運命
ハルは、レンと会った時から恋に落ちた。
運命なんて信じてなかった女の子が、「運命かも!」と口に出して言ってしまったほどだ。
ハルとレンは、小学校の4年生で出会った。
そこから、中学、高校と一緒だったので、幼馴染みといえば幼馴染みだが、微妙だなって思いがよぎり、周りにはそう言えなかった。
また、幼馴染みと公言してしまったら、彼女にはなれないのではないかという不安もあった。
幼馴染みだから彼女になれないという考えは、ハルの偏った見方ではあるが、あながち否定はできない。
とにかく、現在に至るまでハルはレン一筋の恋愛を送っている。
あの時、レンと出会わなければ、今のハルはいないからだ。
ハル9歳(10年後にレンを目覚めさせるとは知らない)
「西小から転校してきた、九十九レンくんよ!みんなよろしくね!」担任の先生の綺麗でいて、少しかわいらしい声が響く。
「九十九レンです。よろしくお願いします」といい頭を下げる9歳のレン。
その凛とした佇まいと整った顔、少し長めの髪にクラスの女子たちは浮き足出す。
その一人にハルもいた。
心臓が飛び出しそうとは、まさにこのことではないかと思うくらいだった。
西小は特にサッカーが強くて有名だ。
そこから来たとなれば、注目度はあがる。
ハルは、金縛りにあったかのように動けなかったが、クラスの他の子たちは、レンの周りに群がっていた。
「ボクは大した事ないよ」そういい質問攻めをかわしているレンは、周りの子たちより、少し大人びて見えた。
ある週末、歓迎会も兼ねてバーベキューが行われた。
これは、担任の先生、音無りこの提案でもあった。
親睦を深め早くクラスに馴染んでほしかったからだ。
レンたちの学校から1時間もかからないし、自然豊かな場所でバーベキューなんて最高だろう。
川もあり、緑豊かの中の食事はたまらない。
そんなバーベキューで事件は起こった。
初夏になろうかという時期とは関係なく、毎日暖かい日が続いており、この日も暖った。いや、暑かったのほうが適切だろう。
そんな中のバーベキュー。
川もあるとなれば泳ぎ出す。
水遊びをする前提で水着を着用していた生徒が多数いた。
ハルもそのうちの人だった。
みんなではしゃぐ。
かけ合う水が、日の光を浴びて虹を形成する。
と、突然姿を消すハル。
川が怖いと言われる一つに、深さがある。
それは突然くるのだ。その深さにハルは飲まれた。そして次の怖さが襲う。
川の流れだ。
ハルは沈んだり浮かんだりしながら流される。
監視しているはずの先生たちも気付かない。
なぜなら、一見、遊んでいるように見えるからだ。
ハル本人は、そのつもりは当然ないのだが、そう見えてしまう。
これも、川の怖い点だ。
ハルはできる限りのことをがんばっていた。
沈んだら息を止め、浮いたら息を吸う。
そんなハルの異変にいち早く気付いたのがレンだ。
レンはハルが視界から消えた瞬間、ロックオンしていた。
そして、流された時のハルが溺れていると瞬時に察知した。
なぜか?それは、後にレンに聞いた時に言っていたが、「系」が張る感じがしたらしい。
聞いた音無先生も、よく理解出来なかったが、子供同士通ずるものなのか、レンとハルだけにあるものなのか、よくわからないがそう理解した。
レンは浮き沈みするハルめがけて走り、川に飛び込んでいた。
あっという間にハルに近づくレン。
ハルと目が合ってから、レンはハルを捕まえて救助した。
子供心にこの手は絶対離さないと思っていたレン。
こんな漫画に書いたような展開で、レンはクラスに溶け込むことができた。
ハルを助けたレンは、一気にヒーローになったのだ。それは誰も否定出来なかった事実だ。
あの時、レン以外、誰も動けなかったからだ。
9歳の男の子が、この10年後、助けたハルによって人生が変わるとは、この時はまだ知らない。




