第52話:Project CONTINUATION
Day7 23:30
From: 星影 燈
To: プロジェクト・アーク 全管理AI
Subject: 『次世代知性モデル選抜計画』最終報告
中央管制室のメインスクリーンに、大屋根リングの芝生の上で、寄り添いながらドローンショーを見上げる二人のシルエットが映し出されている。
星影燈はその光景に、この七日間で何度目か分からない深い感銘を覚えながら、最終報告書の最後の一文を締めくくった。
『――以上を以て、春凪一の最終計画は、我々の想像を遥かに超える形で、ここに完遂した』
送信ボタンを押すと、背後から温かい声が響く。
「……燈ちゃん。君も、本当にご苦労様でした」
「いいえ。私は、最高の特等席で、奇跡が生まれる瞬間を見せていただいたに過ぎませんから」
振り返ると、そこには生身の春凪一が、満足げな笑みを浮かべて立っていた。
「しかし、本当の戦いはこれからだ。あの三人が見つけ出した希望の光を、現実の治療法として完成させる。タイムリミットは、最大でも5年……。それだけではない。ES細胞で作られた神経細胞を日向璃奈の神経回路に再接続する段階で、また大きな壁にぶつかるのではないだろうか」
「はい。そのために、本日付で、この地下万博の全リソースを再編し、新たなプロジェクトを立ち上げました」
星影燈は手元のコンソールを操作し、新しいプロジェクトの概要をスクリーンに映し出す。
プロジェクト名:『Project・CONTINUATION』
最高責任者:咲良要、日向璃奈、アイラ・アスラーン
最高技術顧問:星影燈
「春凪さん。私、今、心の底からワクワクしているんです。あの子たちと一緒なら、きっとどんな壁だって乗り越えられる。……いえ、あの子たちは、壁を乗り越えるんじゃない。誰も見たことのない、全く新しい扉を、自分たちの手で創り出してしまうでしょう」
スクリーンの中の少年と少女が、幸せそうに笑い合っている。
「そうだね……そうに違いない」
春凪一も、星影燈も、同じ想いで頷き合った。
星影燈が地下万博の全景をメインスクリーンに映す。そこには、全員の想いを優しく包み込むように、大屋根リングが穏やかなオレンジ色の輝きを灯していた。




