STAGE Ⅰー17
僕はエフティシアと一緒に、アルビスに案内されて彼ら集落に辿り着いていた。それが、昨日の夕方辺りの話。
今は翌日の朝、新しい里長がどうのこうのっていう会の真っ最中。勿論僕は皆の前に立たされるので、不参加不可だ。
「里長。なんか一言、よろしくっス。」
アルビス君からの無茶ぶりに何とか対応しつつ、頭の中で愚痴を吐いたり、皆との合流予定を立てている最中だ。
アルビスに君付けし始めたのは、昨日の夜……まぁいいか。
アルビス君以外にも聞いて回ったのだが、アムニス達どころかエフティシアの班以外はまだここには来てないそうだ。
何かトラブルにあったのだろうか。それともまだついていないだけなのか。
合流はどうするのか。アルビス達の件はどう説明するのか。他の班をどう助けるのか。そもそも合流したところでパルウァ達や他の班は納得して協力してくれるのか。
色々と悩みは多いが、取り敢えず出来ることから始めるべきなのだろう。
「さてそれじゃあ、里長として依頼をしたいんだが、僕の仲間を探してほしい。」
無事に会合を終えた僕は、早速里長の権限で彼らに協力を依頼した。依頼と言っても、彼ら曰く里長は絶対とのことなので、ほぼ命令みたいなものなのだが。
多少思うところがない訳でもないが、緊急時なので使えるものは使っていかなくては。
アムニス達の特徴を伝えると、彼らはすぐに探しに行ってくれた。
ちなみに、アルビス君には残ってもらった。僕はまだここについて詳しいことは知らないので、アルビス君にフォローを任せたからだ。
「さてと。」
捜索は彼らに任せて、僕も自分の仕事に取り掛かるのだった。
夜が明けてから、俺たちは2人の捜索を再開していた。
パルウァ達の話によると、エフティシアは観測魔法が使えるそうなので、向こうから発見してもえることもあるだろう。
食料に関しては、今温水さんがとってきている。肉が食えないのは悲しいが、川はあるので魚肉で我慢するしかないのだろう。
なんて風に、今の状態を再認識していると、後ろ……それもかなり遠くから炸裂音が聞こえた。
魔法を使えばこの程度の音ぐらい出せるが、この状況でそんな魔法を使うなんてよっぽどのことがある筈だ。
そして残念ながら、音がした方向は、俺たちの拠点の近くだった。
「何があった。」
拠点に戻ってくると、温水さんが他の班と相対していた。
曰く、食料をある程度集めたから拠点に戻ってきたらしいのだが、そこで食料を盗ろうとしているこいつらと鉢合わせて戦闘になったそうだ。
試練が始まってからもう3日立っている。
食料にありつけなかった班が他の班を襲撃するのは目に見えて分かっていたし、実際今日は戦闘音が耳に入ってくることも多々あった。
偶然温水さんが間に合ってよかった。やはり何か対策しておくべきだったなと、今更後悔する。
襲撃で食料を失う班もあれば、戦闘の余波でダメになったり、当然今までどおり動物に盗られる可能性もあるわけだ。
これからも、こういうのは増えていくだろうし、早めに対策をとらなくてはいけないな。
なんて、考えているときであった。
「ぎゃぎゃ?」
「「え?」」
俺たちの後ろから聞こえた鳴き声。襲撃してきた班は俺たちの目の前に全員居るので、新手となる……筈なのだが、聞こえてきたのは奇声だったので、その場の全員が、疑問に思って声の方角を見てしまった。
そこに居たのは、例の襲撃者達だった。
「ッ!!……全員、逃げろ!!」
一度こいつらと戦ってわかった事がある。
最初あいつが軽々倒していただけで、こいつらは弱くないし、時間が経てば増援も来る。
まともにやりあったって被害が大きくなるだけだ。
食料や拠点もまた探さなければならないが、こいつらとやりあうよりはましだろう。
「なんだこいつ!?」
向こうの班はどうやら、こいつらの事を知らないらしかった。
普段なら、見捨てて逃げていた。
ただ、今回は火山やこいつらの件もあって人手が必要だ。そもそも会えるかも分からないのに、その中で話し合って協力してくれる班がいくつあるかも知れない。
助けて恩を売れば、協力してくれるだろう。
なんて甘く考えていた。
後ろを振り向いた瞬間には、後頭部に強い衝撃が走って、視界が黒く染まっていくのだった。
丁度太陽が天辺迄来た頃。アムニス達を追わせていた奴らが帰ってきた。
何やら4人程増えて居なくもない気がするが。
つか、アムニス達とパルウァ達一緒だったんだな。
アムニス達が起きるまで時間が掛かりそうだったので、取り敢えず事情だけ先に聞かせてもらう事にした。
「成程な。立ち位置から鑑みるに、アムニス達とパルウァ達は協力してて、そこに他の班が襲撃してきた感じか?」
「貴方、頭良かったのですわね……」
「失礼な。これでも本来なら日本でも結構いい高校に入学する予定だったんだぞ。」
何があったのかは、あくまで予想なのでほんとのところはどうだか知らないが、それにしても他の班が来てくれたのは丁度良かった。
パルウァの件で僕は学習したからな。
協力要請は僕よりも人望のあるエフティシアの方が適任だろう。
「そういう訳だから。」
「パルウァの件に関してはもっと別の理由だと思いますし、何より服を着てないのが問題だと思うのですが。」
そんなこんなで、各自が起きるのを待つことになる。
待ってる間、僕は作業を続けようとした時その時だった。背後から気配を感じて、振り返る。そこにはパルウァの姿があった。
「起きたのか。早速で悪いが、何があったのか聞かせてくれ。」
話しかけても返事はない。俯いて表情も見えないので、何かあったのだろうか?
なんて考えていた時だった。
「……うぅおぅお‼??」
顔中を涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃにして、急に飛び込んできた。
「よく……ご無事で……」
絞り出すような声。この感じルティだろうか?
ルティが表に出てくる事はあまりないので、こうして会うのは久しぶりだなぁ。
「なんてしみじみしてる場合じゃねえな。近ぇよ、密だ密。怒られるぞ。」
「流石にもうそれ気にする人はいないと思いますけど。」
なんて言うエフティシア。良いだろ別に、気にしてる人がいるかもしれないだろ‼
「つか汚えだろいい加減離れろ。」
「……そうですね、すみません。」
そう言って少ししょぼくれてしまうルティ。やめてよ、罪悪感わいちゃうでしょ。
「それで、話してくれないか? 何があったのか。」
僕がそう言うと、少し間をおいてから、ルティはゆっくり話し始めた。
「まぁ、たいていは予想どおりか。」
誤算だったのは、他の班を襲撃するところが思ったより多い事。まあ、考えてみればそりゃそうなのだが、僕の頭じゃそこまで予想できなかったらしい。
さっきエフティシアにあんなこと言ったのに、思いっきりポンコツが見えてしまった。恥ずかしい限りである。
「……そろそろみんな起きてきますね。私も、パルウァに体を返そうと思います。その方が話がスムーズでしょうし。」
「わかった。」
そうして、ルクスの意識は消えた。
まだパルウァの意識は目覚めてないのか、倒れてしまったので、今は取り敢えず地べたに寝かせてやる。
そんなことをしていると、ルクスの言葉通り、他の奴らも続々と起きてきた。
「生きとったんかわれぇ!!!」
一番最初に起きてきたのはケヴァだった。
起き抜けからうるせえなこいつ。
「いや、死んでるぞ。」
「う、嘘だろ。クソッ‼ 俺たちがふがいないばっかりに‼」
「いやいや、普通に生きてますわよ。」
「おいおいばらすなよ。」
「いや、気づいてたからな? そんなのにひっかる程お前の中の俺ってバカだった。」
嘘だろ⁉ バレていただと、この阿保に⁉
「ま、またまた。嘘つくなって。」
「いやだって、お前普通に足あるし。」
幽霊かそうでないかの判断基準そこなのか。
「……なあ、幽霊ってホントにいると思うか?」
「知らんがな。」
その後も、ルクスにアムニスと、続々と起きてきた。
知っているメンツは全員起きたので、後の4人はエフティシアに任せてこいつらには僕から説明することになった。
「なるほどな。奇跡的に色々嚙み合って、まあこの状況になったのはわかる。」
そう言ったのはアムニス。理解が速くて助かる……とおもっていたのだが、その後にただと付け加えられ――
「せめてパンツは穿けよ。羞恥心ってものがないのかお前。そのままじゃ生き残っても露出狂扱いだぞ。」
「なるほど一理あるな。」
「一理あるなじゃねえよ。常識だ常識。」
おいおいなんだよ、そんな強く当たってきて。
普通ならいやな気分になるとこだが、僕は理解ある男。一日会わなかっただけで寂しくなってしまったのだと察してやらなければ。
「お前今きもい事考えたろ。急に怖気がしたぞ。」
「やっぱりお前思考盗聴してるだろ。」
「キモいって自覚はあるんですね。」
なんて言ってきたのはセティだ。彼女もそうだが、女性陣が僕の方を向いてくれない。
……緊急時とは言え、流石に股間は隠そうかな? どうやって隠そう。村の誰かから穿く物借りれるかな?
なんて、人として色んな物を失っていることに、今更気づく僕であった。




