壬生とレンと三姉妹
上書き‥
確証はない。だけど気になった。
空白の部分が上書きされたのか?
それ以外が上書きされたのか?
壬生さんにそのことを伝える。
「興味深いですね‥」
しばらく沈黙が続く。
「ひとつ気になることがありますね‥」
「なんですか?」壬生の答えに興味津々なレン。
「記憶の上書きだとして、そのまま考えると、九十九くんを上書きした理由はいいとして、わたしの記憶まで上書きしたのは、引っ掛かりますね」
「あっ、そうですよね。それに、壬生さんの店に来たのも気になりますね」
「これは、色々大変そうですね」
そういいお茶を飲む壬生。
店内から流れる音楽が、2人を励ましているように聴こえた‥
三姉妹に会うことになり、壬生とレンは対策を練った。
確かに目の前には3人いる。
歌恋、希空、真琴がそこにいる。
さすがのレンでも頭がおかしくなりそうだ。
壬生にアドバイスされた通り、なるべく明るいところで会うことにした。
(明るい場所でもかわらないな)とレンは感じた。
壬生のアドバイスには、彼女たちをよく見るように‥というのもあった。
(よく見る‥よく見る)
(か、可愛すぎて照れてしまう!)
なんてことはさて置き、壬生のアドバイスを繰り返す。
ジジ‥ジ‥
(あれ?今一瞬ノイズみたいなのが見えたような‥目が疲れてるのか?)
とりあえず、壬生にメッセージを送る。
壬生宅。
閑静な住宅街の中に壬生の家はある。
大きくはないが、日々の生活を送ることには十分満足のいく家である。
壬生の趣味部屋で、レンからのメッセージを読んだ。
「ノイズみたいなもの‥ですか」
「間違いないわね」
そう言って壬生の背後から壬生の肩に小ぶりの整った顔が小さい顎から止まる。
「天音もそう思うかい?」
「うん」
そう返事をする天音の体温がとても心地よい。
壬生天音、壬生の妻である。
「聖十郎さん、やっぱり干渉しているようね」
壬生は黙って頷く。
「大丈夫?辛くない?」と天音は聞く。
「大丈夫だよ。本来なら居てはいけない3人だったとは‥」
そういい天音をみる壬生。
天音は優しい顔をしている。
「そうね、それだけ九十九くんは魅力的なのかしらね」
「ああ、間違いないよ。わたしがずーっと見てきても、そう思うからね」
壬生のその言葉にニッコリする天音。
「聖十郎さんも大変ね!」といい後ろからハグする天音。
「仕方ないよ。わたしが見て見ぬふりはできないの知ってるでしょ」
そういって、ハグする天音の頭を右手で、撫でるように触る壬生。
「時って、残酷ね」そういいさらにハグをする天音。
優しい空気がそこには流れていた。
人の人生とはなんなんだろうか?
生まれて成長し、衰退し、やがて塵となる。
その一生を楽しく生きるか否かなのか?
仕事や学校に行って帰ってくるの繰り返しの日々は満たされているのか?
それが当たり前だから?
生きていくのに必要だから?
間違いではない。
でも、それだけではないはずだ。
未来は無数にあるとして、選んだ一つを進んでいる。
それが正解でも、間違いでもない。
選ばなければ前には進まないからだ。
九十九レン。
彼と関わる人々は、それをさらに意識していくことになる。
自分の道を彼と交わせるか?自分から寄り添うか?それとも、彼にそうさせるか?
選択できることは一つ。
その積み重ねが前に進んでいることになる。
前に進むから成功なのではない。
進むことによって、また選択させられるのだ。
人はそれを無意識にやっているに過ぎない。
結局、幸せとは‥人によってそれぞれ違うということになる。
九十九レンはかわらない。
変わるのは周りの人々だ。
壬生宅、趣味部屋。
スマホの画面を見つめたまま、フリーズしている壬生がいた。
「もう、そろそろかな‥」と言った壬生の顔は何やら寂しそうだ。
そんな瞬間がまさか来るとは、壬生も年月を実感していた。




