ポイント
かなえが店長、レンが副店長となったからと言って特別変わることはない。
ただ、一緒にいる時間、話す時間は増えた。
色々情報を共有しなければならないし、気になることは話さなければならない。
だからといって、現場に出ないというようなことはしなかった。
それは2人にとって、現場がイチバンだからだ。
壬生元店長は、オーナーという立場でここにいる。
壬生さんは嫌がったが、一応なにか肩書きがないとと言われ、オーナーに落ち着いた。
結局、店長や副店長がかわろうが、この喫茶店はいつもと変わらない雰囲気で営業していた。
「ホント、いつもとかわらないね!」と、大学帰りによったハルが呟く。
その言葉に、笑顔で返すレン。
と、同時に頭をポンとして仕事に戻っていった。
(あれ?なにもいわなかったな‥)
少し不思議に感じたが、ハルはあまり気にしなかった。
しかし、それは気のせいではなかった。
ハルの直感を、ハル自身疑うことがなければ‥。
レンが喫茶店をやめるのではないか?という噂がハルの耳にも届いたからだ。
ことの発端は、喫茶店にある大物が来たからだ。
レンはストバス界隈では、かなり有名らしい。
本人がそれを気にしていないので、喫茶店で働いている今がある。
さて、大物とは、現バスケ日本代表の監督が来たのだ。
この監督は、枠に捉われない考えの持ち主で、自分で自らどこへでも赴きみて代表選手を選出するので有名だ。
そんな監督が来たのだが、レンはこう言った。
「ボク、日本のバスケには興味ないんてす」
それを聞いた監督は、レン勧誘にさらに拍車がかかる。
という展開が起こり、レンが辞めるのでは?という噂が飛び交うことになる。
レン自宅
部屋でゲーム(ちなみに今はフォールアウト76)をするレン。
今日は休みで、昨日の夜からゲームを楽しんでいる。
少し寝たあと、また起きて今に至る。
外はもう明るくなってきた。
スマホの画面が光り、着信とバイブが奏でられる。
ゲームをしながらみるレン。
「朱馬か‥」といい、スピーカーにしてでるレン。
「まだゲームやってんのか、レン」とスマホ越しに聞こえる朱馬の声。
そういう朱馬もレンと数時間前に一緒にゲームをしていた。
「なんかいいたいことあるんだろ?」とレンはゲームする手は緩めずこたえる。
「流石だな、レンは」といい朱馬は続ける。
「本当に代表に来ないのか?」
「朱馬じゃあるまいし、ボクは興味ないね」と即答するレン。
「日本のバスケはそんなに嫌か?」と朱馬はあえて明るく聞く。
「ああ、嫌いだ。マスコミやメディアも含めてな」と淡々とこたえるレン。
「バスケにはさ、役割があるだろ?」
と話しはじめたレン。
「ああ、そうだな!」朱馬も素直に聞く。
「神様マイケルジョーダンが5人いても必ず勝てるわけじゃない。役割があるんだよ」
「まあ、そうだな!スーパースターが5人いたからって勝てる保証はない」
それは、レンもわかっている。
「日本はさ、勝とうが負けようが得点とった選手ばかりピックアップするし、それが凄いことみたいにアナウンスする」といいながら、レンは淡々とゲームをしている。
「得点なんて取ろうと思えば取れるものだろ、いかに勝ちに貢献できたかが大事だろ」と言ったレンに朱馬は思った。
(それは、お前だからそう言えるんだぞ)
「一人でやってるんじゃないじゃん」
朱馬はレンのその言葉に黙ってしまった。
注目を浴びる人と浴びない人、どちらも同じ選手だ。そして、代表なら同じ代表だ。
(役割か‥)レンは自分の発した言葉の意味と重たさを改めて噛み締めていた。
レンは、リフレッシュ休憩に入った。
オーナーが店長の時から行っていたものだが、今や会社では当たり前のシステムだ。
だが、ここは喫茶店。
それでも、オーナー壬生は変わらずこのシステムを継続している。
リフレッシュ休憩は1週間。
これが、さらにレンが辞めたのでは?に拍車をかける。