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9と10

「これはいったい‥」

壬生は戸惑っていた。


今、置かれている状況と、天音が目の前にいるからだ。


「幻か夢か‥」


天音と離れ離れになったのは、天音が19歳の時。


こんなに魅力的な女性は他にいない‥そう、確信していたのに、現実は非情だった。


結婚生活を送るのは、自分であって自分ではない。

それでも、壬生はそれを良しとした。


天音を誰にも渡したくなかったからだ。


その天音が目の前にいる。


まるで時が止まったかのように動かない2人。


そして、止まっていた時が動こうとする。


2人が近づき、ハグしようとした瞬間‥


「ごめんなさいね」

そういい2人の間に割って入ってきた者がいた。





「だれ⁈」天音は特に驚いていた。


「やっと会えたよー!天音さんですね?」

頷く天音。

「あなたは?」壬生がそう聞くと、レナは‥やっぱり‥という顔とジェスチャーをする。


(あたしが飛ばされたということは、そういうことよね‥)


辺りを見回すレナ。


(ここは、South Wind?レンちゃはどこに?)


レナは、レン絡みで時空を超える。

なのに、レンの姿が見えない。


(でも、ここに飛んできたということは‥)


辺りを見回す。

店内は異常なし。

窓から外をチェックすると‥


ひとりの女の子とレンが話しているのが見えた。


(レンと壬生さんは、まだ完全じゃないんだ‥)

焦るレナ。


(壬生さんと天音さんは大丈夫なはず‥レンちゃをまず‥)

レナは店内をすばやくでる。


レンまでの距離が縮んだ。

「え⁈」

レナは驚いた。


(あれ?りんちゃんじゃない⁈‥)



「レンちゃん!マコも一緒に行くの!」

そう言って泣き出しそうになるマコという女の子。


その子を挟んでレンと対面するレナ。

「あっ、ごめんなさい!‥大丈夫ですか?」

そう聞くレナ。


「ご心配かけてすみません。マコ‥この子はいい出したら聞かなくて‥」そう答えるレン。


(やっぱり、あたしの記憶は消えたままか‥)

チラッと店内をみるレナ。


壬生と天音が手を取り合い、こちらを心配そうにみている。


(ここも時間の問題かな‥)

レナはやれやれ‥という顔を一瞬したが、視界をレンとマコに移す。


「あたし、八雲やくもレイナ」とレナは偽名を名乗る。


タイムトラベル用の名前だ。


「九十九レンです。いとこのマコトです」レンはマコを引き寄せ挨拶させる。


「こ、こんにちは」マコがお辞儀する。

「こんにちは!マコちゃん!」

(い、いとこ?知らないよー!しかも、小学生くらいじゃない?)


レナの頭は混乱していた。



天音と壬生が再び出会って、また、何かが変わったのだろうか。


壬生と天音の方を再びみると、2人の周りにチリチリと青白い光がみえた。


(どうする?レナ‥)


目の前のレンとマコが本物なのか?壬生と天音が作り出す幻影なのか?


レナは、ほんのわずかな時間で、判断しなければならなかった。


(もう!)


レナが飛んで来たのは、レンに関係しているからだ。

ただ、害を及ぼす者はいない。


(あたしがレンちゃじゃないからな‥)



「あっ‥」



簡単だった。



最初に壬生と天音の間を割って入ったと思っていた。

それは違った。


普通にみたら、壬生と天音ではないとレナは思った。



「レンと‥」


店の窓に写る自分の姿をみる。

「なに?この髪の色」思わずクスッと笑ってしまった。


レナ‥八雲レイナは、綺麗な空色の髪をしていた。




慌ててマコをみるレナ。


マコがこちらをみている。


(まさか!あなたもこちら側の人⁈)


マコが頷きウィンクする。


(ここは任せて‥だって⁈)

‥ということは、そういうことである。


店内へと急ぐレナ。



(レンとレンが会ってはダメ‥)


店内に入ると、コーヒーの薫りに一気に包まれる。

店内の壬生と天音をみる。


レナは右目を閉じて左目だけでみる。

みるみる瞳の色が変わる。

そして、金色みたくなった時に全てを悟る。


レン‥と、天音さん‥




壬生は天音に会えた‥が、それは壬生と天音との関係、間柄がなせることだった。


壬生がレンを差し置いて行動できるはずもない。

つまり、天音は天音、壬生はレンだったのだ。




レナは、できればこの目を使いたくなかった。


(あたしの方も危ないわね‥)


レンと天音の接触。


手を取り合っていた天音が何かに気付く。


(聖十郎さん、いなくなってしまった⁈‥聖十郎さんって誰?)

事実、手を取り合っているのは、レンと天音である。


(でも、なんだろう‥)

天音は不思議な感覚に襲われていた。


心地よい‥そう思った瞬間、天音の体が光を放つ。



光が収束する。

レンと手を取り合っている女の子は、16歳の天音だった。


「ご、ごめんなさい!」そういい手を離す天音。

「ボクこそ、すみません!」と謝るレン。

レン19歳、天音16歳の出会いである。


「お、お店の外で大きな音がしたから、驚いちゃって‥あ!わたし、久遠天音といいます!」

レンはニコリと笑い「九十九レンです!大丈夫です!ボクも驚きましたし‥ 」手を差し伸べるレン。


「ありがとうございます」

店の外の方をみる。


「なんだったんでしょうね?」天音がそういいレンをみると、レンが心配そうに天音をみている。

「どうかしましたぁ?」天音は首を傾げる。


「く、久遠さん!膝から血が‥」

「え?」

慌ててみる天音。


「あっ!ホントですね!さっき驚いた時でしょうか?でも、大丈夫です」


「ダメですよ!綺麗な脚に傷が残ってしまいます!」レンは思わずそう言ってしまった。


言って後悔が後から押し寄せる。

だけど、言ってしまったものは仕方ない。


天音の承諾を得て、消毒、手当て、絆創膏と手際よく行なうレン。


その間、天音は頬を染めたまま、なすがままに治療されていた。


「簡易的ですが、バスケでいつも持ってるんです」と、レンがちらっとポーチをみせる。


「いいお嫁さんになれますね!」と天音はこたえた。



「本当に九十九くんは、準備いいですね!いい妻になれますよ!」とカウンター側から声が聞こえる。


「壬生さん、からかうのはやめてください」そういいながら、治療セットをポーチに閉まっていくレン。


「ありがとうございます!九十九さん」

レンは天音のその笑顔を忘れることが出来なかった。



その頃、マコがもうひとりのレンを喫茶店から遠ざけていた。


(ここまでくれば安心かな)

「レンちゃん、カレンねぇねに連絡したの?」

しまった!という顔をして、慌ててスマホを取り出すレン。


「あれ?なんでスマホみてるんだっけ?」

その場でひとりたたずむレンであった。




軽快なメロディが鳴る。

画面をみる。


カレンと表示されている。

「どうした?」

『レンにぃ?どうしたじゃないでしょ!』

電話の向こうで頬を膨らませているのが想像できる。


いとこの三杉三姉妹の長女、カレンだ。

『もう、レンにぃったら!今日、わたしとデートでしょ!』

小学生6年生が16の若者のお尻を叩いている。

三姉妹は、レンが大好きで、いつも取り合いになる。


そんなスマホで、話しているレンを尾行しているものがいる。


レナだ。


(三姉妹がいとこ‥どこで変わった?レンが2人だし不味いし‥)



「マコちゃん消えたし‥」

トントン‥と肩を突かれたレナ。

振り向くとマコちゃんが笑顔でいた。


「マコちゃんどうして?」

「レナねぇちゃん、びっくりした?」

頷くレナ。


「あたしの知っている三姉妹じゃないんだ、マコちゃん」


「レナねぇちゃんが驚くのも無理もないよ。マコも驚いてるから」

レナは、どういうこと?って顔をしている。



レナは思った。三杉三姉妹の記憶がレンから抜けている時期がある。

それが、これが理由ではないかと。


「まさか、空白の6年に関係あるの?」

「さすがです!レナねぇちゃん!」

といいマコは拍手している。


「実はこの時期、レンにぃがレンにぃに会ってしまうのです」


「どうして‥」

「マコも思いました。多分ですが、壬生さんが関係しているとおもわれます」

いつの間にか、マコは黒縁メガネをかけていた。


レナはあえてつっこまないで話を続けた。

「じゃあ、レンちゃ‥レンとレンが会ってしまって、まず三杉三姉妹の記憶が飛んだのね?」


「はい、そうです。ですが、ある方の力により、それを防ぐ努力をすることが可能になりました」

「ある方?」


「ごめんなさい。今は言えないのです。でも、信頼できるお方です」

「そう、なら仕方ないわね‥とにかく、あたしが会ったことのある三姉妹って、アレもマコちゃんたち?」


マコが笑っている。

「そうですね!マコたちではありますが、あの時の‥マコたちとなりますね」

レナはそれを聞いて考えた。

(いったい、何が起きているの?)


「レナねぇちゃん、レナねぇちゃんも影響受けてるんだよ」

マコにそう言われ思い出す。


(確かに、あたしは存在していなかった‥)


「‥今のあたしは‥」レナは膝をつく。

ニコリと笑うマコ。

「今ここにいるレナねぇちゃんですか?それは‥」


マコの顔をみるレナ。


「レンにぃの願いです」



何故だか、レナの頬に綺麗な雫が一滴流れ、それはレナの膝に舞い降りた。






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