看板
まるで夫婦のようだな!とよく言われるようになった。
小学生の場合、このワードは、からかったりするのに使うものだが、レンとハルの場合は、みんな本音でいっていた。
それが高校卒業まで続くのだが‥。
このからかいとも、冷やかしとも取れる攻撃を、ハルは内心喜んでいた。
(レンちゃんの奥さんだなんて‥)
考えただけで、みるみる顔の色が変わっていく。
「どうしたの?ハルちゃん」と、ハルが目を開けたら、レンがすぐそばにいた。
驚くハル。
「レンちゃん、びっくりしたよ!」
本当に昔からそうだった。
小学生の時も今もかわらない。
喫茶店
「大丈夫か?ハル」そう言って跪き、視線の高さをあたしと合わすレン。
(ホントかわらないなぁ‥)
どうやら、店内で寝てしまったらしい。
店内の角隅は、勉強や密談にうってつけの場所だ。
不覚にも寝てしまったわけだが、懐かしい夢をみて少し幸せな気分ではある。
まして、レンにこうして気遣われているのだから、さらに幸せだ。
幸いにも、店内に人は少ない。
まるでレンを独占しているような感じになる。
「ハル、そんなになるまで勉強はダメだ」と、レンの真面目な顔がすぐそこにある。
(あー、レンちゃんダメダメ!)と、心の中のハルが騒いでいる。
一方、レンも大変だった。
(ヤバっ!ハルめちゃかわいいし、肌綺麗じゃん!19の時とかわらないじゃん)と、こちらも心の中のチビレンが騒いでいた。
まあ、側からみれば、クールに振る舞っている2人だが、内心はそうではないのが本人たちしか分からないのは、致し方ないところである。
ハルの頭にポンと手を乗せて立ち上がるレン。
「まあ、ほどほどにな」といい、仕事に戻るレン。
そんなレンを目で追いながら、窓から外に視線を移すと、空は綺麗な夕焼けで染まっていた。
喫茶店での仕事も終わり、レンは帰ろうとしていた。
「レンくん」といい手招きされる。
従業員出入り口にいたのは、穂崎かなえ26歳、副店長で彼氏なし、みんなのお姉さん的存在の人だ。
「かなえさん、どうかしました?」と帰り際に呼び止められたにもかかわらず、レンは嫌な顔ひとつしないで対応する。
帰ってはやくゲームをやりたいのは本音であるが。
「レンくんよ、彼女はできたのかな?」とニヤニヤしながらいう穂崎。
穂崎かなえは、店でも人気がある。
彼女目当てで通う常連客も多い。
彼女の煎れるコーヒーは美味しいし、何より彼女自身が輝いている。
そんな穂崎に彼氏がいないのが不思議なくらいだ。
「かなえさん、またその話ですか?」と、明るく返すレン。
「またはひどいねーレンくん」といい口元は緩む。
「店内でも人気、性格もいい、清潔感あるし、逆にいない方がおかしいじゃないか」といいながら、飲むしぐさをする穂崎。
「‥」返答に少し困るレン。
「いやかい?」と微笑む穂崎。
「そうではなくて、かなえさんのお酒が心配で‥」
「う、痛い所を突いてくるね、レンくん!」そう言って胸に手を当てる穂崎。そしてしゃがみ込む。
余談だが、彼女の胸はそれなりに大きい。
少し目のやり場困るレンだが、かなえの腕をとり、立たせる。
「どこにいきますか?」
そういうと満面の笑みをみせるかなえ。
(ホント、この人オレじゃなかったらヤバイんじゃないだろうか‥)
19歳好きのレンですら、かわいいと思ってしまうのである。
気付いていないのは、本人穂崎かなえである。
九十九レン、穂崎かなえの2人が揃って歩いているわけだから、道中周りはざわついた。
「さすがレンくんね!」という穂崎の言葉を、そのまま返したいレンがそこにいた。
素敵なカップル、美男美女、お似合いね、など様々な言葉で2人に花を添えた。
レンは迷惑だろうなーっと思いつつ、かなえをみると、満面の笑みで歩いていた。
行きつけのお店に入り、解放されたように座る2人。
と、同時にお酒がテーブルに置かれる。
「いらっしゃい!今日もありがとね!はい、霧島2つね!ゆっくりしていってね!」とあっという間にさる店員。
ちゃんと、御通しも置いてある。
「中里さん、今日もかわらないね!」と穂崎が微笑む。
(ホント、この人わかっているのかな、めちゃかわいいの‥他の男は可哀想だ‥)と思いながら、「だね!」といいながら笑顔を返すレン。
仕事や趣味、たわいもない話であっという間に2時間になろうかとしていた。
「やだ、もう19:30になっちゃうね!ごめんね、レンくん」といい、すまなそうな顔をする穂崎だが、それすらもかわいい。
「大丈夫ですよ。オレ、帰ってもゲームするくらいですし。それに‥」
「それに?」首を傾げる穂崎。
(う、かわいいな‥)レンは少しダメージを受けた。
「それに、仕事の時とこういう時のかなえさんのギャップ、楽しいですから」
それを聞いて、紅くなる穂崎。
お酒のせいもあって目立たないが、それでもわかる。
「わ、わたしさ、レンくんのことが好きなんだよね!」
穂崎のその眼差しは、本気のものだった。
酔ってはいてもだ。




