」

 

次回は2月23日(月)更新です

5話ごとに掲示板をやっていましたが、今回おさまりきらなさそうなので30話まで話が続きます。

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