第一話 居残り首席
少年と少女の出会い。
私の終わりは、貴方に与えられたい。
何年先だとしても、どれだけの犠牲を生むとしても。
呪いだと分かっていながら、それでも――願ってしまった。
***
校庭の桜はすでに葉を繁らせながらも微かに花の名残を残す、四月半ばの昼下がり。四限の終わりを告げるチャイムと共に、国立魔法学園花城高等学校三年一組の教室は、昼休みの喧騒に包まれる。
「はーっ、進路とか今から言われてもなぁ」
「いやむしろまだ志望校決まってないんかよ。普通二年で決めるだろ」
「夏休みまでに決めりゃあいいんだよ」
後ろの席から聞こえるやりとりに目もくれず、日下部宗は黙って席を立った。彼は机の横にかけた鞄を手に取り、教室を出る。誰とも言葉を交わさず、誰とも目を合わせず。
教室前での生徒たちのやり取りは、宗の脳裏に届かない。
「やべっ千円札ねえわ、飯買えねえじゃん」
「作っちまえば?」
「バカ言うなよ、どうせレジでバレんだから意味ねえだろ……俺に捕まれってか?」
「お前が警察の世話になってるの、いっぺん見てみたいかもな」
廊下にて、女子生徒二人組が宗の前を歩いていた。片方の生徒が、制服のポケットからはみ出ていたハンカチを落とした。宗の黄水晶の瞳は偶然その瞬間を捉えていて、彼は落ちたハンカチを手に取った。落とした本人は気づいておらず、宗は彼女に声をかける。
「待って。これ、落としたよ」
たったそれだけの言葉。しかしそれでも、彼の澄んだテノールは聞いた者の耳に残って離れない。
「あ、ありがとう……」
女子生徒はハンカチを受け取ると、やや上擦った声でそう言った。彼女の頬がわずかに紅潮していることに、宗は気づかなかった。彼はハンカチを手放すと、静かに背を向けて歩き去った。
「え、あれ『居残り首席』だよね……」
「だよね……初めて近くで見たかも」
濃藍の髪の後ろ姿に注がれる視線と声が、彼に届くことはもうなかった。
宗は階段を降りる。他の生徒たちのやり取りも、やはり彼には届かない。
「痛っ……指切っちゃった」
「大丈夫?私、治そうか?」
「お願い……」
どんな言葉も、どんな感情も、宗の心を動かさない。あらゆる喧騒が、彼にはただ通り過ぎていくばかりだった。
階段を降りた先、宗は廊下の奥を歩くひときわ印象的な影を目にして、ふとその足を止めた。
去っていこうとする春が、彼女のもとに集ったかのようだった。
濃紺のジャケット、特徴的なセーラー襟が柔らかな光をまとって揺れる。
白いシャツの襟元に咲く、赤のリボンは高校一年の証。ジャケットと揃いのプリーツスカートは膝が覗く丈に仕立てられ、足取りのたびに小さく揺れる。
腰まで伸びた銀の髪が、まるで降り積もった雪のようにさらりと肩を撫でる。白磁の肌には瑕ひとつ見当たらず、端正な面を彩る大きな瞳は、紅玉のように輝いていた。
まるで、誰かの夢を精巧に具現化した人形が、力学魔法で動かされているみたいだ。
そんな馬鹿げた思考が宗の脳裏に浮かぶほど、完璧な造形には現実味が帯びていない。
ただその瞳は、確かな"生"を宿していた。
少女は宗に気付くと、微笑んで小さく会釈した。それは儀礼的でも、緊張したものでもなく。
まるで以前から彼のことを知っていたかのような、自然で穏やかな仕草だった。
宗は、その場で一瞬だけ硬直し――そして、また歩き出す。まるで、何事もなかったかのように。けれどその横顔には、先程まで存在しなかった微かな迷いが宿っていた。
――それが、二人の出会いだった。
※このエピソードには、作者が構築した世界観、構成、表現の補強にChatGPT(GPT-4o)を使用しました。
本文の一部にAIによる表現が含まれますが、本文そのものは作者が執筆したものであり、AIによって生成されたものではありません。
最終的な構成・編集・セリフ・物語の意図は、すべて作者自身の手によるものです。




