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灰燼に帰す  作者: nukko67
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STAGE Ⅰ―13

「こいつら、結局何だったんだ?」


 葉◯ぱ隊との戦いにきっちり勝利を収めた僕は、気絶したそいつを取り敢えず縄で縛った。

 ダメージは無い。俗に言う、戦いではなく一方的な蹂躙だを地で行ったためである。


「ただの変態じゃないの?」


「恐ろしいこと言うな。そんな発想、出るのもヤバいぞ。」


 悍ましい事を言った温水に、ケヴァが僕の気持ちを代弁してくれた。代償としてケヴァは犬◯家よろしく地面にぶっ刺さったわけだが。

 言わなくてよかった!


「まぁ、聞けば判るだろ。」


 そう言うアムニスの視線は、先程葉◯ぱ隊にボコられた男子生徒を指している。

 いつの間にか気絶していたが、息はしているようなので、取り敢えず一安心だ。


「……もう一つ。気になる事があるんだが……」


「なんだよ。」


 恐る恐るといったかんじで声を上げるケヴァ。


「奴がお前戦ってる最中、なんか、躊躇されて無かったか?」


 その発言で、一気に場の空気が凍りだす。


 それは、僕も分かっていることで、でも怖くて言い出せなかった事だ。


「お前、まさか…………」


 ゴクリと、生唾を呑む音が聞こえた。誰のものなのか、はたまた自分のものなのか。それすら分からない。


「……まさか、お前あいつらに同類だと思われてんじゃねえの? パンイチだから!」


 それを言われて、僕は膝から崩れ落ちてしまった。


 ケヴァとアムニスはゲラゲラ笑っている。ツボに入ったようで、まともに呼吸できず辛そうだ。


「お前ら、鬼か。」


 温水もそんな事を言っているが、声が上擦っている。兜で見えないが、どうせ笑ってるんだろ!


 そんなやりとりをしていると、件の男子生徒が目を覚ました。


「……知らない天井だ。」


 時が止まった様な感覚がした。

 数秒、数十秒と時間が経過していく。きっと、僕たちは今同じ事を考えているだろう。


 コイツ、出来るッ!!


「君達が、俺を助けてくれたのか。」


「……そうだ。」


 男子生徒の問いに答えたのはアムニスだった。続いてケヴァも口を開く。


「俺達からも質問がしたい。あれは何なんだ?」


 その質問に、男子生徒は俯いて首を振った。

 どうやら彼にも、あいつが何なのか分からないらしい。


「まぁ、考えられる可能性としては、学園側の仕掛けぐらいか。」


「魔法陣以外にも仕掛けが……」


「学園長の事だし、魔法陣に関してわざと生徒にバラした可能性もあるな。」


 僕の考えに、皆『ああ~』という顔になる。きっと皆初日の事件を思い出しているのだろう。


「つか、なんでお前は襲われてたんだ? 他の班員は?」


 全員の顔が、男子生徒に向く。


 そういえば、コイツ1人だな。

 嫌な考えが、脳裏をよぎった。


「……順番に話すよ。」


「ゆっくりでいいからな?」


 慰めにもならない。

 多分、今僕たちは、彼に酷い事をしている。


「……俺達、他の班から、食料盗もうと思って。それで散策してたんだ。……島の丁度真ん中辺りの、河辺に、そいつらの集落があって……」


 集落か。そうすると、アイツは他に仲間がいることになる。

 他に犠牲者が出る前に、どうにかするべきだろうか。


「それで俺達、襲おうとして……」


「分かった。もういい、ありがとう。」


 俺達。複数人で襲って、返り討ちにあった訳だ。とどのつまり、他の班員は生死不明。


 同学年が被害に遭っている事に、皆顔を顰めている。


「……まだだ。まだ話すことがある! あいつら――」


 その鬼気迫る表情に、全員が顔を向けた。

 そして、知らされたその事実に、戦慄することになる。


「あいつら、他の生徒達も襲いだしたんだ! このままじゃ全員狩られる!!」




 森に、深い霧がかかっていた。


「どうなってるの?」


 ついさっきまで晴れ渡っていたのが、いつの間にか霧に覆われていたのだ。

 不幸中の幸いか、私達は班員が揃っている。この班ならどうとでもなるだろう。


 そんな事を考えていると、広範囲に展開する事で索敵していた観測魔法で、霧の中で蠢く人影を見つけた。


「パルウァ、右に20m後に4m。」


 友人のパルウァが、斜め後ろに向かって拳大の火球を放った。


「エフティー、ありがと!!」


 私ことエフティシアの班は、この霧に包まれた直後から、襲撃を受けている。

 それも、かなり腕の立つ者たちから。

 そのおかげで、さっきからずっとこの調子だ。


 因みに、エフティーは私の愛称だ。


「ダァッ、もう! ぜんっぜん当たらない!」


 まただ。

 贔屓目を抜いても、この優秀なメンバーが集まって出来た班が、襲撃者達を殲滅出来ない理由。

 それは偏に、敵の身体能力が原因だった。


 魔法の練度がパルウァレ程だと、ただの火球でも途轍もない威力と速度を持つ。

 それでも、襲撃者には通用しなかった。

 まるで、彼をみているようだ。


「クルム、右300mから狙撃!!」


 本来索敵魔法とは特定の位置に展開する事で、そこから視覚情報を得る空間系統の魔法なのだが、今それを広範囲に展開している。

 おかげで範囲外からの攻撃でも察知できるが、脳のキャパシティが追いつかない。


 だからだろうか。

 身体がうまく動かなくて、それで。分かっていた背後からの奇襲を避けきれなかった。


「イ゛ッ゛ッ゛……!!」


 背後から、右肩から肺辺りまでグッサリいかれた。

 思わず苦悶の声が漏れてしまう。


「エフティー!!」


「大丈夫!?」


 痛い、熱い、怖い。

 大丈夫なわけない。でも、私はそんな事言ってられない。


「ゲホッ……ゴホッ! だい、大丈夫。でも、流石に撤退する。10秒耐えて!」


 皆に指示を出す。

 息が上手く出来ない。肺に血が入ってゴロゴロ言ってる。凄い痛い。


 それでも、空間系統の中でも中級程度の難易度である空間転移の発動には、10秒は十分だった。


 きっかり10秒後、取り敢えず人気のない場所に転移した。


「ここ……何処?」


 見渡すとそこは、廃村のようだった。

 こんなところがあったなんて。事前に知らされて無い事を考えると、学校側も把握していないんじゃないだろうか。


「取り敢えず、休憩出来る場所ではありそうね。」


 皆ボロボロだ。私が崩れてからそれなりに消耗している。少しでも早く休みたい筈だ。

 その点、ここはよかった。まだ寝床が残ってるし、柵などある程度安全はある。


 出血で頭は上手く回らないが、ここが安全なのはわかる。


 満場一致でここを新拠点とすることが決まった。


 怪我の応急処置もして、それから私達は二組に分かれた。

 廃村内部を探索する2人と、周辺を探索する2人だ。


 前者が私とパルウァで、後者がクルムとセティとなった。


 これで一段落着いただろう。

 安堵の息が漏れる。


 それにしても、さっきのは何だったのだろう。すくなくとも、もう一度会いたいとは思えなかった。




「いやー悪いな。先に上がらせてもらうわ。」


 ケラケラ笑いながら手札からカードを切る。それによって、手札が残り1枚になった。


「はいUNOって言ってなーい!! バ〜〜カ!!!!」


「……キレそう。」


 現在僕達は、拾った男子生徒も一緒にカードゲームで遊んでいた。


 こんな時に何故こんな事をしているか。

 少し前に遡る。


『ぜんっぜん見つからないんだが?』


『なぁ、ほんとにさっきのが皆を襲ってんのかよ。』


 2時間程歩き続けて、僕達は奴らの痕跡すら見つけられていなかった。


 森の中は湿度も高く、ただでさえ暑いのにジメジメしてるとなると、皆不快感を感じるものだろう。

 特に、僕が酷かった。


『あ〜ッちい〜〜。』


 他よりも鋭敏な身体を持つため不快感なども感じ取りやすい。

 更に、僕が気配を探知していたので、体力の消耗が半端ない。


 見兼ねたアムニスが、探すのではなく誘き出す方向に切り替えたのだ。


 そう。今こうしてカードゲームで騒いでいるのは、敵を誘き出す為なのだ。当然、索敵は継続している。

 別に、遊んでいる訳では無い。


「さて、これでも来ないか。」


 ズズズッと、アムニスが湯呑みっぽい何かで水を飲む。別に年寄り臭いなんて思っていない。


 火球が飛んできた。思ってないって!


「いっそ例の集落にでも行ってみるか? 日が落ちれば奴らも寝床に戻ってくるだろ。」


 静寂が、その場を支配した。


 …………待ち伏せ、か。何故こんな単純な事を考えつかなかったのだろう。

 なんだか負けた気がして、僕は明後日の方向に顔を向けるのだった。

おかしいですね、最初はもっと投稿頻度高かったのに。

継続力の無いnukkoをお恨み下さいへへへのへ。

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