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真実と歪み

終わりよければ全てよし‥とはよくいったものである。


壬生はこの言葉が好きではない。

なぜなら、そこまで努力してきたこと、がんばってきたこと、苦労してきたことなどが評価されないからだ。


それらがあって終わりがくる。

だからスルーはしたくないのが壬生の思いだ。



壬生聖十郎‥レンをあたたかく見守り、全てを知る男の‥おわり‥が近付いていた。



好きな人と添い遂げたい‥その気持ちに嘘がつけなかった。


壬生は見守る立場にあった。

九十九レンが特異存在になり得るかもしれないからだ。

そこで、壬生にその役目が任された。


どの時代、分岐、結果でも見守る者として。

その過程で、久遠天音と出会ってしまった。


本来、天音はレンと関係があるはずだった。

恋人としてではないが、結果はわからない。

それは、恋に年齢は関係ないからだ。


壬生は、天音にあまりにも惹かれすぎた。

それは天音もなのだが、もしかしたら、2人でレンを見守るためなのかも?と思ったりもした。


結果的に、壬生が天音と結婚したことにより、レンの世界線に、天音は干渉することはなかった。


ただ、そのことが歪みを引き起こすきっかけになった。


レンはどのルートも相手を幸せにしていた。


つまり、天音も結果はどうであろうと幸せにはなっていたはずだ。



壬生はそれらを見守り、詳細を特殊ノートに残す。


このノートは時空をまたぐ。


各ルートの壬生がそれを見て、知識を再確認し、行動するのだ。

もちろん、壬生自身にも記憶は残るが、100%確かとはいえない。

そのための保険でもある。


そんな壬生が運命の天音と出会い、全てがかわる。


壬生と天音のせいで、干渉しないはずのものが干渉しはじめる。

いい例は、レンが色んな人に好かれること。

悪い例が三姉妹だ。


そして、その影響なのか、レンの記憶の中から一時的に姉、レナの記憶がなくなった。


この2つが同時に起きてしまった世界線が例の時間がない三姉妹たちがいる世界となる。


そして、なにより大きな歪みは、最愛の天音がいない‥ということである。




天音がいないとは、決して亡くなったり、消息不明とかではない。


壬生のメインストーリーを基準に考えてのいい方だ。


つまり、メインストーリーの天音は、壬生と添い遂げるということだ。


ただし、壬生は本人オリジナルではない。


本人は、ただ天音としあわせそうな壬生という男を傍観するだけになった。


そんな距離感を壬生は嫌った。

そこで、自分をリセットすることを考え実行する。




それが、何も知らない‥





‥九十九レンである。





リセットによって全てがかわる。

九十九レンという、よくできた男性の意識の中に壬生が入る。


入るのだが、壬生自体になんの権力もない。


九十九レンという男の子の潜在意識の中で生きることになる。


レンがバスケが好き。

日本のバスケが嫌い。

代表を辞退。

19、(19歳含む)にこだわる。

などなど、それらは壬生の影響かもしれない。


壬生は、レンを通して自分や周りを客観的にみることになるとは思わなかった。


レンに彼女がいないのも、もしかした壬生のせいかもしれないのだ。


そんなレンを心配するレナ。


彼女の存在がレンの意識の中に復活したとなれば、話は変わってくる。



レナはレンが好きだ。

もちろん姉弟としての好きもある。

それ以上に、ひとりの異性として惹かれていた。


レンに認知されるまで、どれだけの月日を耐え忍んだろうか。


それは、レナの思いを遥かに凌駕する、なにか‥が後押ししている感じがした。




壬生と結婚した天音は、違和感を感じていた。


(聖十郎さんだけど、聖十郎さんじゃない‥)


それは、間違いではない。本体オリジナルである壬生ではないからだ。


天音がわかるオーラみたいな、気みたいなものから感じたのかもしれない。


(あの聖十郎さんに会いたい‥)


天音のその思いが引き金となり、天音自身の身にあることが起きる。


いつものように起きて、洗面所でうがいをしようと思って行ったら驚いてしまった。


(だれなの?わたし?‥だよね?)


鏡に写る姿は、自分よりも若い、かわいい女の子だった。



「お姉ちゃん、おはよー!」

目を擦りながら洗面所に来たのは弟だ。

(弟ってわかる‥なんで?)

「おはよー!まだ眠いの?レン」


(レン?あれ?)


「うん。眠い。」

「また、遅くまでゲームしてたの?」

(あれ?あれ?勝手に言葉が出てくる)


「ホント、好きだよねーゲーム」

「レナねぇもやる?」


「今度ね!」といい洗面所から出る。

(れ、レナ⁈レンのお姉ちゃん⁈)

レナは、頬を両手で挟んでいる。

そしてしゃがむ。


(わたし、レナになったの?落ち着いて‥)


天音の強い思いが、レナというひとりの女の子と共になり、新たな道を歩むことになる。




こうして、意識のある天音と意識のない壬生は、同じ屋根の下で暮らすことになる。


この頃のレナは、レンが可愛くてたまらない。

意識があるとはいえ、基本はレナ主導になる。


一方、レンはレン。

壬生の意識はそこでは働かない。


そんな関係の中、レナの中の天音は何かを感じはじめた。


(レンみてると、なんか懐かしいって思うんだよね‥)



お互い近くにいるのに、近くはない関係‥

そんな日々が続くと思われていた。







毎日、洗面化粧台の鏡をみるのが怖くてたまらなかった。


いつのレナになっているのか、不安だったからだ。


鏡をみながら両手で頬にパン!っと音を立てて覆う。


(レナ、がんばって!)


そういつも応援していた天音だったが、自ら動いてしまった時があった。



根拠はなかった。

感だけ‥



レンがバスケを始めた‥

周りから色々聞く。


レンが天才じゃないか?

センスが良すぎる‥など色々だ。


実際プレイをみて、レナは驚く。

(こ、この感じ‥)


気付けば、レンを抱きしめていた。

「レナねぇ、苦しいよぉ」

その言葉で我にかえる。


「ご、ごめんね!嬉しくてつい」

いつもの明るいレナに戻る。


レンがボーっとしている。

「レン⁉︎痛かった?」

慌てて近寄るレナ。


顔を左右に振るレン。

「ホントごめんね‥」

優しく抱きしめるレナ。




(なんか、懐かしい‥)

レナもレンもそんな気分に襲われていた。



小学3年生‥


2人の、みんなの転機の年でもある。

そんな日の出来事だった。




レンは壬生に出会い全てがかわる。


自分に出会い自分から色々教えてもらい、影響を受ける‥


レンとして‥


その全てが心地よかった。

壬生聖十郎の器の大きさを知った。

憧れの人となる。

そして、何かあれば壬生を頼った。

心地よい感じ。

信頼‥


レンの壬生への様々な気持ちが混じり合う。

その躍動する力は、ある時レンの中に眠る壬生のたましいを震わす。



その瞬間、一気に時が加速する。




壬生の喫茶店ntで抱き合うレナとレン。


「ホント、久しぶりね」といいレナの瞳から涙が溢れ出す。


見守る壬生‥がいない。


レンはレナをみている。

その背後になにやら人影がうっすらとみえる。


「あ、まね?」


その瞬間、全ての時間や記憶が戻っていく‥





ある喫茶店に、天音と壬生がレナとレンと同じポジョンでたたずんでいる。



「天音‥」

「聖十郎さん‥」


壬生は思った。

これは夢か幻か、または終焉なのかと。


天音は思った。

本当の聖十郎さんと会えたと。




店内の心地よい音楽が、2人を祝福しているかのように流れていた。




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