表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いのちの続きを、この地下で ~地下1,000mの大阪万博で出会った君は、アンドロイドの体で僕に微笑んだ~  作者: 春凪一
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/53

第34話:信じる者たち

[地下万博 中央管制室]


メインスクリーンに、住友館へと向かう三人の後ろ姿が映し出されている。


その映像を、星影燈は静かに、そして感慨深げに見つめていた。


「『今と未来の自分について』……パソナ館での課題、完了しました。三者三様の、非常に興味深いデータが取れましたね」


主催者AIが、穏やかに応じる。


『ええ。実に、実に素晴らしい対話でした』


その声には、これまでの楽しむような響きではなく、深い感銘を受けたかのような、荘厳さすら感じられた。


『咲良要は、満たされた自己の幸福から、他者への貢献へと視座を高めた。与えられる側から、与える側へ。素晴らしい成長です』


『アイラ・アスラーンは、孤独という完成された自己の世界から、他者と関わるという『不完全さ』を受け入れる可能性を見出した。これは彼女にとって、革命に等しい変化でしょう』


『そして、日向璃奈。彼女の未来への渇望は、単なる生存本能ではない。『誰かの隣に立ちたい』という、極めて人間的な愛情に基づいている。……なんと、強いのだろうか』


主催者AIによる個々の評価を聞き、燈も静かに頷く。


「はい。個々の精神的な成長も著しいですが、それ以上に驚くべきは、この三人が一つのチームとして集った時の……あの空気感です」


『ええ、その通りです。燈ちゃん』


主催者AIの声に、確信に満ちた響きが加わる。


『論理の要、直感の璃奈、そして、全てを俯瞰するアイラ。それぞれが全く違う音色を奏でながら、決して不協和音にはならない。互いを尊重し、補い合う、完璧な調和がそこにはある』


『そして、その調和は、時として奇跡的な共鳴を生み出すのです』


主催者AIは、まるで未来を見通しているかのように、静かに、しかし力強く言った。


『彼らなら、可能でしょう。我々古い世代が誰も見つけられなかった、全く新しい未来の設計図を。絶望の淵から、希望という名の、全く新しい何かを創り出すことが』


スクリーンの中の三人は、もう小さくなって見えなくなっていた。


だが、管制室の二人は、彼らが放つ大きな輝きの軌跡を、確かに見ていた。


* * *


[ベルギー館レストラン Revive]


要たちが大阪ヘルスケア館で己の心と向き合っている頃。


咲良悟と日向万里奈は、ベルギー館のレストランで、少し遅い昼食をとっていた。 Day3の夜の保護者説明会で意気投合した二人は、今日の自由時間を利用して、改めて情報交換をしようと約束していたのだ。


「それにしても、要くんも璃奈も、たいしたもんですよねぇ」


万里奈が、運ばれてきたベルギービールを美味しそうに飲みながら言う。


「私たちがいなくても、ちゃんと自分たちで考えて、行動して。特に璃奈なんて家ではあんな感じやから、ちょっと心配してたんですけど(笑)」


「いやいや、うちの要もですよ。普段はゲームばっかりしてる、ただの中学生ですからな。まあ、璃奈さんみたいにしっかりしたお姉さんが側にいてくれるなら、安心ですわ」


悟がにこやかに応じる。その言葉に、万里奈は少しだけ表情を曇らせた。


「……悟さん。あなたには、ちゃんとお話ししておかなければならないことがあります」


意を決したような万里奈の真剣な眼差しに、悟も居住まいを正す。


「実は、あの子……璃奈は、ALSという病気で、本当の体は台湾の病院なんです。今ここにいるのは、アンドロイドの義体で……私が医学の道に進んだのも、あの子の病気のことで、少しでも力になりたいと思ったからなんです」


悟は、驚きで目を見開くこともなく、ただ静かに、万里奈の告白を聞いていた。そして、全てを聞き終えると、ふぅ、と長い息を吐いて、深く、深く頷いた。


「……そうでしたか。大変でしたな、お二人とも」


その声は、テクノロジーへの驚きではなく、一人の人間として、姉妹が背負ってきた運命に対する、心からの共感に満ちていた。


「うちの要が毎日元気に学校へ行って、当たり前のように友達と笑い合ってくれることが、どれだけありがたいことか……。万里奈さんのお話を聞いて、改めて胸に沁みましたわ」


「悟さん……」


「いや、すんません。湿っぽい話になってしもた。……でも、希望はあるんちゃいます?2050年の医療技術もすごいですけど、何より……」


悟は、どこか誇らしげに、そして確信を持って言った。


「うちの要も、璃奈さんも、アイラちゃんも。あの子らは、私ら大人があれこれ心配するよりも、ずっとずっと賢くて、優しい。 私みたいな古い世代の人間とは、考え方の根本から違いますわ。あの子ら三人が揃えば、きっと、どんな壁だって乗り越えられますよ。私は、そう信じてます」


その言葉に、万里奈の瞳がわずかに潤む。


「……はい!」


こうして、二人の保護者の間にも、子供たちを支えるための、小さくも、しかし確かな同盟が結ばれたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ