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創造スキルは万能です~ソロでダンジョン深層まで攻略していた俺、配信に映ってバズってしまう~  作者: ターシ


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16 ダンジョン省との取引

今回の主人公の回想と矛盾が出てしまうため、1話を少し書き直しました。(1月11日に編集済み)

それ以前に読んでいた方は、もう一度1話の主人公が助けに入る前の描写を読んでいただけると幸いです。


あと、微妙に話が進んでるようで進んでないので、本日12時にもう一話更新します。


 夢を見ていた。


 それは、ダンジョンに潜り始めたばかりの頃の夢だ。

 まだ右も左も分からず、装備も今とは比べものにならないほど貧弱で、それでも胸だけは妙に高鳴っていた頃。


(俺の固定スキルは……『創造』)


 スキルを作るスキル。

 初めて知った時、正直に思った。


(……めちゃくちゃ強いんじゃないか?)


 実際、万能だった。

 数や同時使用、効果量には制限がある。だがそれを差し引いても、状況に応じて必要な能力を用意できるというのは破格だ。


 攻撃、防御、感知、補助、回復。


 工夫次第で、なんでもこなせた。


(これなら、どこまででも行けそうだ)


 そんな根拠のない自信を持っていた。

 あの頃の俺は、まだダンジョンを“夢のある冒険”だと思っていたから。


 最初は、ゆっくり進んでいた。

 ソロで潜ることもあれば、受付で野良募集に参加して即席のチームを組むこともあった。探索者なら珍しくもない、ごく普通のやり方だ。実際、それで困ったことはなかった。

 多少のトラブルはあっても、命に関わるようなことは起きなかった。


 ――あの日までは。


 その日、俺は少し離れた場所から、別のチームの戦闘を見ていた。

 自分たちより少し先を進んでいた、四人組のチーム。連携も取れていて、装備も悪くなかった。

 だから、最初は「大丈夫だろう」と思った。


 だが。

 たった一つの判断ミス。

 たった一瞬の隙。

 それだけで、戦況は一気に崩れた。


 一人が倒れ、助けに入ったもう一人が拘束され、そこからは早かった。

 悲鳴。

 断末魔。

 血の匂い。

 そして――沈黙。


 全滅だった。


 俺は、動けなかった。

 助けに入る判断もできず、逃げることもできず、ただ遠くから見ていることしかできなかった。


 今でも思う。

 あの時、何かできたんじゃないか、と。

 でも同時に、こうも思う。


(もし、あれが……俺のチームだったら)


 もし、一緒に潜っていた仲間だったら。

 目の前で、仲間が死んでいくのを見たら。

 俺は――耐えられただろうか。


 その日を境に、俺は決めた。

 もう、誰ともチームを組まない。

 ソロで潜ろう、と。


 特別な理由じゃない。

 探索者なら、似たような経験をしたやつも多いだろう。

 だが、当時の俺にとっては、それで十分だった。


 そしてダンジョンに潜る“目的”が、はっきりと定まった瞬間だった。


(死ぬのが、怖い)


 単純で、情けない理由だ。実際、否定はしない。

 だが探索者が目の前で死んでいくのを見てから、どうしても死の恐怖から逃れられなかった。

 そして死というのは、戦わずとも平穏に生きていったとしても、いずれ老い、老衰という形で訪れるものだ。

 だから――


(不老、もしくは若返りの薬を探そう)


 ダンジョンには、常識外れのものが眠っている。

 なら、その中にあってもおかしくない。

 それが見つかるまで、俺は潜り続ける。


 誰も巻き込まず、一人で。

 そう決めた。




 ――そこで、意識が浮上する。


 瞼の向こうが、やけに明るい。

 消毒薬の匂い。

 どこかで聞いたことのある、機械音。


「……ここは……?」


 夢は、そこで終わった。


─────────────────────────────────────


 目を開けると、白い天井が視界に入った。


「……あ、起きました!?」


 慌てた声と同時に、椅子が音を立てて倒れそうになる。

 目を向けると、そこには男女の二人組がいた。


「ダンジョン一階層で倒れてたんです。私たちが見つけて……」


 そこまで聞いて、ようやく思い出す。転移石、血、視界が暗くなったこと。

 この二人は、最後倒れる直前にそばにいた二人だ。ということは、ここまで運んでくれたのもこの二人だろう。

 そして話を聞くに、どうやら俺は丸一日寝ていたようだ。


「……助けてくれて、ありがとう」


 そう言うと、二人は目を丸くした。

 …何故驚いているんだろう。血まみれで倒れていた相手が、普通に礼を言うとは思っていなかったのかもしれない。

 それより、たしかこの二人はドローンを連れていた記憶がある。ということは...


「あ、あの……」


 少し言いにくそうに、男の子が話し出す。


「配信、すごいことになってます。あなたの荷物の、80階層の転移石が映っちゃって。ネットニュースにもなってて……その、ダンジョン省の人から、これを預かってます」


 そういって差し出された手紙を受け取る。

 ...そこまで映っていたか。そしてダンジョン省、ね。動きが早いな。


「わざわざごめんな。あとは、俺一人で大丈夫。助けてくれたお礼は、今度必ずするよ。」

「え...えーと、その...」

「素直に受け取ってくれれば大丈夫。その方が俺も助かる。」

「,,,わかりました。では、その、また。」


 そう言って、二人は頭を下げて部屋を出ていった。

 静かになった病室で、俺はようやく手紙に目を落とす。


 少し時間をかけて、じっくりと手紙を読んだ。内容としては、要点だけを抜き出せばこうだ。



・配信に80階層の転移石が映り込んだことで、すでに多くの組織、企業、探索者チーム――さらには裏の者まで動きを見せていること。


・ダンジョン省としては、それらから俺を守る代わりに、深層の情報提供や、素材売却時の優先権などで協力してほしいということ。


・少しでもその気があるなら、手紙に記載された連絡先まで連絡をしてほしい、ということ。



 要するに、「囲うつもりはないが、放っておく気もない」。そういう話だった。


(……まぁ、そうなるよな)


 80階層まで行ける探索者が、本当に存在するとわかった。放置できるはずがない。

 だがしかし...


(守る、ね)


 その言葉が、どこまで信用できるかはわからない。


 わからないが、だからと言ってこのまま何もせずにいてもどうせ厄介ごとに巻き込まれるだろう。

 そう考えた俺は、少し迷いはしたが連絡を取ることにした。


─────────────────────────────────────


 ノックの音がして、ドアが開く。スーツ姿の男が一人、静かに入ってきた。


「ダンジョン省の佐藤と申します」


 そう言って差し出された名刺を受け取る。

 あいにく俺は大学生なので名刺はない。どうしたものかと一瞬迷ったが、佐藤は気にした様子もなく、そのまま言葉を続けた。


「私のことを知っていただければそれで十分です。あなたの名刺などは必要ありません」


 そう前置きしてから、間を置かず本題に入る。


「会っていただけた、ということは……手紙の内容に、少なからず興味を持っていただけた、という理解でよろしいですね」

「……そうですね」


 即答はしなかった。正直に言えば、興味というより無視できなかった、が正しい。


「配信に映ってしまった転移石の件ですね」


 佐藤は小さく頷く。


「はい。80階層の転移石。確認できている限り、国内のみならず、国外でもその階層に到達した探索者は存在しません。」


 淡々とした口調。だが、その言葉の重みは十分すぎるほどだった。

 つまりは「世界初」と言っているのだ、


「手紙でお伝えした通り、すでに複数の企業、探索者チーム、国外組織、そして――表に出せない連中まで、あなたの動向を探り始めています」

「……随分、人気者になったみたいですね」


 皮肉を込めて言うと、佐藤は苦笑する。


「ええ。正直、こちらとしても想定より早かった」


 否定しないのか、と内心で思う。


「こちらも手紙に書きましたが、ダンジョン省としてはあなたを拘束したり、強制的に管理するつもりはありません」

「探索者は自由、でしたっけ」

「はい。その方針は、今後も変わりません」


 即答だった。少なくとも、この場では嘘をつくつもりはなさそうだ。


「では、なぜ俺に声をかけたんですか」


 佐藤は一度、視線を落とし、言葉を選ぶ。


「――あなたが“無防備すぎる”からです」

「……」


「今は、病院にいるから安全です。ですが退院すれば、あなたはただの一般人。ある程度の組織であれば、あなたが大学生だということも、住居やその他の身元も――時間の問題で突き止められるでしょう」


 遠回しだが、それは警告だった。


「我々が表に出ることで、少なくとも表立った接触や強引な勧誘は抑えられます」

「その代わりに情報提供、素材の優先売却……ですね」

「はい」


 佐藤は頷き、少しだけ姿勢を正した。


「ただし、何度も言いますが――探索活動を縛るつもりはありません。情報提供の仕方としては配信という形で考えておりますが、その頻度も内容も細かく指定するつもりはしません。」


 そこで、俺は眉をひそめた。


「……配信?」

「ええ。レポート提出や非公開の聞き取りも選択肢ではありますが、映像の方が探索の状況や危険度を正確に伝えられる」


 なるほど。合理的ではある。


「やっていただく場合は、おそらく『どこの階層か』だけは伝えていただく形になると思います。しかしそれ以外は、どこまで映すか、何を話すかはあなた自身が決めてください。ご自身の力など、他人に知られたくないものもあるでしょう。」

「それって……」

「“お願い”です」


 佐藤は、はっきりそう言った。


「我々は、あなたを管理したいわけではありません。ただ、守れる立場に立たせてほしい。それだけです」

「断ることも可能だと?」

「もちろんです」


 その言葉は、即答だった。


「あなたが拒否したとしても、我々はそれを理由に不利益を与えることはありません」


 ……本当かどうかは別として、少なくとも“建前”はしっかりしている。


「少し、考えさせてください」


 そう言うと、佐藤は立ち上がり、深く一礼した。


「ええ。我々としては急ぐ話ではありません」


 だが、その直後にこう付け加える。


「ただし、周りが待ってくれるとは限りません。世界は、もうあなたを見つけてしまった」


 その一言が、妙に重く胸に残った。



前書きもしましたが、次回は本日12時にもう一話更新します。


前回ダメ元で高評価とブクマお願いしますと言ったら、思った以上にみんなしてくれてびっくりしました。ありがとうございます。

そのおかげで前回の話が日間ローファンタジー70~80位くらいに何度かランクインしました。

ほんとにランキング乗る効果あるらしいです。


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