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レンと過去と秘密

すごい選手でもあり、孤独でもある壬生の姿が天音の脳裏から離れない。


(ひとりで何もかも背負い過ぎてるの‥)

天音は、誰もいなくなった体育館でボーッとしていた。

さっきまでの賑やかさが嘘のようだ。


そんな天音に、後ろからタオルを頭にかけた者がいる。


天音の視界はゼロだ。

「きゃっ!」

「わたしです。これはお礼です」


「み、壬生さん?」

「はい。急にすみませんでした」


「帰ったのでは?」

「そのつもりだったんですが、忘れ物をしまして」


タオルをとる天音。

そのタオルをみる。MIBU #10と書かれていた。

「忘れ物ですか?」

「はい」


「ちゃんとありましたか?」

「ええ。ありました」


「よかったです!それと、このタオルありがとうございます!」

こちらを向き、タオルを握りしめて喜ぶ天音の顔が眩しかった。


「いえいえ。あと勝手にサインもしてあります」

そう言われてタオルをよくみる天音。

「あっ、ホントだ!ありがとうございます!」


首を横に振る壬生。

そして、一呼吸置く。

「久遠さん」

「は、はい!」

2人は見つめ合う。


この2人にはもはや言葉はいらなかった。

いらないのだが、壬生はその言葉を使う。


「久遠天音さん、わたし壬生聖十郎と結婚を前提にお付き合いしていただけないでしょうか!」

深く頭を下げる壬生。


天音はフリーズした。

フリーズしたのだが、なぜか涙が溢れ出す。


「わ、わたしでいいんでしょうか?」天音は不安になる。

頭を上げてニコリと笑う壬生。

「久遠さんじゃなきゃダメなんです!」


それは天音も同じ気持ちだった。








喫茶店のカウンターで仕事をしながら、壬生は天音と出会った時のことを思い出していた。


「懐かしいですね」ひとり優しく微笑む。


しばらくして、カランコロンといつもの音が聞こえる。


「おはようございます!」

眠そうな顔でレンが入ってくる。

そんなレンにコーヒー豆の香りが歓迎する。


「おはようございます!いらっしゃい九十九くん!またゲームですか?」


レンはその問いに首を横に振る。


「色々考えてたら、朝でした」

髪をサワサワするレン。


「九十九くんが珍しいですね」

壬生はカウンター席にレンを呼び、コーヒーを出す。


レンは座りながら、「ボクでもそういう時はありますよ」といい頬を膨らませている。

それをみて壬生は笑っている。


「壬生さん‥」レンも観念したようだ。


コーヒーを一口飲み、うまっ!っと言った後、何かを思い出したようにレンが話し出す。

「そうだ壬生さん、ボク、壬生さんに言わなきゃいけないことが一つあったんです」


「なんでしょうか?」壬生は驚きもせずに仕事をそのまま進めている。


「ボク、姉がいまして‥」

「お姉さん?」


「しかも双子の姉でして‥」


それは初耳だった。

「九十九くんに双子のお姉さんがいたのですか?」

頷くレン。


「びっくりですね‥」さすがの壬生も動きが止まる。


「姉は、レナはボクの憧れでした。小さい頃なんてどっちが男の子かわからないくらい活発だったんですよ」

「ちょっと待ってください。こないだここに来て三姉妹と話していたのは、九十九くんですよね?」


「え?三姉妹と話してたってなんです?」

「これはびっくりですね‥お姉さんは相当頭も切れますね」


レンは理解するのに、少し時間がかかったが、すぐわかったことがあった。


また、姉の仕業か‥と。





九十九レナは、レンになり切るのが上手かった。

それが相手にバレないから、尚更すごい。


そして、あのレンの二手三手先をいつも行くのだ。



「九十九くん、お姉さんはなかなか凄い方ですね」

壬生がレンの隣の席につく。


「ボクも、まさかとは思いました‥」

レンは何かを決心したようだ。


「壬生さん、姉は、レナは、ボクへの愛が止まらないらしいんです‥」

「‥やはりですか‥薄々感じてはいました。そうですか‥これは厄介ですなね‥」

壬生が珍しく顎に手を添えて考えている。


「つまり、アレですか?九十九くんを取られないように、お姉さんが全て動いていたと‥いうことですよね?」

「恥ずかしながら、そうなります」頷くレン。


(なんて子でしょう‥わたしが気付かないとは‥)



「レナのすごい所でもあるんですが、使い方が間違っているんです」

レンの言葉を壬生は黙って聞いている。


「小3で転校したのも、レナが原因でもあるんです‥ホント、何もかも敵わなかった‥」

「そういうことなんですか!」


つまり、レナがレンが転校した後、レンの代わりもしていたことになる。


壬生は、レナの凄さとレンへの愛の深さを同時に感じていた。


「もしかして時間がないとは‥」ふと壬生が呟きだす。

「壬生さん!何かわかったんですか?」


「ええ。推測の範囲ではあるんですが一応‥」

「それは、ボクに話せることですか?」

レンの目は真剣だ。


「‥推測でよければですね」

「構いません!お願いします!」


「わかりました。これは、色々な事が重なっています。」

「色々なこと‥」


「そうなんです。まず、あの三姉妹から行きましょう。彼女らは実在はしています。九十九くんの記憶にあるない関係なくです。ただ‥」

「ただ?」レンも真剣になる。


「ふぅ‥よく聞いてくださいね。彼女らは、この時間軸の者たちではありません」

「⁈‥時間軸って、あのことですよね?」

レンは、昔、壬生に将来の話を聞いた時に、その話を聞いたことがある。


「そうです。本来分岐した未来はメインを残して進みます。当然他の未来はメインにはなれなくとも、進んでは行きます。平行世界、裏とか影ルートとか言われているものですね。」

「そのルートがメインルートに干渉したということですか?」


「物分かりがよくて助かります。その通りなんです。小3辺りは、九十九くんもわたしもポイントとなる分岐点なはず‥」

「その後の三姉妹を知らないですからね‥ボクは‥」

「でも、三姉妹にとっては、久しぶりなんですよ」


「久しぶり‥まさか!レナですか?」

「そうなんです。お姉さんはいち早く気付いたんだと思います。レンに干渉してはいけない3人だと」


「それで、ボクになって上手くやり過ごしていたというわけですか?」

「そう考えるのが自然な気がします」


「レナが守ってくれていた‥」

「そうですね。そう考えると、三姉妹が時間がないっていったことも頷けるんです‥多分ですが、この時間軸にいられる時間が少ないかと」


「そうだとしたら、レナはどうしてわかったんでしょうか?」

「ふふっ、そこは疑問に思ってはいけないでしょう!なにせ、九十九くんの全てになりきれる人ですよ?」


確かにそうだ。

わからないことだらけだけど、ボクの代わり全てできる人だ。


「壬生さん、ボクってもしかして‥個人情報‥」

「あってないようなものですね!」と笑顔で言われた。


「ですよね‥」

「まあ、お姉さん限定ですから!他に漏れているわけでもないですし」


そこがまた不思議で、悪いことはしてないんだよな‥レナは‥とレンは思った。


急に首を左右に振る。

(いやいや、騙されてはダメだ!)

「大丈夫ですか?九十九くん」

と壬生の方をみるとコーヒーを煎れていた。

「え?今のは?」


「あ・た・し・よ!」と耳元で囁く声が聞こえた。


振り向くと、1人の女性がいた。





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