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いのちの続きを、この地下で ~地下1,000mの大阪万博で出会った君は、アンドロイドの体で僕に微笑んだ~  作者: 春凪一
第一部

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第18話:Day1の夜

[地下万博・中央管制室]


迎賓館の灯りが落ち着きを取り戻し、参加者たちが眠りについた頃。


中央管制室には静寂だけが満ちていた。壁一面の巨大なスクリーンに映し出される無数の監視映像だけが、音もなく明滅を繰り返している。


その中央に立つプロジェクト・アークAI部門総括 星影燈が手元の端末を操作し静かに口を開いた。


「初日のレポートです。プロジェクトへの導入は全チーム円滑に行われました。ただし導入直後に失格となったチームが1組ありました。Day1の失格チームはこの1組のみです」


報告を受ける壮年の男性の声が室内のスピーカーから凛として響く。この計画の主催者でありこの空間の全てを統べるAIの声だ。


『ご苦労さまです。それで、有望な参加者はいましたか』


「はい。早速ですが、非常に興味深い対照的な二組が突出した能力を見せています」


燈はそう切り出すと咲良チームと日向チームの行動データをメインスクリーンに並べて表示した。


「一方は論理的に。もう一方は直感で。驚くべきことに全く違うアプローチを取りながら両者はほぼ同じタイミングで同じ結論――『くら寿司で得られる三つのパビリオンへのヒント』へと到達しています」


『興味深い。実に興味深いですね』


主催者AIは心から楽しんでいるように相槌を打つ。


『なるほど、言うなれば、咲良要は『カメさん』ですね。じっくりと観察し仲間と対話し楽しみながら着実に歩を進める。対して日向璃奈は『ウサギさん』。誰よりも早く本質を見抜き、最短距離を駆け抜けていく。ですがこの物語のウサギは、途中で居眠りをするような油断は見せません』


AIはそこで言葉を区切りどこか満足げに続けた。


『我々が見たいのはまさにこういう『多様性』なのです』


『ところで、この日向璃奈は例の義体での参加者ですね。特段の問題は発生していないのでしょうか。技術的な問題が万が一発生した場合は、最優先でのフォローをお願いします』


主催者AIの顔がスクリーンに映し出され、その口元がニヤリと歪んだ。


『それで、もう日向璃奈には会いに行ったのかい?燈ちゃん』


「……っ!いえ、参加者の邪魔になっては意味がありませんし、まだ会いに行っていません。興味は……ありますが」


『そうですね。ですが、迎賓館の中であれば邪魔にはならないのではありませんか』


「……!!そうですね!期間内のどこかで機会を見つけて訪問してみようと思います!」


すぐにでも会いに行きその義体を隅々まで観察したいという、技術者としての探究心が燈の声に満ち溢れていた。


ひとしきり微笑ましいやり取りを終えた後、燈は「ああ、それと」と思い出したように付け加えた。


「もう一人、気になる参加者がいます」


スクリーンに新たなデータが映し出される。まだ最初のヒントにさえ到達できていないにもかかわらず、バルト館への驚異的な訪問回数を記録している参加者のログだった。


主催者AIは即座に自身のデータベースにアクセスし、その参加者の詳細な情報を参照する。


『……なるほど。カメとウサギだけではなかったか。孤独な星も自らの光で輝こうとしている。実に楽しみです。ありがとう。明日もよろしくお願いしますね』


「承知しました。お疲れさまでした」


星影燈はそう締めくくると、メインスクリーンを地下万博の全景へと切り替えた。


静まり返った夢の跡で、小さき挑戦者たちの長い一日は静かに幕を下ろした。


Day2の幕が上がるまで、あと数時間。


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